廃棄からの脱却:テクノロジーと循環性で再創造する繊維業界の成長戦略
第1章:エグゼクティブサマリー
本レポートの目的と調査範囲
本レポートは、繊維業界が直面する構造的変革、すなわち循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行圧力、複雑なサプライチェーンに内在する人権・環境リスク、テクノロジーによるビジネスモデルの変革、そして地政学的な不安定性に起因する調達リスクを包括的に分析することを目的とする。この分析に基づき、これらの構造変化に適応し、持続可能な成長を実現するための事業戦略オプションを提示する。調査範囲は、素材開発(天然繊維、化学繊維、再生・バイオ素材)、紡績、織編、染色加工から最終製品(アパレル、産業資材)の回収・再生に至るまでのグローバルなバリューチェーン全体を網羅する。
最も重要な結論
繊維業界の未来は、もはや「安く、速く作る」能力では決まらない。勝敗を分けるのは、①規制主導のサステナビリティ要件に適応する能力、②テクノロジーを活用してサプライチェーンの透明性と効率性を抜本的に改善する能力、そして③「作って売る」リニアモデルから脱却し、リセールやリペア、素材再生といった循環型サービスエコシステムを構築・主導する能力である。価値の源泉は、物理的な製品生産から、データ管理、リスク管理、そして顧客との継続的な関係性へと明確にシフトしている。この変革期において、現状維持は緩やかな衰退を意味し、大胆な事業モデルの再構築こそが唯一の成長経路となる。
主要な戦略的推奨事項
本分析から導き出された、取るべき主要な戦略的推奨事項は以下の通りである。
- 「規制対応」から「戦略的優位性」への転換: EUの繊維戦略に代表される環境・人権規制を、単なるコンプライアンスコストとして捉えるのではなく、高付加価値市場への参入障壁を築く機会と認識する。トレーサビリティとLCA(ライフサイクルアセスメント)データの開示能力を競争優位の中核に据え、透明性をブランド価値の源泉へと昇華させるべきである。
- デュアル・テクノロジー戦略の推進: AIによる需要予測やスマートファクトリー化で既存事業の廃棄物とコストを削減する「最適化技術」と、SpiberやBolt Threadsに代表される次世代素材やケミカルリサイクルといった、新たな事業モデルを創造する「破壊的技術」の両方へ戦略的に投資・提携する。これにより、現在の収益基盤を強化しつつ、未来の成長エンジンを構築する。
- 循環型エコシステムの構築: 自社単独での解決が困難な衣類回収・選別・再生の課題に対し、JEPLANのような専門企業、競合他社、自治体と連携し、オープンな回収・再生プラットフォームを主導する。これにより、将来の循環型原料の安定確保と新たなサービス収益の源泉を確立する。
- 人材ポートフォリオの再構築: 従来の繊維技術者に加え、素材科学者、データサイエンティスト、サステナビリティ専門家、エコシステム・マネージャーといった次世代人材の獲得と育成に経営資源を重点的に配分する。事業モデルの変革は、それを実行する人材の変革なくしては成し得ない。
第2章:市場概観(Market Overview)
2.1. 世界の繊維市場規模と予測(2020年~2035年)
世界の繊維市場は今後も成長が見込まれるが、その成長率に関する予測は調査機関によって大きく異なる。これは、サステナビリティへの移行コスト、技術革新の進展度、世界経済の不確実性など、業界の未来を左右する変数が多数存在することを反映している。
複数の調査会社のデータを統合すると、2025年の市場規模は1.83兆ドルから2.43兆ドルの範囲にあり、2035年には2.21兆ドルから4.89兆ドルへと拡大すると予測されている 1。年平均成長率(CAGR)も4.43%から9.8%と大きな幅がある 2。高成長シナリオは、Eコマースの継続的な拡大と新興国における中間層の力強い需要を前提としている 2。一方、低成長シナリオは、マクロ経済の減速懸念や、環境規制強化に伴うコンプライアンスコストの増大が市場の重しとなる可能性を織り込んでいると考えられる 3。
この予測のばらつき自体が、繊維業界の未来が単一の軌道ではなく、複数のシナリオを取り得ることを示唆している。高成長の経路は、循環型経済や新素材といった技術・ビジネスモデル革新の成功に依存する一方、低成長の経路は、規制対応の遅れや資源制約に足を引っ張られる未来を映し出している。したがって、企業戦略は単一の市場予測に依存するのではなく、複数のシナリオに対応できる頑健性と俊敏性を備える必要がある。
| 調査機関 | 2025年 市場規模 (兆ドル) | 2035年 市場規模 (兆ドル) | CAGR (2025-2035) | 主な成長ドライバー |
|---|---|---|---|---|
| Dimension Market Research 1 | 2.43 | 4.89 | 8.1% | (記載なし) |
| Research Nester 2 | 1.83 | 4.66 | 9.8% | Eコマースの拡大、ファッション需要 |
| Market Research Future 3 | 1.43 (2025年予測値) | 2.21 | 4.43% | 持続可能な慣行の採用、技術進歩 |
2.2. セグメント別分析
- 素材別: 伝統的に市場を支配してきた綿(コットン)は、2025年時点でも約40%のシェアを維持すると見られるが、その地位は後述するサステナブル素材によって徐々に脅かされることになる 1。天然繊維全体としては、2025年に市場の約50%を占める見込みである 1。
- 用途別: アパレルが引き続き最大の用途であり、市場成長を牽引する。しかし、産業資材分野、特に自動車の軽量化ニーズに応える炭素繊維複合材料(CFRP)市場の成長も注目される。同市場は2035年までに3兆7000億円(約250億ドル)を超える規模に達すると予測されており、高付加価値分野での成長機会を示している 5。
- 地域別: アジア太平洋地域が、生産と消費の両面で世界の繊維市場を牽引する中心地であり続ける。同地域は2035年までに世界市場の約52%のシェアを占めると予測されている 2。特に中国、インド、そしてASEAN諸国(ベトナム、インドネシアなど)の人口増加と経済成長が、市場拡大の主要なエンジンとなる 2。
2.3. サステナブル素材市場の急成長
繊維市場全体の構造変化を最も象徴しているのが、サステナブル素材市場の急成長である。各種レポートは、このセグメントが市場全体を大幅に上回る成長率を達成すると予測している。
- サステナブル衣料品市場: 年率10.3%で成長し、2034年には94億ドル規模に達する見込み 7。
- エコファイバー市場: 年率7.6%から8.5%の成長が予測されている 8。
- 持続可能なリサイクル繊維市場: 最も高い成長が見込まれ、2025年から2032年にかけて年率13.8%で成長すると予測されている 10。
この高成長は、消費者の環境意識の高まり、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)経営へのコミットメント、そして各国政府による規制強化という3つの要因が相互に作用し合うことで生まれている 4。これは一過性のトレンドではなく、業界の構造を不可逆的に変えるメガトレンドである。
2.4. 市場の成長ドライバーと阻害要因
- 成長ドライバー: 主な成長ドライバーは、①新興国における中間層の拡大と可処分所得の増加、②スマートテキスタイルやバイオ素材といった技術革新、③サステナビリティやエシカル消費への消費者の価値観シフトである 3。
- 阻害要因: 一方で、成長を阻害する要因も存在する。①原油価格の変動はポリエステルなどの合成繊維のコストに直結する 4。②世界経済の減速懸念は、消費マインドを冷え込ませるリスクとなる。③EUの繊維戦略に代表される規制強化は、企業のコンプライアンスコストを増大させる。④日本国内市場に目を向ければ、少子高齢化に伴う若年労働者不足と、長期的な個人消費の低迷が深刻な構造的課題となっている 11。
2.5. 業界KPIベンチマーク
- 素材メーカー: 日本国内では、三菱ケミカルグループ、東レ、旭化成といった大手化学メーカーが売上・利益の上位を占めている 12。これらの企業は、炭素繊維や高機能膜など、汎用品ではない高付加価値・高機能素材で高い収益性を確保しており、コモディティ素材メーカーとの収益性の差が拡大する傾向にある。
- アパレル業界: 業界全体の収益性を圧迫する最大の課題は、低い在庫回転率と、それに伴う大量の売れ残り在庫の発生である。AIを活用した需要予測の精度向上が、このKPIを改善し、廃棄コストの削減と収益性向上を実現する上で最も重要な鍵となる 13。
第3章:外部環境分析(PESTLE Analysis)
3.1. 政治 (Politics)
- EUの繊維戦略: 欧州委員会が公表した「持続可能で循環型の繊維製品に向けたEU戦略」は、繊維業界のルールを根本から変えるゲームチェンジャーである。2030年までにEU域内で販売される繊維製品に対し、耐久性、修理可能性、リサイクル性を高める「エコデザイン要件」を義務付ける 14。さらに、売れ残り品の廃棄を原則禁止し、生産者に製品の回収・リサイクル費用を負担させる拡大生産者責任(EPR)制度の導入も進められている 15。これはEU市場で事業を行う上での「ライセンス」となり、対応できない企業は事実上、市場から排除されるリスクに直面する。製品の企画・設計段階から廃棄・再生まで、バリューチェーン全体の再設計が不可避となる。
- 人権デューデリジェンス法制化: ドイツの「サプライチェーン・デューデリジェンス法」やEUの「企業持続可能性デューデリジェンス指令」など、企業に対して自社のみならず、サプライヤーを含むサプライチェーン全体の人権・環境リスクを特定・評価し、是正措置を講じることを義務付ける法制化が欧州を中心に急速に進んでいる 17。特に繊維・アパレル業界は、複雑で不透明なサプライチェーン構造からリスクが高いと見なされており、対応を急ぐ動きが顕著である 19。
- 地政学リスク(ウイグル綿問題): 米国が施行したウイグル強制労働防止法(UFLPA)は、中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品やトマト製品の輸入を原則禁止するものである 20。これにより、企業はサプライチェーンの全段階で強制労働が関与していないことを証明する責任を負うことになった。これは、特定の地域への過度な調達依存がもたらす地政学リスクを浮き彫りにし、サプライチェーンの透明性確保と多様化が喫緊の経営課題であることを示した。
3.2. 経済 (Economy)
- 原材料価格の変動: ポリエステルやナイロンといった主要な合成繊維の価格は、その原料であるナフサを通じて原油価格と高い相関関係にある 22。ウクライナ情勢や中東の不安定化といった地政学的要因による原油価格の高騰や乱高下は、素材メーカーのコスト構造と収益性を直接的に脅かす。一方で、天然繊維である綿花の価格は原油価格との直接的な相関は限定的であり、両者の価格差がアパレルメーカーの素材選択に影響を与える要因となる 24。
- 世界経済と消費マインド: 世界的なインフレ圧力や主要国の中央銀行による金融引き締めは、世界経済の減速懸念を高めている。景気の先行き不透明感は消費者の可処分所得を圧迫し、節約志向を強めるため、特に価格に敏感なファストファッション市場の需要にマイナスの影響を与える可能性がある 4。
3.3. 社会 (Society)
- Z世代の価値観と「Say-Doギャップ」: Z世代はサステナビリティへの関心が高いと一般的に認識されているが、実際の購買行動はより複雑な様相を呈している。調査によれば、商品選択時に最も重視するのは「価格」(51.3%)であり、「サステナビリティ」を挙げたのはわずか2.8%に過ぎない 25。これは、多くの企業が陥りがちな「若者は皆エシカル消費を実践している」という思い込みに警鐘を鳴らす。この「意識(Say)」と「行動(Do)」のギャップを認識することが重要である。ただし、彼らはデジタルネイティブであり、SNS上の口コミや他者の評価を購買決定の際に重視する傾向が他世代より強い 26。そのため、企業の透明性に対する要求は高く、グリーンウォッシュ(環境配慮を装うこと)や人権問題などに対する企業の不誠実な態度は、SNSを通じて瞬時に拡散され、厳しい批判の対象となる。また、10代では環境問題への取り組みに疲労感を覚える「エコ疲れ」も観測されており、企業からの押し付けがましいメッセージは逆効果になるリスクもはらんでいる 27。
- 「所有から利用へ」: メルカリに代表されるフリマアプリの普及や、サブスクリプションサービスの登場により、消費者の衣類に対する価値観は「所有」から「利用」へとシフトしつつある。特にリセール市場の急拡大は、消費者が衣類を単なる消費財ではなく、価値が変動する「資産」として捉え始めていることを示唆している 28。新品購入時にリセールバリュー(再販価値)を考慮する行動が一般化すれば、ブランドの価値基準は一過性のトレンドから、「品質」「耐久性」「時代を超えて愛されるデザイン」へと回귀する可能性がある。
3.4. 技術 (Technology)
- 素材科学: 従来の石油や天然資源への依存から脱却する動きが、素材科学のイノベーションを加速させている。スギを原料とする「改質リグニン」や、木材パルプ由来の「セルロースナノファイバー」といった植物由来の新素材開発が日本でも進んでいる 30。これらは生分解性を持ち、自動車部品や建築資材など多様な用途への展開が期待される 32。
- 生産技術: 生産工程における環境負荷を劇的に削減する技術革新が進んでいる。特に、超臨界状態の二酸化炭素を溶媒として使用する「無水染色」は、染色工程で大量に消費されていた水と、それに伴う廃水をほぼゼロにすることを可能にする 33。エネルギー消費量も従来比で約半分に削減できるポテンシャルを持ち、水資源が乏しい地域でも持続可能な生産を可能にする革命的な技術である 35。
- トレーサビリティ: ブロックチェーン技術の活用が、サプライチェーンの透明性確保の切り札として期待されている。ブロックチェーンは、取引記録を改ざんが極めて困難な分散型の台帳に記録することで、原材料の生産地から最終製品が消費者の手に渡るまでの全履歴を追跡可能にする 36。H&Mのようなグローバル大手も、香港のスタートアップTextileGenesisと提携し、ブロックチェーンを用いたトレーサビリティシステムの導入を進めている 37。これは、前述の人権デューデリジェンスやウイグル綿問題への対応、そして製品の背景にあるストーリーを消費者に伝える上で不可欠な技術となりつつある。
3.5. 法規制 (Legal)
- 化学物質規制: EUのREACH規則に代表されるように、繊維製品に含まれる特定の化学物質の使用を制限または禁止する規制は世界的に強化される傾向にある 38。これらの規制は、人の健康や環境へのリスクが高いとされる物質を対象としており、企業はサプライヤー管理を徹底し、製品の安全性を確保する責任を負う。
- グリーンウォッシュ規制: EUでは、科学的根拠に基づかない曖昧な環境訴求(例:「環境にやさしい」「グリーン」)を「グリーンウォッシュ」として禁止する指令案が議論されている 14。今後、企業のサステナビリティに関する主張は、LCAなどの客観的なデータによって裏付けられていることが法的に求められるようになる。これにより、見せかけの環境配慮は通用しなくなり、真摯な取り組みを行う企業が評価される土壌が整う。
3.6. 環境 (Environment)
- 気候変動と原料生産: 気候変動は、繊維産業の根幹を支える天然繊維の生産に深刻な影響を及ぼす。気温の上昇、干ばつの頻発、豪雨の増加といった異常気象は、綿花の収穫量や品質を不安定化させる主要因である 40。一部のシミュレーションでは、大気中のCO2濃度上昇による施肥効果で一時的に収穫量が増加する可能性も指摘されているが、長期的には熱ストレスや水不足による減収リスクがそれを上回ると予測されている 40。これにより、天然繊維の安定調達が困難になり、価格が高騰するリスクが高まる。
- マイクロプラスチックファイバー問題: ポリエステルやアクリルなどの合成繊維は、洗濯の過程で微細な繊維(マイクロファイバー)を排出し、これが下水を通じて海洋に流出することで、海洋生態系への影響が懸念されている 42。この問題は、WWF(世界自然保護基金)などの国際NGOからも強く指摘されており、消費者や規制当局の関心も高まっている 43。将来的には、洗濯機へのフィルター設置義務化や、そもそもマイクロファイバーが抜け落ちにくい繊維の開発など、業界全体での包括的な対策が求められる。
- LCA(ライフサイクルアセスメント)の重要性: 製品のライフサイクル全体、すなわち原料調達から製造、輸送、使用、そして廃棄・リサイクルに至るまでの各段階で、どれだけの環境負荷(CO2排出量、水消費量など)が発生しているかを定量的に評価するLCAの重要性が増している 44。LCAは、グリーンウォッシュ規制への対応や、サプライチェーンにおける環境負荷のホットスポットを特定し、効果的な削減策を講じるための科学的根拠となる。
これらの外部環境要因は、独立して存在するのではなく、相互に連携し、業界に複合的な影響を及ぼしている。特に、EUの規制強化(政治・法規制)、ブロックチェーンなどの追跡技術(技術)、そして消費者の透明性への要求(社会)という3つの力は収斂し、「ラディカル・トランスペアレンシー(徹底的な透明性)」という新たな業界標準を形成しつつある。規制はデータの提出を義務化し(プッシュ要因)、テクノロジーは信頼性の高いデータの提供を可能にし(イネーブラー)、社会的な圧力は虚偽の報告や隠蔽を行う企業に厳しい制裁(レピュテーションの失墜)を加える(プル要因)。この連鎖の中で、サプライチェーンの透明性を単なるコミュニケーション施策ではなく、事業運営の中核的な能力として構築した企業が、信頼を勝ち取り、事業リスクを低減させることができる。不透明なサプライチェーンを放置する企業は、法的リスク、評判リスク、そして市場アクセスリスクという三重の危機に直面することになるだろう。
第4章:業界構造と競争環境の分析(Five Forces Analysis)
4.1. 供給者の交渉力 (Bargaining Power of Suppliers) – 中程度
繊維業界における供給者の交渉力は、扱う素材によって大きく二極化している。
- コモディティ原料(綿、汎用ポリエステル): これらの素材は世界中に多数の供給者が存在し、製品の差別化が困難なため、供給者の交渉力は低い 45。特に、大手アパレル企業は巨大な発注量を背景に強い価格交渉力を持ち、サプライヤーに対して有利な条件で取引を進めることが可能である 47。
- 高機能・サステナブル素材: 一方で、独自の特許技術に裏打ちされた高機能素材(例:東レの炭素繊維)や、革新的なバイオ素材(例:Spiberの人工クモ糸、Bolt Threadsの培養レザー)を供給する企業は、代替が極めて困難であるため、供給者としての交渉力は非常に高い。これらの企業は単なる素材供給者に留まらず、アパレルブランドとの共同開発パートナーとしてバリューチェーン全体への影響力を強めており、価格決定権を握っている。
この分析が示す戦略的意味合い(So What?)は、企業の収益性が、どの素材ポートフォリオに依存しているかによって大きく左右されるということである。汎用的なコモディティ素材への依存から脱却し、独自性のある高機能・サステナブル素材を自社開発するか、あるいは強力なパートナーシップを通じて確保することが、コスト構造を改善し、最終製品の差別化を図る上で決定的に重要となる。
4.2. 買い手の交渉力 (Bargaining Power of Buyers) – 高い
- BtoC(消費者): 特にファストファッション市場において、消費者の交渉力は極めて高い。ZARA、H&M、ユニクロといった多数の競合ブランドが存在し、製品のデザインや品質が同質化しているため、消費者は容易にブランドを乗り換えることができる 48。調査データが示すように、価格が依然として主要な購買決定要因であり、業界には常に価格引き下げ圧力がかかっている 25。
- BtoB(アパレルブランド等): ZARAを擁するInditexやユニクロを擁するファーストリテイリングのようなグローバルSPA(製造小売)は、その巨大な発注量を武器に、OEM/ODM(相手先ブランドによる生産/設計・生産)メーカーに対して絶大な交渉力を持つ。従来からの厳しいコストダウン要求に加え、近年ではサステナビリティ基準(環境負荷データの提出、トレーサビリティの証明、人権遵守の監査など)の遵守を求める動きが強まっており、サプライヤー側の負担は増大の一途をたどっている 49。
4.3. 新規参入の脅威 (Threat of New Entrants) – 高い(D2C)/低い(素材開発)
新規参入の脅威も、事業領域によって大きく異なる。
- アパレル小売市場: ShopifyのようなECプラットフォームの普及と、InstagramなどのSNSマーケティング手法の確立により、D2C(Direct to Consumer)モデルでの新規参入障壁は著しく低下している。小資本のプレイヤーでも、特定のニッチな顧客層にターゲットを絞り、独自のブランドストーリーを訴求することで、大手と伍して成功を収めることが可能になっている。
- 素材開発市場: 革新的な新素材を開発・量産する市場への参入障壁は依然として非常に高い。高度な専門知識を持つ研究開発チーム、巨額の設備投資、そして他社の参入を防ぐための強力な特許ポートフォリオが不可欠となる。ただし、化学、食品、バイオテクノロジーといった異業種の先進企業が、その技術力を応用して繊維市場に参入してくる可能性は常に存在する。
4.4. 代替品の脅威 (Threat of Substitute Products) – 高い
代替品の脅威は、素材レベルとビジネスモデルレベルの両方で高まっている。
- 素材レベル: サステナビリティへの関心の高まりを背景に、既存素材からの代替が加速している。例えば、環境負荷やアニマルウェルフェアの観点から、動物性レザーに対する植物性レザーや培養レザーへのシフトが進んでいる。また、リサイクルを容易にするため、分離が困難な複合素材から、単一素材(モノマテリアル)で設計された製品への需要が高まっている。
- ビジネスモデルレベル: 「衣類を新品で購入する」という行為そのものが、新たなサービスによって代替されつつある。衣類を月額でレンタルするサブスクリプションサービスや、中古品を売買するリセール市場の急拡大は、新品衣類の市場規模そのものを縮小させる可能性を秘めている 28。
4.5. 業界内の競争 (Intensity of Rivalry) – 非常に高い
繊維・アパレル業界、特に最終製品市場における競争は極めて激しい。
- グローバルな競争: ZARA、H&M、ユニクロ、SHEINといったグローバルSPAが市場を席巻し、価格、品質、そしてトレンド投入のスピードを巡って熾烈な競争を繰り広げている 12。
- 製品の同質化: 特にファストファッション市場では、トレンドのサイクルが高速化し、デザインや品質の同質化が進んでいる。これにより、価格以外の要素で差別化を図ることがますます困難になっている。
- 新たな競争軸の出現: このような状況下で、「サステナビリティ」が新たな競争軸として急速に浮上している。サプライチェーンの透明性、環境負荷の低減、循環型ビジネスモデルへの取り組みといった要素が、企業のブランドイメージと競争力を左右する重要な差別化要因となりつつある。
このファイブフォース分析は、業界の収益構造における重要な二重性を明らかにしている。従来、綿花農家や汎用ポリエステル工場といった画一的なコモディティ供給者の交渉力は弱かった。しかし、PESTLE分析で明らかになったように、特許で保護された新素材や、規制対応に不可欠なトレーサビリティ技術を提供する新たなプレイヤーが登場している。これらの「イネーブリング・テクノロジー(実現技術)」の供給者は、容易に代替できず、高い交渉力を持つ。したがって、供給者の力は一様に低いのではなく、二極化しているのである。権力は、物理的な「モノ」の供給者から、差別化をもたらす「技術とデータ」の供給者へとシフトしている。これは、将来のバリューチェーンにおいて最も収益性の高いポジションが、ブランド自身ではなく、彼らが依存する専門的な技術・素材企業になる可能性を示唆している。
第5章:サプライチェーンとバリューチェーン分析
5.1. サプライチェーン分析:「Farm to Wardrobe」から「Wardrobe to Wardrobe」へ
リニア型サプライチェーンの構造とリスク
従来の繊維産業のサプライチェーンは、「Farm/Oil field to Wardrobe(農場/油田からクローゼットへ)」と表現される、一方向のリニア(直線)型モデルであった。その構造は、原料調達(綿花栽培や石油採掘)から始まり、紡績、織編、染色、縫製、販売、消費、そして最終的には廃棄という直線的な流れを特徴とする。
この長く、多層的で、地理的に分散したサプライチェーンの各工程には、深刻な環境・人権リスクが内在している。
- 原料調達: 綿花栽培における大量の水消費と農薬による土壌汚染 44。
- 染色加工: 大量の水使用と、化学物質を含む排水による水質汚染 44。
- 縫製: 新興国の工場における低賃金、長時間労働、劣悪な労働環境といった人権問題 17。
サプライチェーンの末端に行くほど、ブランド側の管理が及ばなくなり、リスクの把握と管理が極めて困難になるという構造的な問題を抱えている。
循環型サプライチェーンへの移行と課題
これに対し、現代の繊維産業が目指すべきは、「Wardrobe to Wardrobe(クローゼットからクローゼットへ)」と表現される循環型サプライチェーンである。これは、消費者が使い終えた衣類を「廃棄物」ではなく新たな「資源」と捉え、回収・再生プロセスを経て再び製品化するループ構造を特徴とする。
しかし、この理想的なモデルへの移行には、深刻なボトルネックが存在する。最大の課題は「回収」と「選別」のプロセスにある。
- 回収の課題: 消費者の手元にある膨大な量の不要衣類を、効率的かつ低コストで回収する社会的な仕組みが未整備である。店舗回収や行政回収には限界があり、消費者のインセンティブ設計も難しい 50。
- 選別の課題: 回収された衣類は、素材(綿、ポリエステル、混紡など)、色、状態が多種多様であり、リサイクルに適したものを仕分ける必要がある。特に、ボタンやファスナーといった異物の除去や、タグが消失した衣類の素材特定は、依然として人手による煩雑な作業に依存しており、リサイクルプロセス全体のコストを押し上げる最大の要因となっている 50。
特に日本では、手元から離れた衣類のうち66%が焼却または埋め立て処分され、服から服へと再生される「クローズドループ・リサイクル」は1%未満という厳しい現実がある 51。また、市場に多く流通する「混紡繊維」は、それぞれの繊維を分離する技術が確立されておらず、高品質なリサイクルを阻む大きな技術的障壁となっている 51。
5.2. バリューチェーン分析:価値の源泉のシフト
サプライチェーンの構造変化に伴い、企業が価値を生み出す源泉も大きくシフトしている。
- 従来の価値の源泉: 安価な労働力を求めて生産拠点を海外に移転し、大量生産によって実現される「コスト競争力」が、企業の収益と成長を支える最大の価値源泉であった。
- 新たな価値の源泉:
- 素材・技術開発: Spiberの構造タンパク質や東レの炭素繊維のように、他社にはない性能やサステナビリティ特性を持つ独自の素材を開発する能力。
- サステナブルな生産プロセス: 無水染色技術のように、製造工程における環境負荷を劇的に低減する革新的な生産技術を保有し、活用する能力 35。
- 透明性とブランドストーリー: ブロックチェーンなどを活用し、製品が「どこで、誰が、どのように作ったか」という背景を、信頼性の高いデータと共に消費者に伝える能力。これにより、消費者の信頼と共感を獲得し、ブランド価値を高める 49。
- アフターサービスと循環: 製品を販売して終わりではなく、リセール(再販)、リペア(修理)、サブスクリプションといった、製品のライフサイクル全体に関与するサービスを提供する能力。Patagoniaが提供する修理サービスは、製品の長寿命化を促すと同時に、顧客との長期的な関係を構築し、ブランドロイヤルティを高める好例となっている。
5.3. デジタル化によるバリューチェーンの効率化
デジタル技術の導入は、バリューチェーン全体の効率を劇的に高めるポテンシャルを秘めている。
- 3D設計・バーチャルサンプリング: コンピュータ上で製品の3Dモデルを作成し、シミュレーションを行うことで、物理的なサンプル(試作品)の作成回数を大幅に削減する。これにより、開発リードタイムの短縮、サンプル作成・輸送にかかるコストの削減、そしてサンプル廃棄物の削減に大きく貢献する。
- AIによる需要予測: 過去の販売データ、SNSのトレンド、気象情報など、多様なデータをAIが解析することで、製品ごと、店舗ごとの需要を高い精度で予測する 53。これにより、アパレル業界最大の課題である過剰生産とそれに伴う売れ残り在庫を抑制し、バリューチェーン全体の無駄を排除することが可能となる。
循環型モデルへの移行における最大の障壁は、リサイクル技術そのものではなく、「リバース・ロジスティクスとデータ・インフラストラクチャ」の欠如である。JEPLANが実用化するような高度なケミカルリサイクル技術も、安定した品質と量の「原料」、すなわち使用済み衣類が供給されなければ稼働しない。しかし現状は、何百万もの個人のクローゼットから適切な古着を、適切なリサイクル施設へ、コスト効率よく届けるという巨大な「リバース・ロジスティクス(静脈物流)」の問題が存在する 50。さらに、効率的なリサイクルのためには各衣類の正確な素材組成データが不可欠だが、古着の多くはタグが失われているという「データ」の問題もある 50。したがって、循環経済の真の実現要因は、リサイクル工場そのものだけでなく、それを支える回収拠点、選別センター、そしてデジタル製品パスポートのようなデータシステムからなるネットワーク全体である。戦略的な注力点は、リサイクル技術の研究開発だけでなく、この地味ではあるが決定的に重要なリバース・ロジスティクスと原料管理の問題を解決するためのパートナーシップ構築(物流企業、自治体、選別技術を持つスタートアップなど)にある。原料(フィードストック)を制する者が、循環経済を制するのである。
第6章:顧客需要の特性分析
6.1. 主要顧客セグメントとKBF(Key Buying Factor)
繊維・アパレル製品の顧客は一様ではなく、セグメントごとに求める価値(KBF: Key Buying Factor、主要購買決定要因)が大きく異なる。
- ファストファッション消費者: このセグメントのKBFは、第一に「価格」、次いで「トレンド性」と「利便性」である。サステナビリティは二次的な要素であり、環境配慮を理由に高い価格を支払う意思は限定的である 25。
- ラグジュアリー層: KBFは「ブランドの威信」「卓越した品質」「独自性と希少性」である。この層はサステナビリティへの関心が高く、信頼できるブランドが提供するサステナブル製品に対しては、平均で1.4倍の価格プレミアムを許容する傾向がある 55。ただし、その前提として、ブランドのサステナビリティへの取り組みが本物であり、信頼できるものであることが不可欠となる。
- アウトドア・スポーツ愛好家: KBFは「機能性(防水性、透湿性など)」「耐久性」「ブランドへの信頼」である。日常的に自然環境と接する機会が多いため、他のセグメントと比較して環境配慮への意識が高い傾向にある 56。Patagoniaのように、企業の環境保護活動や理念に共感し、製品を購入するロイヤルティの高い顧客層を形成している 57。
- 産業資材ユーザー(BtoB): 自動車、航空、建築などの分野におけるBtoB顧客のKBFは、従来「性能」「コスト」「安定供給」であった。しかし近年、最終製品メーカー(例:自動車メーカー)からの要請により、「軽量化による燃費向上」「リサイクル素材の使用率」「製品のLCAデータ」といったサステナビリティ関連の要求が、新たなKBFとして急速に重要性を増している。
6.2. サステナビリティに対する消費者の本音
消費者のサステナビリティに対する意識と実際の購買行動の間には、依然としてギャップが存在する。
- 価格の壁: 多くの消費者にとって、サステナビリティは依然として「価格」や「デザイン」といった伝統的な購買要因を上回る決定打にはなっていない。ある調査では、サステナブルな商品の購入を思いとどまる理由として、66%もの消費者が「割高であること」を挙げている 58。企業のサステナビリティへの取り組みは、価格への転嫁を最小限に抑える努力とセットでなければ、マス市場には浸透しにくい。
- グリーンウォッシュへの不信感: 特にZ世代は、広告における誇張された表現や不透明性を強く嫌う傾向がある 25。企業が発信するサステナビリティ情報に対し、消費者は具体的なデータや事実に基づいた裏付けを求めている。しかし、パッケージに表示されたサステナビリティ情報を実際にチェックする消費者は20%に留まっており、企業からの情報が十分に伝わっていない、あるいは信頼されていないという課題も浮き彫りになっている 58。
6.3. BtoB顧客の要求の変化
BtoB市場では、顧客からの要求が明確に変化している。アパレルブランドが素材メーカーに求める価値は、従来の「コスト」や「機能性」といった製品スペックに加え、「トレーサビリティ証明」「LCAデータ」「人権デューデリジェンスへの対応状況の報告」へと大きくシフトしている 49。これは、アパレルブランド自身が、最終消費者や規制当局からサプライチェーン全体の透明性を問われるようになったためである。この結果、素材メーカーはもはや単なる「モノ売り」ではなく、製品に付随する信頼性とデータを証明する「ソリューション・プロバイダー」としての役割を担うことが強く求められている。
「サステナビリティ・プレミアム(環境配慮への対価)」は、すべての消費者に一律に存在するわけではなく、セグメントごとに条件が大きく異なる。ファストファッション消費者は価格に敏感で、サステナビリティへの支払い意思は低い 25。一方で、ラグジュアリー層は、ブランドのストーリーを信頼できれば1.4倍という高いプレミアムを支払う意思がある 55。アウトドア愛好家は、サステナビリティを製品の耐久性やブランドの理念と結びつけて評価する 56。したがって、企業のサステナビリティ戦略は、自社のブランド・ポジショニングとターゲット顧客層に深く根差したものでなければならない。マスマーケットブランドは、価格への影響を最小限に抑えつつサステナビリティを実現する(例:生産効率の改善によるコスト吸収)べきである。一方、プレミアムブランドやニッチブランドは、データに裏打ちされた深く本物のサステナビリティ・ストーリーを価値提案の中核に据え、価格プレミアムを正当化するべきである。
第7章:業界の内部環境分析
7.1. VRIO分析:持続的競争優位の源泉
持続的な競争優位の源泉となる経営資源やケイパビリティ(組織能力)を、VRIOフレームワーク(Value: 経済的価値、Rarity: 希少性、Imitability: 模倣困難性、Organization: 組織)で分析する。
- 独自の素材開発技術・特許: Spiberが開発した構造タンパク質素材「Brewed Protein™」や、東レが世界トップシェアを誇る炭素繊維技術は、高度な科学的知見と長年の研究開発投資の賜物である 59。これらは特許によって法的に保護されており、他社が短期間で模倣することは極めて困難(Inimitable)であり、持続的な競争優位の強力な源泉となる。
- 強力なブランドエクイティ: Patagoniaが長年にわたる環境保護活動を通じて築き上げた「環境活動家企業」としてのブランドイメージや、Gore-Texが性能保証を通じて確立した「絶対的な防水透湿性」への消費者の信頼は、単なるマーケティングでは構築できない無形資産である 61。これらのブランドエクイティは希少(Rare)かつ模倣困難(Inimitable)であり、高い価格プレミアムと顧客ロイヤルティをもたらす。
- 循環型エコシステムの構築能力: JEPLANは、自社のケミカルリサイクル技術を核としながらも、良品計画やイオンといった多数の小売・アパレル企業を巻き込み、消費者からの衣類回収から再生原料の供給までを一気通貫で行う循環ループを社会インフラとして構築・運営している 63。この、多様なステークホルダーを束ねて新たなバリューチェーンを創造する「エコシステム構築能力」は、単一の技術力以上に希少(Rare)で模倣困難(Inimitable)な組織的ケイパビリティ(Organized)である。
7.2. 人材動向:求められるスキルの変革
業界の構造変化は、求められる人材像にも大きな変革を迫っている。
- 人材像の変化: 従来の繊維技術者や生産管理者に加え、サステナビリティとテクノロジーを事業に統合できる新たな専門人材の需要が急増している。具体的には、バイオ素材などを開発する素材科学者、需要予測やサプライチェーン最適化を担うデータサイエンティスト、LCA評価や人権デューデリジェンスを専門とするサステナビリティ専門家、そして事業全体のデジタル変革を推進するDX推進人材などである 65。
- 賃金相場と人材獲得競争: 特にデータサイエンティストのような高度専門人材は、アパレル業界だけでなく、IT業界や金融業界など、あらゆる産業で引く手あまたとなっている。そのため、年収800万円から1,500万円といった高い報酬水準が提示されることも珍しくない 66。従来の繊維業界の給与体系や人事制度では、このようなトップタレントを獲得・維持することは極めて困難であり、他業界との厳しい人材獲得競争に直面している。
7.3. 労働生産性:自動化のポテンシャルと課題
- 労働集約的な構造: 繊維産業、特に最終製品を組み立てる縫製工程は、柔らかく伸縮性があり、形状が不安定な布を精密に扱う必要があるため、自動化が極めて難しいとされてきた。このため、依然として人手に大きく依存する労働集約的な産業構造が続いており、これが生産拠点を低賃金国へと移転させる主要な要因となってきた。
- 自動化・省人化の進展: 近年、ロボット技術と画像認識技術の進化により、この状況が変わりつつある。3D縫製ロボットの開発が進んでおり、ある事例では、24時間無人稼働によって熟練工8~10人分の労働量をこなし、生産効率を2倍にするポテンシャルを持つと報告されている 67。縫製工程の自動化が本格的に実現すれば、人件費の削減だけでなく、品質の安定化、そして生産拠点の消費地への回帰(リショアリング)や、個々の注文に応じたオンデマンド生産のコスト低減に繋がり、業界のコスト構造とサプライチェーンを根本から変える可能性がある。
この業界における最も永続的な競争優位性は、個別の技術やブランド資産を超えた、「エコシステム・オーケストレーション能力」となるだろう。VRIO分析はSpiberの特許やPatagoniaのブランドを重要な経営資源として示しているが、循環経済という複雑な課題は、一社単独では解決不可能である。JEPLANの事例が示すように、真の価値はリサイクル技術そのものだけでなく、数百ものパートナー企業を巻き込んで機能するシステムを構築・運営する組織能力にある 64。究極の優位性は、パズルのピースを一つ持つこと(例:優れた新素材)ではなく、必要な全てのプレイヤー(供給者、競合、消費者、政府)をまとめ上げ、新たな複雑なバリューチェーンを構築・主導する能力である。これは、伝統的な指揮命令型の経営ではなく、影響力、パートナーシップ管理、プラットフォーム思考といった、新たなリーダーシップのスキルセットを要求する。
第8章:AIの影響とインパクト
人工知能(AI)は、繊維業界が抱える古くからの課題を解決し、ビジネスプロセスを根本から変革する強力なツールとして急速にその存在感を増している。
8.1. デザイン・企画
生成AIは、過去の膨大なデザインアーカイブ、SNS上で拡散される最新のトレンド画像、世界中のテキスタイルパターンなどを学習し、新たなデザイン案を数秒で数千、数万と生成する能力を持つ。これにより、デザイナーの役割は、ゼロからアイデアを生み出す「創作者」から、AIが提示した多様な選択肢の中から有望なものを選び出し、編集・洗練させる「キュレーター」へと変化する。この変革は、企画開発プロセスのスピードと創造性を飛躍的に向上させる。
8.2. 需要予測と在庫最適化
AIの導入効果が最も劇的に現れるのが、需要予測の領域である。AIは、過去の販売実績(POSデータ)のような社内データだけでなく、SNSの投稿頻度やセンチメント、インフルエンサーの発言、気象データ、競合他社のプロモーション活動といった、従来は分析が困難だった非構造化データを含む膨大な変数をリアルタイムで解析する 53。これにより、SKU(Stock Keeping Unit:最小管理単位)レベルでの極めて精度の高い需要予測が可能となる。
この高精度な予測は、アパレル業界最大の経営課題である「過剰在庫」問題を根本から解決するポテンシャルを秘めている。ある事例では、AI予測の導入によって発注精度が向上し、販売機会の損失を抑えながら販売数量を30%削減することに成功したと報告されている 54。他業界の事例では、スシローがAIを活用して需要を予測し、廃棄率を75%も削減した実績がある 13。これは、売れ残り商品の廃棄にかかるコストを削減するだけでなく、生産段階での資源の無駄遣いをなくし、企業の収益性とサステナビリティを同時に改善する、まさに一石二鳥の効果をもたらす。
8.3. スマートファクトリー
工場内の生産設備に設置されたIoTセンサーが、稼働状況、エネルギー消費量、製品品質に関するデータをリアルタイムで収集する。AIはこれらの膨大なデータを分析し、設備の故障予知、品質不良の早期発見、エネルギー消費の最適化、そして生産スケジュールの動的な調整を行う。これにより、生産性の向上、エネルギー効率の最適化、そして品質の安定化を同時に実現するスマートファクトリーが現実のものとなる。
8.4. サプライチェーン管理
AIは、地政学リスクの発生、自然災害による港湾の閉鎖、輸送ルートの遅延、特定地域での需要の急変動など、グローバルで複雑なサプライチェーン全体に影響を及ぼす無数のリスク要因を常時監視・分析する。リスクの発生を早期に予測し、代替の調達先や輸送ルートを即座にシミュレーションして提案することで、サプライチェーンの寸断を防ぎ、事業の継続性を高めるレジリエンス(強靭性)の向上に貢献する。
8.5. パーソナライゼーション
ECサイトにおける顧客一人ひとりの閲覧履歴、クリックパターン、購買履歴をAIが分析し、その顧客に最も響くであろう商品を最適なタイミングでレコメンドする。国内最大級のファッションECであるZOZOの事例では、購入予測AIの導入により、顧客のサイト滞在時間が4倍に改善したと報告されている 13。将来的には、このパーソナライゼーション技術が、個人の身体サイズやデザインの好みに完璧に合わせた製品を一点から生産するオンデマンド生産と結びつき、究極の顧客体験と在庫ゼロを両立するビジネスモデルへと進化する可能性がある。
AIの最も深遠なインパクトは、個別の機能改善に留まらない。それは、デザイン、需要予測、生産、サプライチェーン、販売といった、従来はサイロ化されていた各業務プロセスを有機的に連携させ、完全に統合された応答性の高いバリューチェーンを構築する能力にある。AIは、企業の「中央神経系」として機能し、これまで分断されていた事業の各部分をデータで繋ぐ。例えば、AIによるトレンド分析(デザイン)は、AIによる需要予測に直接インプットされ、その予測はAI搭載のスマートファクトリーの生産計画を決定する。工場の生産データはAIサプライチェーン管理システムにフィードバックされ、パーソナライズされた販売データは、最初の需要予測をリアルタイムで修正するためのフィードバックループとなる。このデータ駆動型の統合ループを実現するためには、技術導入だけでなく、部門間の壁を取り払い、データに基づいた意思決定を行う組織文化への変革が不可欠である。
第9章:主要トレンドと未来予測
9.1. サーキュラーエコノミーの本格化
- 「繊維から繊維へ」のループ: 今後のサーキュラーエコノミーを本格化させる鍵は、JEPLANなどが実用化を進める化学的リサイクル(ケミカルリサイクル)技術である 64。この技術は、使用済みのポリエステル繊維を化学的に分子レベルまで分解し、不純物を除去した上で、再び石油から製造したものと同等の品質を持つポリエステル原料に再生する。これにより、従来の物理的リサイクルで課題であった品質劣化(ダウンサイクル)を克服し、衣類を何度も衣類へと再生させる真の「クローズドループ・リサイクル」が実現可能になる。ただし、現状ではリサイクルプロセスにおけるコストとエネルギー消費が商業的な普及に向けた課題となっている。
9.2. オンデマンド生産の普及
デジタル捺染、3D設計、そして縫製ロボットといった生産技術の進化は、「受注後生産(Build-to-Order)」モデルをアパレル業界で現実的なものにする。顧客からの注文を受けてから、あるいは需要が確定してから生産を開始することで、企業は需要予測の誤差から必然的に生じる売れ残り在庫のリスクから根本的に解放される。これは、業界の「大量生産・大量廃棄」モデルからの完全な脱却を意味する。
9.3. スマートテキスタイルの市場拡大
- 市場規模: 導電性繊維やマイクロセンサーを布地に組み込んだスマートテキスタイルの市場は、驚異的な成長期に入ると予測されている。世界の市場規模は、2025年の42.3億ドルから2033年には214.6億ドルへと、年平均成長率(CAGR)22.5%で急拡大する見込みである 69。
- 用途: 心拍数や体温、発汗量といった生体情報をモニタリングするウェアは、個人の健康管理やアスリートのパフォーマンス向上を目的としたヘルスケア・スポーツ分野で需要が拡大している 70。また、通信機能や発熱機能、位置情報検知機能を持つテキスタイルは、過酷な環境で作業する労働者の安全管理や、防衛・軍事分野での活用が期待される。これは、繊維製品が単なる「衣類」から、データを収集・送信する「情報デバイス」へと進化することを意味する。
9.4. デジタルファッションとメタバース
- 市場の可能性: 物理的な実体を持たないデジタルデータとしての衣類(デジタルファッション)が、新たな市場を形成しつつある。NFT(非代替性トークン)技術を活用し、デジタルウェアに唯一無二の所有権を付与することで、バーチャル空間(メタバース)のアバターが着用したり、デジタルアートとして収集・売買されたりする。ある調査では、この市場が2032年までに342.7億ドル規模に成長すると予測されている 72。物理的な生産を一切伴わないため、資源消費や環境負荷ゼロで無限の創造性を発揮できる、究極のサステナブルファッションとしての可能性を秘めている。
- 現状と将来性: 2021年の投機的なブームが沈静化した後、市場は調整局面にあるが、単なる投機対象から、より実用的なユースケースへと成熟しつつある 73。特に、アニメ、漫画、ゲームといった強力な知的財産(IP)を持つ日本は、デジタルファッションとの親和性が非常に高い。国内のNFT市場は2028年には1,142億円規模に達するという予測もあり、新たな成長領域として注目される 72。
スマートテキスタイルとデジタルファッションの台頭は、繊維業界における価値の「非物質化(Dematerialization)」という、より根源的な変化を示唆している。従来の成長モデルは「より多くの物理的な衣類を売る」ことに依存していたが、これは本質的に資源の制約を受け、廃棄物を生み出す。しかし、スマートテキスタイルの価値は布地そのものだけでなく、それが収集する「データ」と、そのデータを活用して提供される「サービス」(例:健康モニタリングのサブスクリプション)から生まれる。デジタルファッションに至っては、その価値は完全に非物質的であり、物理的な資源を一切消費せずに収益を生み出す。これは、企業の成長と収益性が、物理的な生産量から切り離される未来を意味する。この変化に対応するためには、アパレルメーカーから「ウェアラブル技術とデジタルライフスタイルの企業」へと、事業モデルと企業アイデンティティを根本から変革する戦略的決断が求められる。
第10章:主要プレイヤーの戦略分析
業界をリードする主要プレイヤーは、それぞれ異なる戦略的アプローチでこの構造変革に対応しようとしている。
| プレイヤー | ビジネスモデル | 中核的な強み | サステナビリティ戦略のハイライト | DX/技術投資 | 主要アライアンス | 課題/弱み |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東レ | 素材イノベーター | 高機能素材(炭素繊維等)における圧倒的な技術力、広範な特許ポートフォリオ 60 | サステナビリティを中長期経営課題の中核に据え、技術による社会課題解決を志向 60 | 基礎研究開発への継続的投資 | 航空機メーカー(Boeing)、自動車メーカー等との共同開発 | 汎用品市場での価格競争、新素材の市場浸透までの時間 |
| 帝人 | 素材イノベーター | 高機能繊維(アラミド)とヘルスケア事業の多角化経営 75 | マテリアル事業とヘルスケア事業のシナジーによるQOL向上への貢献 | 複合成形材料技術、在宅医療機器 | 自動車、航空宇宙、医療分野のパートナー | 繊維事業の収益性、グローバル市場での競争激化 |
| Lenzing | 素材イノベーター | TENCEL™等、木材由来セルロース繊維の強力なブランドとサステナブルな製造プロセス 76 | コモディティから撤退し、高付加価値なサステナブルブランド繊維に経営資源を集中 77 | 循環型技術(REFIBRA™)、排出削減技術への投資(2億ユーロ超)79 | グローバルアパレルブランドとのパートナーシップ | 原料(木材パルプ)価格の変動、アジアの安価な再生繊維との競争 |
| Inditex (ZARA) | SPA(製造小売) | 高速な商品企画・生産・販売サイクル、データ駆動型の店舗運営 | 2030年までに100%「低インパクト素材」への転換、サプライチェーン全体の排出量50%削減など野心的な目標 80 | RFIDによる在庫管理、AIによる需要予測、オンラインと店舗の統合 | サステナビリティ・イノベーション・ハブを通じたスタートアップとの連携 | ファストファッションモデル固有の大量生産・消費イメージ、サプライチェーンの複雑性 |
| Fast Retailing (UNIQLO) | SPA(製造小売) | 「LifeWear」コンセプトに基づく高品質・高機能・長寿命な製品、強力なブランド力 82 | 「長く使える良い服」の提供自体をサステナビリティと定義、全商品リサイクル活動 | 有明プロジェクト(企画・生産・物流・販売の改革)、AIによる需要予測 | 東レとの戦略的パートナーシップ(ヒートテック等) | 海外市場での成長依存、トレンド追随型ではないビジネスモデルの限界 |
| Patagonia | サステナブル先進企業 | 環境保護活動と一体化した強力なブランド・アイデンティティ、顧客との強いエンゲージメント | 2025年までにカーボンニュートラル達成、100%リサイクル/再生可能素材の使用 83 | Worn Wear(リペア・リセール事業)プラットフォーム | 1% for the Planet、環境NGOとの連携 | プレミアム価格帯による市場規模の限定、理念とビジネス規模拡大の間の緊張 |
| Bolt Threads | 技術系スタートアップ | キノコ菌糸体由来の代替レザー「Mylo™」など、独自のバイオ素材開発技術 85 | 石油や動物由来素材からの脱却を目指す、根本的なサステナビリティの追求 | 微生物発酵、素材科学に関する研究開発 | Stella McCartney、土屋鞄製造所など、ブランドとの共同製品開発 86 | 量産技術の確立とコストダウン、市場投入までのリードタイム 87 |
| Spiber | 技術系スタートアップ | 微生物発酵による構造タンパク質「Brewed Protein™」の量産技術 59 | LCA評価で既存素材に対する優位性を実証、循環型社会への貢献をミッションに掲げる 89 | 発酵・精製プロセスのスケールアップ技術、AIを活用したタンパク質設計 | The Carlyle Groupからの大型出資、GOLDWIN等との製品共同開発 91 | 高い生産コスト、大規模量産体制の安定稼働、幅広い用途への展開 |
10.1. 素材メーカー
- 東レ (Toray): 炭素繊維や水処理膜といった非衣料分野の高機能素材で圧倒的な技術優位性を誇る。サステナビリティを中長期的な経営課題の中核に据え、自社の先端材料技術で社会課題を解決するというビジョンを明確に打ち出している 60。
- 帝人 (Teijin): アラミド繊維などの高機能繊維事業と、在宅医療や医薬品などのヘルスケア事業を両輪とする多角化経営が特徴。これにより、特定の市場の変動に対するリスクを分散させている 75。
- Lenzing: 業界の戦略的シフトを象徴する存在。収益性の低い汎用的なコモディティ繊維事業から段階的に撤退し、木材由来のサステナブル繊維であるTENCEL™やLENZING™ ECOVERO™といった、高付加価値なブランド繊維に経営資源を集中させる戦略転換を鮮明にしている 76。サステナビリティレポートでは、欧州の新しい報告基準(ESRS)に準拠し、詳細な非財務情報を開示するなど、透明性においても業界をリードしている 79。
10.2. SPA(製造小売)
- Inditex (ZARA): 2030年までに使用する繊維素材を100%リサイクル素材やオーガニック素材などの「よりインパクトの低い(lower-impact)」ものに切り替えるなど、非常に野心的なサステナビリティ目標を掲げている 80。自社の排出量(Scope 1, 2)だけでなく、サプライチェーン全体の排出量(Scope 3)の削減にもコミットし、サプライヤーへの働きかけを強化している 96。
- Fast Retailing (UNIQLO): 「LifeWear」というコンセプトを掲げ、トレンドを追うのではなく、長く使える高品質な服を提供すること自体がサステナビリティであると定義している 82。売上収益10兆円という高い成長目標を掲げる一方で、全商品のリサイクル活動(RE.UNIQLO)や、サプライチェーンにおける人権・労働環境の監視にも力を入れている 97。
10.3. サステナブル先進企業
- Patagonia: 「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを掲げ、ビジネスのあらゆる側面で環境負荷の低減を追求する。2025年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成し、製品に使用する素材の100%をリサイクル素材または再生可能素材にするという目標を掲げている 83。ビジネスの成功と環境・社会活動を両立させる、業界のロールモデルである。
10.4. 技術系スタートアップ
- Bolt Threads: キノコの根に当たる菌糸体(マイセリウム)を培養して作る代替レザー「Mylo™」や、微生物発酵プロセスで作るシルクプロテインを開発する米国のスタートアップ 85。これまでに2億ドル以上の資金を調達し、SPAC(特別買収目的会社)による上場も計画している 87。Stella McCartneyや土屋鞄製造所といった先進的なブランドとの提携を通じて、革新的な新素材の市場投入を目指している 86。
- Spiber: 微生物発酵技術により、クモの糸の遺伝子情報を基に設計した構造タンパク質素材「Brewed Protein™」を量産化する日本のユニコーン企業。これまでに累計4億8900万ドルを調達し、企業評価額は12億ドルを超える 59。タイと米国に大規模な量産工場を建設し、グローバルな供給体制の構築を急いでいる。サステナビリティを事業の中核に据え、LCA評価においても従来の動物由来・合成素材に対する環境優位性を科学的に示している 89。
第11章:戦略的インプリケーションと推奨事項
11.1. 勝者と敗者を分ける要因
これまでの包括的な分析を統合すると、今後5年から10年の間に繊維業界の勝者と敗者を分ける決定的な要因は、以下の3つの能力に集約される。
- マテリアル・ポートフォリオ管理能力: 単一の素材(例:綿、ポリエステル)に依存するリスクを認識し、リサイクル素材、バイオ由来素材、次世代のラボグロウン素材など、多様な選択肢の中から、コスト、性能、そして環境負荷(LCAデータ)の観点から最適な素材ポートフォリオを動的に構築・管理する能力。
- データ駆動型のバリューチェーン構築能力: AI、IoT、ブロックチェーンといったデジタル技術を駆使し、トレンド予測・需要予測から、生産計画、そして原材料から最終製品までのトレーサビリティまで、バリューチェーン全体の情報をリアルタイムで可視化し、迅速かつ的確な意思決定に活かす能力。
- エコシステム形成・主導能力: 自社単独では解決不可能な循環経済の実現という壮大な課題に対し、業界内外の多様なプレイヤー(競合他社、スタートアップ、自治体、消費者)を巻き込み、オープンな協業プラットフォームを構築して業界標準を形成していくリーダーシップと実行力。
11.2. 機会と脅威
上記の分析を踏まえ、直面する機会(Opportunities)と脅威(Threats)は以下のように整理できる。
- 機会 (Opportunities):
- EUの環境・人権規制を先取りした製品・サプライチェーンを構築することで、規制が事実上の参入障壁となる高付加価値市場での先行者利益を獲得する。
- SpiberやBolt Threadsのような次世代素材スタートアップと戦略的提携を結ぶことで、製品の抜本的な差別化とブランド価値向上を実現する。
- 急成長するリセール・リペア市場へ自ら参入することで、新たな収益源を確保すると同時に、顧客との継続的な関係を構築し、ライフタイムバリューを向上させる。
- 脅威 (Threats):
- 自社のサプライチェーンにおける人権侵害や環境汚染が発覚することによる、深刻なレピュテーションリスクと事業停止リスク。
- EUの規制強化への対応が遅れることによる、世界最大級の消費市場からの締め出し(マーケットアウト)。
- 化学、バイオ、ITといった異業種から、破壊的な技術やビジネスモデルを持つディスラプターが出現し、既存の競争環境が根底から覆されるリスク。
11.3. 戦略的オプションの提示と評価
これらの機会と脅威を踏まえ、取り得る主要な戦略的オプションを3つ提示し、評価する。
| 戦略オプション | 概要 | 潜在的な収益性/成長性 | 実行リスク/難易度 | 必要な能力/投資 | 業界トレンドとの適合性 |
|---|---|---|---|---|---|
| A: 次世代素材への垂直統合 | Spiberのような革新的素材スタートアップを買収または大規模な資本提携を行い、独自の差別化された素材を自社グループ内に取り込む。 | 高い。模倣困難な製品を開発できれば、高い利益率と市場シェアが期待できる。 | 高い。買収後の技術・組織統合(PMI)の難易度が高い。スタートアップの企業価値が高騰しており、投資額が巨額になる。 | 巨額のM&A資金、高度な技術評価能力、スタートアップ文化を尊重する組織運営能力。 | 非常に高い。素材革命というメガトレンドの核心を突く戦略。 |
| B: 循環型ビジネスモデルへの転換 | 自社ブランドの公式リセール・プラットフォームや、製品のサブスクリプション・レンタルサービスを立ち上げ、製品のライフサイクル全体から収益を得るモデルへ転換する。 | 中程度~高い。新たなサービス収益源を創出。顧客エンゲージメントを高め、ブランドロイヤルティ向上に繋がる。 | 中程度。リバース・ロジスティクス(回収・検品・再生)の構築が課題。新品販売とのカニバリゼーション(共食い)のリスク管理が必要。 | ECプラットフォーム構築・運営能力、物流・倉庫管理能力、データ分析に基づく価格設定能力。 | 非常に高い。脱・リニアエコノミー、所有から利用へというトレンドに合致。 |
| C: 「透明性サービス」のリーダー | 自社で構築した高度なトレーサビリティシステムとLCAデータ基盤を、他の中小アパレルブランドにSaaS(Software as a Service)として提供。サステナブルな素材調達・管理を支援するBtoBプラットフォーマーを目指す。 | 中程度。安定したストック型収益が期待できる。市場規模はアパレル市場より小さいが、高い専門性でニッチ市場を独占できる可能性がある。 | 中程度。高度なITシステム開発・運用能力が必要。他社に信頼される中立性とデータセキュリティの確保が不可欠。 | ブロックチェーン等の先端技術に関する知見、SaaS事業開発・運営能力、強力なデータガバナンス体制。 | 非常に高い。規制強化と透明性要求の高まりというトレンドを直接的な事業機会に変える戦略。 |
11.4. 最終提言:循環型マテリアル・プラットフォーマーへの変革
提言:
これまでの分析を総合すると、持続的な成長を遂げるための最も有望な戦略は、単なる製品メーカーから脱却し、「データに基づき、持続可能な素材と製品ライフサイクルサービスを提供するプラットフォーマー」へと事業モデルを根本から変革することである。これは、上記オプションA, B, Cの要素を統合し、段階的に実行する野心的なビジョンである。
具体的なアクションプラン(概要):
- Phase 1 (Year 1-2): 基盤構築 – 「可視化とデータ化」
- アクション: サプライチェーン全体(少なくとも主要なティア1、ティア2サプライヤーまで)をマッピングし、ブロックチェーン等の技術を活用してトレーサビリティを確保する。全主要製品についてLCA評価を実施し、環境負荷データを収集・可視化するシステムを導入する。
- 主要KPI: 主要サプライヤーのトレーサビリティ確保率100%、主要製品のLCAデータ整備率100%。
- 必要リソース: DX部門とサステナビリティ部門の合同タスクフォース設置、トレーサビリティ/LCA技術への戦略的投資(数十億円規模)。
- Phase 2 (Year 2-4): 事業転換 – 「素材革新とサービス化」
- アクション: CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、有望な次世代素材スタートアップへ戦略的出資を行う(オプションAの要素)。並行して、自社製品を対象とした公式リセールおよびリペアサービスを本格的に事業化する(オプションBの要素)。
- 主要KPI: 自社製品におけるリサイクル/次世代素材の使用率50%達成、リセール/リペアサービスの売上構成比5%達成。
- 必要リソース: CVCの設立・運営資金、リセール事業者との提携または買収、リバース・ロジスティクス網の構築。
- Phase 3 (Year 4-5): プラットフォーム化 – 「エコシステムの主導」
- アクション: Phase 1で構築したトレーサビリティ・LCAデータ基盤を、規制対応に悩む他の中小アパレルブランドにSaaSとして提供開始する(オプションCの要素)。また、Phase 2で構築した回収・再生ネットワークをオープン化し、業界全体のインフラとして他社も利用可能な形で収益化を図る。
- 主要KPI: プラットフォーム事業の顧客数、プラットフォーム経由の素材・サービス取扱高。
- 必要リソース: プラットフォーム事業部門の新設、業界団体や政府との連携強化による標準化の推進。
この変革は容易ではないが、業界の構造変化の波に乗り、未来のルールを自ら創り出すことで、今後数十年にわたる持続的な競争優位を確立することができると確信する。
第12章:付録
参考文献、引用データ、参考ウェブサイトのリスト
本レポートの作成にあたり参照した情報源は、文章の末尾に記載された識別子(例: 5)に対応する。
用語解説
- サーキュラーエコノミー (Circular Economy): 従来の一方通行(リニア)型の経済モデル(生産→消費→廃棄)に代わり、製品や資源を廃棄することなく、再利用・再生し続けることで、価値を最大限に引き出す経済システム。
- LCA (Life Cycle Assessment): 製品やサービスが、そのライフサイクル全体(原料調達、製造、使用、廃棄・リサイクル)を通じて環境に与える影響を定量的に評価する手法。
- VRIO (Value, Rarity, Imitability, Organization): 企業の経営資源やケイパビリティが持続的な競争優位の源泉となりうるかを、「経済的価値」「希少性」「模倣困難性」「組織」の4つの観点から分析するフレームワーク。
- グリーンウォッシュ (Greenwash): 環境配慮をしているように見せかけて、実態が伴わないにもかかわらず、そのイメージを訴求する企業活動。
- スマートテキスタイル (Smart Textile): センサーや導電性繊維などの電子部品を組み込み、周囲の環境や着用者の状態を感知・反応・通信する機能を持たせた高付加価値な繊維製品。
引用文献
- Textile Market Size to Reach USD 4,893.1 bn by 2035, https://dimensionmarketresearch.com/report/textile-market/
- Textile Market Size, Share & Growth Forecast 2035, https://www.researchnester.com/reports/textile-market/6181
- Textile Market Size, Share, Growth & Industry Report 2034, https://www.marketresearchfuture.com/reports/textile-market-25424
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- 炭素繊維複合材料の世界市場、車両軽量化の需要で2035年に3兆7000億円超へ 富士経済予測, https://www.netdenjd.com/articles/-/271704
- 炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査
カーボンニュートラルなど、世界的な環境意識の向上により注目が集まる | プレスリリース | 富士経済グループ, https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=21069&la=en - サステナブル衣料品市場 | 市場規模 市場動向 予測 2025 – 2034年 – グローバルインフォメーション, https://www.gii.co.jp/report/gmi1716711-sustainable-clothing-market-opportunity-growth.html
- Eco Fibers Market, Industry Size Forecast [Latest] – MarketsandMarkets, https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/eco-fibers-market-152829511.html
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- 2025年から2032年までの持続可能なリサイクル繊維市場の成長 …, https://pando.life/article/1383520
- わが国繊維産業を取り巻く環境と中小繊維企業にみる国際化の取り組み – 日本総研, https://www.jri.co.jp/report/rim/detail/3747/
- 【2025年最新】繊維業界の動向5選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介, https://www.s-agent.jp/column/21443
- AI需要予測の導入事例20選!目的別で成功パターンと効果を紹介 | ニューラルオプト, https://neural-opt.com/ai-demand-forecast-cases/
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- 欧州委が公表した持続可能な循環型繊維戦略。その目的や課題 …, https://cehub.jp/insight/eu-circular-fashion-2022/
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- 人権デューデリジェンスとは?概要、課題、具体的な取り組みまで丁寧に解説 – MOVE ON オリックス株式会社, https://www.orix.co.jp/grp/move_on/entry/2024/10/11/100000
- 欧州の人権・環境デュー・ディリジェンス 義務化と日本への示唆 – Research Focus, https://www.jri.co.jp/file/report/researchfocus/pdf/14067.pdf
- 人権デュー・ディリジェンスの導入へ、転換期を迎える日本企業(世界、日本) | コロナ禍の変化と混乱、複雑化するビジネス課題への対応は – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ, https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2022/0301/bf3b3238b21ec145.html
- ウイグル人権問題に直面するアパレル企業、難しい産地把握 – 世界経済フォーラム, https://jp.weforum.org/stories/2021/03/uiguru-ni-suruapareru-shii/
- 2025年はアパレル業界のトレーサビリティ・デッドライン!?法規制とブランディングの観点からその重要性を徹底解説!, https://trade-log.io/column/5932
- Polyester raw material prices increased due to high crude oil price – ResearchGate, https://www.researchgate.net/publication/294345125_Polyester_raw_material_prices_increased_due_to_high_crude_oil_price
- Ethylene prices have 96% correlation to oil prices – Chemicals and the Economy – ICIS, https://www.icis.com/chemicals-and-the-economy/2014/03/ethylene-prices-96-correlation-oil-prices/
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- 【国際】H&M、ブロックチェーンで人造セルロースと再生ポリエステルのトレーサビリティ確保。TextileGenesis協働 | Sustainable Japan, https://sustainablejapan.jp/2022/05/05/hm-textilegenesis/72848
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- ファイブフォース分析とは?具体例を用いて分かりやすく解説 | 記事一覧 | 法人のお客さま, https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/14244/
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- 環境問題に関心がある人の割合、キャンパーは一般の約1.5倍!8割以上がキャンプ先でのごみの多さに驚いた経験あり ブリタでプラごみを減らしてキャンプの水を楽ちん&美味しく | BRITA Japan株式会社のプレスリリース – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000057138.html
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