米国はAI覇権のため規制緩和や化石燃料への回帰、中国は先端エネ技術の社会実装を推進。世界の再エネ導入は過去最高を記録したが、生成AIの普及により電力消費量も急激に増加している。
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米国・中国・日本の新エネルギー戦略
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1. 序論:新エネルギー政策とデジタルインフラの交差点
現代のグローバル経済において、エネルギー政策は従来の「環境対策」や「脱炭素化」といった枠組みを大きく超え、国家のデジタル競争力および安全保障と直接的に連動する極めて重要な中核課題へと変貌している。このパラダイムシフトの最大の牽引力は、高度な人工知能(AI)技術の社会実装とそれに伴うデータセンターの電力需要の急激な増加である。
近年発表された各国の政策動向や市場データを精査すると、二つの相反する巨大な潮流が交差していることが明らかとなる。一つは、太陽光や風力を中心とした再生可能エネルギー(クリーンエネルギー)の世界的な導入容量の爆発的拡大である。もう一つは、生成AIの学習(トレーニング)および推論(インファレンス)プロセスを支えるインフラストラクチャが要求する、莫大かつ安定した電力(ベースロード電源)の確保という課題である。本レポートでは、最近の新エネルギーおよびデジタルインフラに関する世界的な動向を整理し、米国、中国、および世界の新エネルギー政策の今後の方向性、ならびに日本の政策と経済・企業経営に及ぼす影響について、証拠に基づいた詳細な分析を展開する。
2. 世界のクリーンエネルギー市場動向とデータセンター需要の構造的変化
2.1 太陽光・風力発電設備容量の拡大推移
世界のクリーンエネルギー導入量は記録的なペースで拡大を続けている。国際的なエネルギーシンクタンクEmberのデータによると、2025年における世界の新たな太陽光および風力発電の導入量は、前年の696GWから17%増加し、過去最高となる814GWに達した 1。この結果、世界全体の風力および太陽光の累計設備容量は4,174GW(約4.2TW)を超過した 1。
この成長を牽引しているのは圧倒的に太陽光発電である。2025年の新規導入量の内訳を見ると、太陽光発電が647GWを占め、前年比11%の成長を記録した一方で、風力発電の新規導入量は167GWであった 2。風力1GWに対して太陽光が約4GW導入されるという比率で普及が進んでおり、2026年には中国単独で最大240GW、インドで42.5GWの新設が見込まれている 5。
| 指標 | 2024年実績 | 2025年実績 | 対前年成長率 | 累計容量(2025年末時点) |
|---|---|---|---|---|
| 新規太陽光発電導入量 | 582 GW | 647 GW | +11% | 約 2,900 GW |
| 新規風力発電導入量 | 114 GW | 167 GW | +47% | 約 1,300 GW |
| 新規合計(太陽光+風力) | 696 GW | 814 GW | +17% | 約 4,174 GW |
しかし、この急速な発電容量の拡大に対し、系統連系(グリッドへの接続)がボトルネックとなっている。米国を例にとると、2.2テラワット以上の発電および蓄電プロジェクトが系統連系の待機列(インターコネクション・キュー)に滞留しており、これは現在の送電網の設備容量のほぼ2倍に相当する 6。G7諸国においても、政治的障壁やインフラ投資の遅れにより、風力および大規模太陽光プロジェクトのパイプライン成長が停滞傾向にあることが指摘されている 5。
2.2 「計算力」が牽引する電力消費パラダイムシフト
クリーンエネルギーの供給拡大を上回るペースで直面しているのが、新たなデジタル需要の創出である。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、データセンター、AI、および暗号資産による世界の電力消費量は2030年までに945TWhに達する可能性があり、これは現在の日本の国家全体の年間電力消費量に匹敵する水準である 7。
生成AIの基盤モデル開発には膨大な計算資源が必要であり、AI用GPUサーバーを搭載したラックの電力密度は従来の数kWから100kWに迫る水準へと高密度化している 9。2025年時点ではAIによるワークロードの多くが「学習」であったが、2027年以降は「推論」が主要なドライバーとなると予測されており、エッジ環境を含めた広範な電力需要の底上げが発生する 9。2026年から2030年にかけて、世界で約100GWの新たなデータセンター容量が追加されると予測され、これに伴う不動産およびIT機器へのインフラ投資額は最大3兆ドルに達する見込みである 9。
3. 米国の新エネルギー・AIインフラ政策:実用主義と覇権の追求
米国のエネルギー政策は、単純な「再生可能エネルギーへの移行」という枠組みを脱し、「AI覇権(AI Dominance)の確立」という国家安全保障上の目標に従属する形で再構築されつつある。
3.1 国家AI立法枠組みと規制緩和によるインフラ開発の加速
トランプ政権は、AI技術における米国の主導権を確実にするため、「国家AI立法枠組み(National AI Legislative Framework)」および「AIアクションプラン」を発表した 10。この枠組みの核心は、技術革新を阻害する「負担の大きい州レベルのAI規制」を連邦法によって排除(プリエンプション)し、全米で統一された事業環境を整備することである 12。
インフラ整備の観点からは、大規模なデータセンターや発電施設の建設を加速させるための具体的な規制緩和が盛り込まれている。連邦機関が保有する広大な土地(有休地)をデータセンターおよび電力インフラの建設用地として開放し、さらに国家環境政策法(NEPA)に基づく環境アセスメントの適用除外や迅速化の手続き(FAST-41プロセスの適用)を導入することが指示されている 15。これにより、従来は数年を要した許認可プロセスを大幅に短縮し、民間投資を呼び込む環境が整えられている。
3.2 SPARKイニシアチブと送電網インフラの即効的拡張
増大する電力需要(Load interconnection)を満たすためには、送電網自体の容量拡大が不可欠であるが、全く新しい送電線を敷設するには用地確保や許認可に10年以上を要することが多い 18。この時間的障壁を打破するため、米国エネルギー省(DOE)は約19億ドルの資金を投じる「SPARK(Speed to Power through Accelerated Reconductoring and other Key Advanced Transmission Technology Upgrades)イニシアチブ」を発表した 18。
このプログラムは、既存の送電塔や権利関係(既存の送電経路)をそのまま活用し、電線をより大容量の先進的導体(Advanced Conductors)に張り替える「リコンダクタリング(Reconductoring)」に特化している 18。動的送電容量評価(DLR)などの高度送電技術(ATTs)と組み合わせることで、新たな土地開発を伴わずに送電容量を50%以上増加させることが目標とされており、データハブや新規産業回廊への迅速な電力供給を可能にする 18。
3.3 化石燃料への実用主義的回帰と巨大民間プロジェクト
米国の実用主義を最も象徴するのが、AIデータセンターの安定稼働のために化石燃料(特に天然ガス)への大規模な投資が容認・推進されている点である。米国エネルギー省、商務省、および日本のSoftBankグループ、米国電力会社AEP Ohioの官民パートナーシップにより、オハイオ州の元ウラン濃縮施設跡地(ポーツマス・サイト)において、総額約330億ドル規模のプロジェクトが発表された 21。
この計画では、10GW規模の巨大なAIデータセンターを構築し、その電力をまかなうために9.2GWの新規天然ガス発電所を建設する 21。AIインフラストラクチャは常時安定したベースロード電源を必要とするため、天候に左右される再生可能エネルギー単独では要件を満たしきれないという技術的現実に対応したものである。この動きは、気候変動対策よりも国家のAI競争力確保を優先する米国の明確な方針転換を示唆している 21。
4. 中国の国家戦略:「新エネシステム」と大規模社会実装の実証
中国の政策アプローチは米国と対照的であり、長期的視野に基づくエネルギー供給構造の根本的な転換と、国家主導による先端技術の大規模な社会実装(パイロット実証)に重点を置いている。
4.1 第15次5カ年計画と次世代エネルギーの戦略的配置
中国の第15次5カ年計画(2026-2030年)では、エネルギー転換が国家戦略の柱として位置づけられている。太陽光、風力、水力、原子力といった既存の非化石エネルギー源を統合した「新エネルギーシステム(New Energy System)」の構築を推進するとともに、バッテリーエネルギー貯蔵(BES)やグリーン水素を国家の「十大新興産業」として優先的に育成する方針が示された 25。
特筆すべきは、エネルギー管理の枠組みが従来の「エネルギー強度・消費量の二重管理」から、「炭素排出強度・絶対量の二重管理(Dual Carbon Control)」へと移行することである 25。これにより、産業部門の脱炭素化に向けたインセンティブ構造が変化し、化石燃料由来のアンモニアやメタノールの製造工程をグリーン水素に置き換える動きが加速すると見込まれる 25。
4.2 「計算パワーと再エネ電源の連携」:水中データセンターの実用化
データセンターの電力消費とインフラ負荷の課題に対し、中国は物理的な環境を活用した独自のエンジニアリング・ソリューションを展開している。2026年初頭、上海において世界初となる「海上風力発電連携型の商業用水中データセンター(UDC)」が運転を開始した 7。
このプロジェクトは、サーバーラックを収容したモジュールを水深35メートルの海底に沈め、無尽蔵に存在する冷たい海水を冷却媒体として利用するものである 26。陸上の従来型データセンターと比較して、電力消費を約22.8%削減し、淡水の消費量と土地利用を実質的に100%排除することが可能となる 26。また、海上風力発電所から直接電力を供給することで、「計算パワーと再エネ電源の連携(compute-electricity synergy)」を実現している 7。東部沿岸地域の巨大なデータ処理需要と、同地域の豊富な海洋再エネポテンシャルを統合するこのアプローチは、今後のインフラ構築における新たなパラダイムを提示している 29。
4.3 グリーン水素の総合活用パイロット事業と国際標準化の布石
水素エネルギーの分野では、中国は商業化の「死の谷」を越えるための大規模な資金投下を行っている。工業情報化部(MIIT)などの主導により、水素エネルギーの総合活用パイロット事業が開始された 30。この事業では、競争的な選考を通じて選ばれた都市群に対し、4年間で最大16億元(約2億3000万ドル)の補助金が提供される 30。
これまでの水素利用は燃料電池車(FCV)が中心であったが、本パイロット事業では、大型商用車や物流網への適用に加え、グリーンアンモニア、メタノールの製造、化学原料の代替、水素冶金(鉄鋼業の脱炭素化)など、産業界の多様なシナリオでの大規模実証が求められている 30。中国はこのようなスケールメリットを通じたコスト削減と技術の成熟を図り、国際的な技術標準の確立において主導権を握ることを企図している 32。
5. 日本の新エネルギー政策:第7次エネルギー基本計画のロードマップ
世界情勢が激変する中、日本もエネルギー安全保障と脱炭素化、そしてデジタル化に伴う需要増を両立させるための新たな方針を打ち出した。2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」は、2040年を目標年次とする野心的な枠組みである 33。
5.1 2040年を見据えた電源構成の抜本的見直し
第7次エネルギー基本計画では、2040年までに温室効果ガスを2013年度比で73%削減するという高い目標が設定された 33。この目標達成のため、日本の電源構成(エネルギーミックス)の将来像は以下のように再定義された。
| 電源種別 | 第6次計画(2030年目標) | 第7次計画(2040年見通し) | 政策的スタンスの推移と詳細 |
|---|---|---|---|
| 再生可能エネルギー | 36~38% | 40~50% | 「主力電源」としての位置づけを強化。出力変動を補うため、コジェネレーションや蓄電池を含む分散型エネルギーシステムの導入を前提とする 33。 |
| 原子力 | 20~22% | 約 20% | 安全確保を大前提としつつ、従来の方針であった「依存度低減」から「最大限活用」へと明確にスタンスを転換し、安定供給の基盤とする 33。 |
| 火力(化石燃料等) | 41% | 30~40% | 段階的な縮小を図るとともに、水素、アンモニア、合成メタン(e-methane)、バイオ燃料などの次世代クリーン燃料への転換(混焼・専焼)を進める 33。 |
この計画の背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の進展により、長期的に減少傾向にあった日本の電力需要が再び増加に転じるという分析がある 33。特に、天候に依存する再エネの弱点を克服し、AIインフラ等の高負荷需要を支えるためには、分散型電源の整備と原子力への再評価が不可欠であると結論付けられている。
5.2 国内AIデータセンターの急増とインフラへの負荷
日本国内のインフラ市場でも、米中と同様にデータセンターへの投資が急拡大している。マイクロソフト、Google、オラクルなどのハイパースケーラーによる数兆円規模の投資が進行中であり、国内のデータセンター電力需要は、2034年までに1500万〜1800万世帯分に相当する規模に達し、国内電力需要成長の60%を占めると予測されている 34。
直近の動向として、国内のAI対応データセンター(GPUサーバー向け高電力供給拠点)のIT供給電力容量は、2025年末の約300MWから、2026年末には約600MWへと倍増する見込みである 35。需要に迅速に対応するため、シャープの堺工場跡地のような高圧受電設備を備えた巨大工場跡地がデータセンターへ転用される事例が相次いでいるほか、工期の短いコンテナ型・モジュール型の専用データセンターの建設計画も進行している 35。政府や自治体は、特定地域への負荷集中(グリッド制約)を避けるため、データセンターの地方分散化を政策的に推進している 35。
5.3 水素技術の国際標準化と競争力維持
日本の将来のエネルギー戦略において要となるのが水素関連技術であるが、ここでも国際的な覇権争いが激化している。クリーン水素の製造、輸送、貯蔵、および認証に関する国際標準(ISO/TC 197など)の策定において、日本、韓国、中国などのアジア諸国が主導権を競っている 36。
標準化の枠組み(例えば、どのレベルの炭素排出強度までを「グリーン」と認定するか、充填プロトコルをどう設計するか)は、そのまま自国企業の技術的優位性や輸出競争力に直結する 37。日本政府(NEDO)は2026年度から「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」を開始し、国際標準化と技術開発を両輪で進めることで、中国の大規模実証プロジェクトに対抗し、技術的優位性の維持を図っている 39。
6. マクロ経済・産業・国民生活への波及効果
上述した米中日のエネルギー政策とデジタルインフラ投資の急拡大は、日本の経済構造や個人の日常生活に広範かつ複雑な影響を及ぼす。
6.1 今後の日本の経済や景気動向への影響
マクロ経済の観点からは、エネルギーとデジタル分野への巨額投資が新たな成長エンジンとして機能する。データセンターの建設・運用は、単なるIT機器の導入にとどまらず、不動産開発、建設、特殊空調設備、さらには半導体材料や光ケーブル網といった裾野の広い需要を喚起し、強い経済波及効果をもたらす 40。この「インフラ特需」は関連産業の業績を押し上げ、局地的な好景気を生み出す。
一方で、エネルギー構造の転換に伴うコストの上昇が経済全体の重しとなるリスクも顕在化する。第7次エネルギー基本計画に基づく次世代エネルギー(水素・アンモニア等)の導入や、送電網の大規模なアップデートは、初期段階で膨大な資本投下を必要とする 33。さらに、日本国内では2026年度から排出量取引制度(ETS)が本格稼働し、2028年度からは化石燃料に対する賦課金(カーボンプライシング)が導入される予定である 33。これらの規制コストは最終的に企業収益を圧迫し、インフラ投資の恩恵を受けるセクターと、エネルギーコスト増の直撃を受けるセクターの間で、経済の「K字型」の二極化が進行する可能性が高い。
6.2 とくに影響を受ける主要業界や分野
この変革において、恩恵を受ける業界と強い変革圧力を受ける業界は明確に分かれる。
成長と恩恵が見込まれる業界:
- 重電・電力インフラ機器メーカー: 送配電網の強化(SPARKイニシアチブ等)やデータセンター向けの高圧受電設備に伴い、変圧器、大容量ケーブル、開閉器などの需要が世界的に急増する 18。
- 空調・冷却技術設備: AIサーバーの高発熱化に対応するため、従来の空冷システムから液冷(リキッドクーリング)システムへの移行が急務となっている。流体制御技術、配管、特殊冷却剤などを手掛ける企業群への需要が飛躍的に拡大する 9。
- 建設・不動産およびエンジニアリング: 工場跡地の再開発(コンバージョン)や、データセンターのモジュール型建築、地方の再エネ発電所建設を請け負うゼネコンやディベロッパー 35。
- 次世代エネルギー・スマートグリッド関連: バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)、コジェネレーションシステム、エネルギーマネジメントのソフトウェアプロバイダー 8。
打撃・変革圧力を受ける業界:
- エネルギー多消費型の基礎素材産業: 鉄鋼、化学、製紙などの産業は、電気料金の高止まりとカーボンプライシングの導入により、製造コストの増大に直面する 33。これらの企業は、自社でのオンサイト発電の導入や水素冶金のような抜本的なプロセス転換への巨額投資を強いられる。
6.3 個人の日常生活において影響があるか
個人の生活に対する最も直接的な影響は、エネルギー価格を通じた物価の持続的上昇(インフレ圧力)である。送電網の整備費用、再エネ賦課金、およびデータセンター需要家との電力確保競争に起因するコストは、最終的に一般家庭の電気料金に転嫁される構造となっている。また、産業界のエネルギーコスト上昇はあらゆる商品・サービスの製造・物流コストを押し上げる。
間接的かつ肯定的な影響としては、AIインフラの充実による高度なデジタルサービスの普及が挙げられる。計算資源が国内に潤沢に整備されることで、自然言語処理モデルの高度化、個別最適化された教育や医療診断サービス、精度の高い自動運転技術などが日常的に利用可能となり、生活の質(QOL)向上に寄与する。
7. 日本の企業経営者が取るべき事業戦略
このような不確実性が高く、かつ急激に変化する外部環境において、エネルギー制約はもはや「外部から調達するコスト」ではなく、企業の成長と事業継続を決定づける「戦略的制約要件(Strategic Constraint)」となっている 8。日本企業の経営層は、以下の戦略的アプローチを採用する必要がある。
7.1 「コンピュート・エレクトリシティ・シナジー」の自社設計
事業拡大に伴い電力を大量に消費する企業(データセンター事業者、高度製造業など)は、単に電力会社に系統連系を申請して待つという受動的なアプローチを捨てるべきである。「どこに建設するか」の基準は、地価や労働力以上に「電力の確保スピード」にシフトしている 9。
企業は、自社施設の近傍に太陽光などのオンサイト再生可能エネルギー設備、大規模な蓄電池システム(BESS)、および非常用の高効率コジェネレーションシステムを統合した「自立分散型マイクログリッド」を自ら構築する戦略をとるべきである 8。中国の水中データセンタープロジェクトが示すように、需要(計算能力)と供給(再エネ電源)を物理的・システム的に統合する「コンピュート・エレクトリシティ・シナジー」の発想が、コスト競争力とレジリエンスの源泉となる 7。
7.2 戦略的インフラ確保とサプライチェーンの強靭化
データセンターや工場インフラの建設において、現在最も深刻なリスクはサプライチェーンの逼迫による工期の遅延である 9。変圧器や冷却装置などの主要コンポーネントは世界中で奪い合いとなっているため、経営層は施設の設計段階からモジュール型建築手法を採用し、主要サプライヤーと長期的な戦略的パートナーシップを結んで部材を先行確保する必要がある 42。
また、米国のSoftBankとAEPの事例のように、自社単独でインフラ投資を抱え込むのではなく、テクノロジー企業、エネルギー事業者、およびインフラファンドがコンソーシアムを形成し、リスクと資本を分担しながら大規模なエネルギーインフラ開発に参画するスキームの構築が求められる 21。
7.3 制度変更への先制的適応とインターナル・カーボンプライシング
日本の第7次エネルギー基本計画および今後のカーボンプライシング制度の導入に対し、企業はコンプライアンス対応にとどまらない先制的な財務戦略を構築すべきである 33。
全ての新規設備投資やM\&Aの意思決定プロセスに「インターナル・カーボンプライシング(社内炭素価格)」を導入し、将来の温室効果ガス排出に伴う想定コストを現在の財務評価に組み込むことが推奨される。また、大企業においては自社(Scope 1, 2)の削減だけでなく、サプライチェーン全体(Scope 3)での排出量削減が社会的に要請されているため 33、取引先の中小企業に対して省エネ技術の導入支援や共同購買ネットワークを提供するなど、エコシステム全体でのエネルギー効率最適化を図ることが、中長期的な企業価値向上に直結する。
8. 結論:次世代エネルギー・デジタル複合体への移行と日本の針路
世界の政策動向と市場データが示すのは、再生可能エネルギーの普及という単一のトレンドではなく、「AI・データ需要」という強力なベクトルがエネルギーインフラと激しく衝突し、融合しつつあるという複雑な現実である。米国は国家AI覇権のために規制を打破し、実用主義に基づき天然ガス等の化石燃料をも動員してインフラの即効的拡張を図っている。対して中国は、国家主導の計画経済体制を活かし、新エネルギーシステムとデジタルインフラの大規模な社会実装を強力に推し進め、次世代技術(グリーン水素や水中データセンター等)における国際標準の掌握を狙っている。
このパラダイムシフトの渦中において、日本は第7次エネルギー基本計画を通じて、再エネの主力化と原子力の最大限活用を基軸とした現実的なロードマップを描いている。しかし、データセンターをはじめとする国内の電力需要の急増と、エネルギー構造転換に伴うコスト増の圧力は、日本経済に二極化をもたらす試練となる。
日本の企業経営者は、この変化を単なる「コスト上昇のリスク」と捉えるのではなく、エネルギーマネジメントを経営戦略の中核に据え直す好機とみなす必要がある。自立分散型電源の導入によるレジリエンスの確保、戦略的なサプライチェーンの構築、そしてエコシステム全体での脱炭素化を牽引することでのみ、不確実性の高い次世代のグローバル市場において持続的な競争優位を確立することができるとの分析が導出される。
引用文献
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- The world added a record 814 GW of wind + solar – reshaping energy fast | Electrek, https://electrek.co/2026/03/19/the-world-added-a-record-814-gw-wind-solar/
- World adds record 814 GW of solar, wind in 2025 – Balkan Green Energy News, https://balkangreenenergynews.com/world-adds-record-814-gw-of-solar-wind-in-2025/
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- 2026年は生成AIの転換点か? 産業構造の変革へ, https://www.medical-confidential.com/2026/03/17/post-20413/
- エネルギーソリューションの世界市場レポート 2026年, https://www.gii.co.jp/report/tbrc1966344-energy-solutions-global-market-report.html
- データセンタートレンド2026:変革の加速 – Accenture, https://www.accenture.com/jp-ja/insights/infrastructure-capital-projects/data-centre-trends-2026-shifting-up-gear
