脱・販売依存モデル:生涯価値(LTV)と倫理的経営で再定義するペットショップの未来戦略
第1章:エグゼクティブサマリー
本レポートは、日本のペットショップ業界が直面する深刻かつ多層的な構造変化を分析し、この変革期を乗り越え、持続可能な成長を実現するための事業戦略を提言することを目的とする。調査対象は、犬猫を中心としたペットの生体販売、フード・用品の小売、およびトリミング、動物病院、ペット保険、しつけ、介護といった生涯サポートに関連するサービスを提供する事業者とする。
ペットショップ業界は、歴史的な岐路に立たされている。従来の「生体やモノの販売」を収益の柱とするビジネスモデルは、3つの巨大な潮流によってその基盤が揺らいでいる。第一に、ECサイトやD2C(Direct to Consumer)モデルの台頭による、価格と利便性を軸とした競争の激化。第二に、「ペットの家族化(ヒューマナイゼーション)」という不可逆的な社会トレンドに伴う、健康、安全、ウェルネスを重視した顧客ニーズの高度化・多様化。そして第三に、生体販売、特に犬猫の幼齢個体販売に対する動物愛護(アニマルウェルフェア)の観点からの社会的・倫理的圧力の高まりである。
これらの構造変化は、脅威であると同時に、新たな収益機会の源泉でもある。本分析から導き出される最も重要な結論は、業界の持続的成長は、もはや飼育頭数の増加によってではなく、「ペット一頭当たりの生涯価値(LTV: Lifetime Value)」の最大化によってのみ達成可能であるという点にある。価値の源泉は「モノの販売」から、ペットの生涯に寄り添う「コト・サービス」へと完全にシフトした。このパラダイムシフトに適応できない企業は、市場からの退場を余儀なくされるだろう。
この分析に基づき、取るべき事業戦略として、以下の4つの主要な推奨事項を提言する。
- 事業ポートフォリオの抜本的再構築: 収益と社会からの批判の双方でリスクの高い生体販売への依存度を計画的に引き下げ、動物医療、シニアケア(介護)、ペット保険、専門的なしつけといった「生涯サポートサービス」を新たな収益の核として確立する。これは、単なる追加サービスではなく、事業の重心そのものを移す戦略的転換である。
- オムニチャネル戦略の深化とリアル店舗の再定義: リアル店舗を「専門家によるコンサルテーションとコミュニティ形成のハブ」として再定義し、ECでは決して提供できない体験価値(信頼関係に基づくカウンセリング、飼い主同士の交流)を創出する。一方、オンラインは利便性(消耗品のサブスクリプション等)の提供と、顧客・ペットデータを収集・分析するインテリジェンス基盤として機能させ、両チャネルをシームレスに融合させる。
- 倫理的経営への転換とブランド価値の再構築: 保護犬・保護猫の譲渡活動を事業の根幹に据え、社会的価値と経済的価値を両立させるビジネスモデルを構築する。サプライチェーンの透明性を確保し、アニマルウェルフェアへの真摯な取り組みをブランドの中核的価値として積極的に訴求することで、倫理的な消費を求める現代の顧客から選ばれる企業となる。
- データ駆動型経営への完全移行: 顧客データ(購買履歴、家族構成)とペットのライフステージデータ(犬種、年齢、健康状態)を統合的に管理・分析する基盤を構築する。AI(人工知能)とペットテックを活用し、個々のペットに最適化された商品やサービスを適切なタイミングで提供することで、顧客エンゲージメントを高め、LTVを最大化する。
第2章:市場概観(Market Overview)
日本のペット関連市場は、飼育頭数の伸び悩みという構造的な課題を抱えながらも、一頭当たりの消費額増加に支えられ、堅調な成長を続けている。この章では、市場の全体像をマクロな視点から捉え、成長を牽引する要因と今後の方向性を明らかにする。
市場規模の推移と予測
矢野経済研究所の調査によると、日本のペット関連総市場規模(小売金額ベース)は、2023年度に1兆8,629億円(前年度比4.5%増)に達し、2024年度には1兆9,108億円(同2.6%増)へとさらなる拡大が見込まれている 1。この成長は過去5年間にわたり継続しており、今後も堅調な推移が予測される。
しかし、この市場成長の背景には特筆すべき構造が存在する。一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査によれば、犬の飼育頭数は2016年の約801万頭から2024年には約680万頭へと明確な減少傾向にある 5。一方で、猫の飼育頭数は同期間に約833万頭から約916万頭へと微増または横ばいで推移しており、2017年以降、猫が犬の飼育頭数を上回る状況が続いている 5。
飼育頭数全体が伸び悩む中で市場規模が拡大しているこの「パラドックス」は、市場の成長ドライバーが「頭数(Quantity)」から「単価・質(Quality)」へと完全にシフトしたことを示唆している。その主な要因は二つある。第一に、原材料費や物流費の高騰に伴うペットフードや用品の値上げである 3。そして第二に、より本質的な要因として、「ペットの家族化」を背景に、飼い主が高品質・高価格帯のプレミアムフードや高度な医療・サービスを選択する傾向が強まっていることである 4。この単価上昇が、飼育頭数の減少を補って余りある成長を生み出している。
カテゴリ別・チャネル別・ペット種類別分析
市場の構造変化をより深く理解するため、カテゴリ別、チャネル別、ペット種類別に市場を分解する。
- カテゴリ別: 市場を牽引しているのはペットフードであり、特にキャットフード市場の伸長が著しい 3。これは猫の飼育頭数が安定していることに加え、メーカー各社が猫の健康(腎臓ケアなど)に配慮した高付加価値商品を積極的に投入していることが背景にある 4。また、獣医療やペット保険といったサービス分野も高い成長を示している。ペット保険市場は2024年度に1,478億円規模に達し、年平均成長率も高い水準を維持している 10。これはペットの長寿化に伴う医療費の増大と、飼い主の健康意識の高まりを反映したものである。
- チャネル別: 販売チャネルでは、EC(インターネット通販)の拡大が最も顕著なトレンドである。富士経済の予測では、ペット関連製品の国内EC市場は2022年の1,872億円から2027年には2,463億円へと約31.6%増加する見込みである 11。特にAmazonや楽天といった大手ECモールが市場の6割以上を占めている 12。これに対し、ペット専門店やGMS(総合スーパー)、ホームセンターといったリアル店舗は、ECにはない付加価値の提供による差別化が急務となっている。
- ペット種類別: 前述の通り、犬の飼育頭数が減少する一方で、猫の飼育頭数は安定している。このため、多くのメーカーや小売業者が猫関連商品のラインナップ拡充や売場拡大に注力しており、市場全体の成長を猫が下支えしている構図となっている 3。
以下の表は、これらの市場構造の変化を概観したものである。
| 年度 | 市場全体規模(億円) | カテゴリ別(億円) | チャネル別(億円) |
|---|---|---|---|
| フード: 6,379 (2022) 13 | EC: 1,872 (2022) 11 | ||
| 過去 | 16,242 (2020) 7 | 用品: 917 (2024) 9 | ペット専門店: N/A |
| (実績) | 18,629 (2023) 4 | 獣医療: 2,623 (2019) 14 | GMS/HC: N/A |
| 保険: 1,478 (2024) 10 | 動物病院: N/A | ||
| 将来 | 19,026 (2024) 1 | フード: 700 (EC, 2027予測) 11 | EC: 2,463 (2027予測) 11 |
| (予測) | 19,108 (2024) 2 | ペットテック: 72 (2030予測) 15 | その他: N/A |
(注: 各調査機関により調査範囲・定義が異なるため、合計値は一致しない。トレンドを把握するための参考値として記載)
業界の主要KPIベンチマーク分析
- 主要ペットショップチェーン: 業界はイオンペット、AHB、コジマといった大手チェーンによる寡占化が進んでいる。これらの企業は、全国的な店舗網とブランド力を背景に、リテール事業に加えてトリミングや動物病院などのサービス事業を組み合わせることで、顧客の囲い込みを図っている。
- サービス部門の成長率: 物販の成長が緩やかになる中で、ペット保険、ペットホテル、しつけ教室といったサービス部門は二桁近い成長を続ける分野も多く、業界全体の収益構造が「モノ」から「コト」へとシフトしていることを裏付けている。
- EC化率: 2023年時点でのペット関連総市場におけるEC市場の割合(EC化率)は、約15%程度と推定される 4。これは他の小売分野と比較するとまだ低い水準であるが、D2Cブランドの台頭や大手プラットフォーマーの注力により、今後急速に上昇することが確実視されている 11。
第3章:外部環境分析(PESTLE Analysis)
ペットショップ業界は、社会の価値観の変化や技術革新、法規制の強化といったマクロ環境の変動から極めて大きな影響を受ける。本章では、PESTLEフレームワーク(政治、経済、社会、技術、法規制、環境)を用いて、業界を取り巻く外部環境を構造的に分析し、事業戦略上の機会と脅威を特定する。
政治(Politics)
政治的要因として最も影響が大きいのは、動物愛護管理法の段階的な強化である。2019年に改正された法律が順次施行され、ペットビジネスのあり方を根本から変えつつある 17。
- 数値規制の導入: 従業員一人当たりの飼育頭数上限や、ケージのサイズ(床面積、高さ)に関する具体的な数値基準が設けられた。これは、劣悪な環境下での大量繁殖(いわゆるパピーミル)を抑制することを目的としており、ブリーダーや販売業者に対して、飼育環境の改善とそれに伴うコスト増を要求する。
- マイクロチップ装着・登録の義務化: 2022年6月以降、ブリーダーやペットショップで販売される犬猫へのマイクロチップ装着が義務化された。これにより、個体管理が徹底され、安易な遺棄の防止や災害時の身元確認に繋がることが期待される。事業者にとっては、装着と登録に関するオペレーションコストが発生する。
- 生後56日(8週齢)規制の徹底: 親兄弟から引き離す時期が早すぎると、犬猫の社会性が育まれず問題行動に繋がるという科学的知見に基づき、生後56日を経過しない犬猫の販売・展示が禁止された 18。これにより、ペットショップの店頭にいる子犬・子猫の月齢が上がり、消費者が好む「幼齢個体」の販売期間が短縮されるという影響が出ている 19。
- 夜間展示販売の禁止: 午後8時から午前8時までの間の生体展示が禁止された。これは動物の休息時間を確保し、ストレスを軽減するための措置であり、店舗の営業時間や運営方法に直接的な影響を与える。
これらの規制強化は、短期的には事業者にとってコスト増加要因となる。しかし、長期的視点では、業界全体の健全化を促し、倫理基準の低い事業者を市場から淘汰する効果を持つ。したがって、アニマルウェルフェアを遵守し、透明性の高いサプライチェーンを構築できる企業にとっては、これを競争優位の源泉とすることが可能である。
経済(Economy)
経済環境は、消費者の支出行動に直接影響を与える。
- 原材料価格高騰とインフレ: 近年、穀物などのペットフード原材料費、エネルギー価格、物流費、人件費が世界的に高騰している 3。多くのメーカーはコスト吸収の限界を迎え、製品価格への転嫁を余儀なくされており、2022年以降、ペットフードは複数回にわたる値上げが実施された 20。
- ペット関連支出の非弾力性: 一般的に、景気が後退し可処分所得が減少すると、消費者は裁量的な支出を切り詰める。しかし、「ペットは家族の一員」という認識が浸透した現在、ペット関連支出(特にフードや医療費)は、人間の食費や医療費と同様に、景気変動の影響を受けにくい「非弾力的」な性質を強めている 22。物価高の中でも、飼い主はまず自身の娯楽費などを削り、ペットの生活水準を維持しようとする傾向が強い。ただし、一部では節約志向から、より安価なプライベートブランド(PB)商品へ需要がシフトする動きも見られる 8。
社会(Society)
社会・文化的要因は、顧客の価値観やライフスタイルを規定し、市場の需要構造を根本から変える最も強力なドライバーである。
- ペットの家族化・ヒューマナイゼーション: これは業界を貫く最大のメガトレンドである。調査によれば、99.6%の飼い主がペットを「家族」と認識している 23。この意識変化は、ペットに対する消費行動を人間のそれに近づけている。具体的には、①食事の品質(国産、無添加、オーガニック、ヒューマングレード)、②医療水準(予防医療、高度医療、再生医療)、③生活環境(快適な住環境、質の高いおもちゃや衣類)、④終末期ケア(介護、ペット葬儀)など、あらゆる面で要求水準が高度化・多様化している 22。
- 飼い主とペットのダブル高齢化: 日本の高齢化社会を背景に、ペットを飼育する高齢者が増加している。同時に、獣医療の進歩や飼育環境の向上により、ペット自体の平均寿命も延びている。その結果、高齢の飼い主が高齢のペットを介護する「老老介護」が深刻な社会問題となりつつある 24。これは、シニアペット向けのフードやサプリメント、介護用品(おむつ、床ずれ防止マット)、デイケアサービス、訪問介護、ペット信託といった新たな市場機会を創出している。
- 倫理的意識の変化と保護動物への関心: ペットショップのガラスケースでの生体販売、特に幼齢個体の展示に対して、倫理的な観点から疑問を呈する消費者が増加している 17。衝動買いを助長し、その結果として飼育放棄や殺処分に繋がるという批判も根強い。こうした意識の変化を背景に、ペットショップで購入するのではなく、保護犬・保護猫を里親として引き取るという選択肢への関心が高まっている。ホームセンターの綿半やカインズなどが積極的に店舗で譲渡会を開催し、多くの支持を集めていることはその象徴である 27。
技術(Technology)
テクノロジーの進化は、新たなビジネスモデルを生み出し、既存の業界構造を破壊する力を持つ。
- EC、サブスクリプション、D2Cの台頭: Amazonや楽天といったECプラットフォーマーは、圧倒的な品揃えと利便性で市場シェアを拡大している 11。さらに、CoCo GourmetやPETOKOTO FOODSに代表されるD2Cブランドは、個々のペットに合わせてパーソナライズされたフレッシュフードをサブスクリプションモデルで提供し、顧客と直接的な関係を築くことで、従来型の小売業を脅かしている 29。
- ペットテック(PetTech)の普及: AIやIoT技術を活用したペット向け製品・サービス群「ペットテック」が急速に市場を拡大している。国内のペットテック市場は2030年には72億円規模に達すると予測されている 15。具体例としては、①ウェアラブルデバイスによる健康管理(活動量、心拍数、睡眠のモニタリング)、②AI搭載の見守りカメラによる行動分析や異常検知、③スマートトイレによる排泄物の量・回数の自動記録、④スマートフォンを介した獣医師による遠隔診療(オンライン診療)などが挙げられる 31。これらの技術は、ペットの健康状態を可視化し、「治療」から「予防・未病管理」へとヘルスケアのあり方を変革するポテンシャルを秘めている。
法規制(Legal)
政治的要因で述べた動物愛護管理法が最も重要な法的枠組みであるが、その他にも以下の法規制が関連する。
- 獣医師法: 遠隔診療(オンライン診療)の実施範囲は獣医師法によって規定される。規制緩和の動向は、ペットテックを活用したヘルスケアサービスの事業展開に大きな影響を与える。
- ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律): ペットフードの製造、輸入、販売に関する基準を定めており、安全な製品の供給を担保している。
- 個人情報保護法: 顧客情報やペットの医療データといった機微な情報を取り扱うため、法律に準拠した厳格なデータ管理体制の構築が不可欠である。
環境(Environment)
サステナビリティ(持続可能性)への社会的な要請は、ペット業界にも及んでいる。
- 持続可能な原材料調達: ペットフードの主原料である肉や魚について、環境負荷の少ない調達方法(昆虫タンパクなどの代替タンパク質の利用、持続可能な漁業で獲られた水産資源の利用など)への関心が高まっている。
- 廃棄物問題: ペットトイレシートやおもちゃ、フードの包装材など、ペット関連商品は多くの廃棄物を生み出す。環境配慮型の素材を使用した製品や、リサイクル可能なパッケージの採用が、企業の社会的責任として求められるようになっている。
これらのPESTLE要因は相互に関連し合い、複合的に業界の未来を形作っていく。企業はこれらのマクロな変化を常に監視し、変化に柔軟に対応できる事業戦略を構築する必要がある。
第4章:業界構造と競争環境の分析(Five Forces Analysis)
ペットショップ業界、特にリアル店舗を中核とする事業者は、複雑で多角的な競争環境に置かれている。本章では、マイケル・ポーターのFive Forces(5つの競争要因)フレームワークを用いて業界の収益構造と競争の力学を分析し、その戦略的意味合いを明らかにする。
供給者の交渉力
供給者の交渉力は、仕入れる対象によって異なり、総じて「中〜高」レベルにある。
- ブリーダー: 動物愛護管理法の規制強化により、コンプライアンスを遵守し、健康で血統の優れた生体を安定的に供給できる「優良ブリーダー」の価値は相対的に高まっている。ペットショップ側が倫理的な仕入れルートを確保しようとすればするほど、これらの優良ブリーダーに対する交渉力は弱まり、仕入れ価格は上昇する傾向にある。
- フード・用品メーカー: Mars(マース)、Nestlé(ネスレ)、ユニ・チャーム、ロイヤルカナンといったグローバルな大手メーカーは、強力なブランド力、研究開発力、そしてマーケティング力を背景に、小売業者に対して強い交渉力を持つ。特に、動物病院ルートで扱われる療法食や、特定の犬種・猫種に特化したプレミアムフードなど、専門性が高く代替が困難な製品においては、メーカー側の価格決定権が強い。
買い手の交渉力
買い手、すなわち飼い主(消費者)の交渉力は「高」レベルにある。
- 情報の透明性と価格比較: スマートフォンの普及により、消費者はECサイト、価格比較サイト、SNSのレビューなどを通じて、商品の価格や性能、評判を瞬時に比較できるようになった。これにより、リアル店舗は常にオンラインの価格と比較され、価格競争圧力に晒されている。
- 低いスイッチングコスト: 一般的なペットフードや猫砂、トイレシートといった消耗品に関しては、ブランド・ロイヤルティが確立されていない限り、消費者はより安価で便利なチャネル(ECやディスカウントストア)へ容易に乗り換えることができる。スイッチングコスト(乗り換え障壁)は極めて低い。
- 専門性によるスイッチングコストの創出: 一方で、ペットショップ側が専門的な知識やサービスを提供することで、スイッチングコストを意図的に高めることも可能である。例えば、特定のトリマーの技術を信頼している顧客や、併設された動物病院の獣医師との間に信頼関係が構築されている場合、顧客はその店舗を継続的に利用するインセンティブを持つ。価格以外の付加価値こそが、買い手の交渉力を相対的に弱める鍵となる。
新規参入の脅威
新規参入の脅威は、参入者のタイプによって異なるが、全体として「高」レベルにある。
- EC専業・D2Cブランド: 物理的な店舗を持たないEC専業事業者やD2Cブランドは、比較的少ない初期投資で市場に参入できる。特に、フレッシュフードやオーガニックおやつといった特定のニッチ市場に特化し、SNSマーケティングを駆使して熱心なファンを獲得する戦略は、既存の大手小売業者にとって大きな脅威となっている 29。
- 異業種からの参入: 家電メーカー(シャープ、パナソニックなど)、IT企業、製薬会社などが、それぞれの技術力や研究開発力を武器に「ペットテック」市場へ続々と参入している 15。これらのプレイヤーは、従来の業界の常識にとらわれない革新的な製品・サービス(例:AI搭載の見守りカメラ、スマートトイレ)で市場のゲームチェンジを狙っており、既存事業者にとって予測困難な競争相手となる。
- 規制強化の影響: 生体販売に関する規制強化は、大規模な管理施設や専門人材を必要とするため、従来のペットショップモデルでの新規参入障壁を高める効果がある。しかし同時に、保護犬・保護猫の譲渡を専門とするNPOや社会的企業など、新たな倫理的価値観に基づいたビジネスモデルの参入を促進する側面も持つ。
代替品の脅威
代替品の脅威は極めて「高」い。
- リアル店舗にとってのECプラットフォーム: Amazonや楽天に代表される大手ECプラットフォームは、リアル店舗にとって最大の代替品である。品揃えの豊富さ、価格の安さ、そして自宅まで配送される利便性において、物理的な制約を持つリアル店舗を圧倒する 11。
- 生体販売にとっての代替手段: ペットを迎え入れる手段として、ペットショップでの購入以外の選択肢が社会的に広く認知されつつある。具体的には、①動物愛護団体や自治体が主催する「保護犬・保護猫の譲渡会」、②優良なブリーダーから直接購入する、③それらを仲介するオンラインのマッチングサイト、などが挙げられる 27。これらは、特に倫理的な消費を重視する層から強く支持されており、従来の生体販売ビジネスの根幹を揺るがす代替手段となっている。
業界内の競争
業界内の既存プレイヤー間の競争は「激しい」。
- 大手チェーン間の競争: イオンペット、コジマ、AHB、ひごペットフレンドリーといった大手チェーンは、ショッピングモールなどの好立地への出店、プライベートブランド(PB)商品の開発、サービスの多様化(動物病院、トリミング、ホテル併設)などを巡り、激しいシェア争いを繰り広げている 35。
- GMS・ホームセンターとの競争: カインズ、コーナン、DCMホールディングスといったGMSやホームセンターのペット部門は、本体の持つ圧倒的な集客力と、低価格なPB商品を武器に大きな市場シェアを占めている。特にカインズは、先進的な商品開発や保護犬譲渡活動への注力により、単なる安売りではないブランドイメージを確立している 28。
- 地域密着型の個人経営店: 専門的な知識や長年の顧客との深い信頼関係を強みとするが、資本力や品揃えで大手には及ばず、ECの普及も相まって厳しい経営環境に置かれている。
この分析から浮かび上がるのは、ペットショップ業界の競争が、もはや同業者間だけの「水平的な競争」ではないという事実である。ECプラットフォーマー、D2Cブランド、ペットテック企業といった「異業種・異モデル」のプレイヤーが、それぞれ異なる強み(価格、利便性、技術、専門性)を武器に、顧客の可処分所得と時間を奪い合っている。これは「競争軸の非対称化」と呼ぶべき状況であり、従来の競合分析の枠組みを超えた、立体的な戦略思考が求められることを示唆している。自社のバリューチェーンのどの部分が、どの異業種プレイヤーによって代替されうるのかを冷静に分析し、自社にしか提供できない独自の価値(リアルな場での専門的コンサルティングや医療との連携など)を徹底的に磨き上げることが、生き残りのための唯一の道である。
第5章:サプライチェーンとバリューチェーン分析
ペットショップ業界が直面する課題と機会を深く理解するためには、その事業活動をサプライチェーン(商品・サービスが顧客に届くまでの流れ)とバリューチェーン(価値がどのプロセスで生み出されるか)の観点から分析する必要がある。特に、生体販売の倫理的課題や、EC化による価値創造プロセスの変化が重要な焦点となる。
サプライチェーン分析
生体販売のサプライチェーンと倫理的課題
ペットショップで販売される子犬・子猫のサプライチェーンは、その構造自体が多くの倫理的課題を内包している。
- 主流となる流通過程: 最も一般的なルートは、「ブリーダー(繁殖業者) → ペットオークション(競り市) → 卸売業者 → ペットショップ」という多段階の構造である 34。この複雑な流通過程において、生後間もない子犬・子猫は、親兄弟から引き離された後、見知らぬ環境での長距離輸送を何度も経験することになる。これは動物に多大なストレスを与え、免疫力を低下させ、感染症のリスクを高める要因となる。一部の調査では、この流通過程で毎年約2万頭もの犬猫が死亡しているとの指摘もある 34。
- ペットオークションの問題点: オークションは、効率的に多数の生体を取引できる反面、多くの問題を抱えている。出品者の匿名性が高く、飼育環境が劣悪な悪質ブリーダー(パピーミル)が利益追求のために大量生産した生体を供給する温床となりやすい 39。また、生後日数の改ざんといった不正行為が疑われるケースも報告されており 18、サプライチェーン全体の透明性を著しく欠いている。
- 倫理的イメージへの影響: この不透明で動物福祉への配慮が欠如したサプライチェーンの存在が、ペットショップ業界全体の社会的なイメージを損ない、消費者からの批判を招く最大の要因となっている。
フード・用品のサプライチェーン
フード・用品のサプライチェーンは、EC化の進展によって劇的に変化している。
- 「中抜き」の進行: 従来の「メーカー → 卸売業者 → 小売業者 → 消費者」というサプライチェーンは、ECの普及により大きく揺らいでいる。メーカーが自社のECサイトで直接消費者に販売するD2C(Direct to Consumer)モデルや、Amazonのような巨大プラットフォーマーがメーカーから直接商品を仕入れるケースが増加した 29。これにより、卸売業者や小売業者の介在価値が低下する「中抜き」が進行し、従来の小売業者の利益率を圧迫している。
在庫管理の難しさ
ペットショップの在庫管理は、他の小売業にはない特有の難しさを伴う。
- 生体という「命ある在庫」: 生体は単なる商品ではなく「命」である。日々の成長によって商品価値が変動し(大きくなると売れにくくなる)、病気や死亡のリスクも常に存在する。また、給餌、清掃、健康管理といった日々の世話に多大な人件費がかかる。売れ残った場合の経済的損失はもとより、その後の処遇(引き取り屋への売却など)は深刻な倫理的問題に直結する 19。
- フードの品質管理: ペットフード、特に添加物を使用しないプレミアムフードや、水分含有量の多いウェットフード、冷凍・冷蔵が必要なフレッシュフードは、賞味期限管理や厳格な温度管理が不可欠である。不適切な管理は品質劣化を招き、販売機会の損失やブランドイメージの毀損に繋がる 41。
バリューチェーン分析
顧客が求める価値が変化する中で、ペットショップが価値を生み出すべきプロセスもシフトしている。
価値の源泉のシフト
- 過去の価値源泉: かつてのバリューチェーンでは、「仕入活動(いかに安く生体や商品を仕入れるか)」と「販売活動(いかに高く、多く売るか)」が価値と利益の源泉であった。
- 現在の価値源泉: 「ペットの家族化」が進んだ現在、顧客は単に商品を購入するだけでなく、購入前後のプロセス全体に価値を見出すようになっている。
- 購買前: どのフードが自分のペットに最適か、どうしつけをすればよいかといった悩みに対し、専門知識を持つスタッフが提供する「専門的アドバイス」や「カウンセリング」。
- 購買後: 購入後の健康相談やしつけのフォローアップといった「アフターサービス」。
- 体験価値: しつけ教室やドッグラン、飼い主同士の交流イベントといった、ペットとの生活を豊かにする「体験(コト消費)」 42。
リアル店舗が生み出すべき付加価値
ECが価格と利便性で優位に立つ中、リアル店舗の存在価値は、ECにはない独自の付加価値をどのプロセスで生み出せるかにかかっている。
- マーケティング・販売プロセス: 知識豊富なスタッフが、顧客一人ひとりの悩みやペットの個性に寄り添い、最適な商品やサービスを提案するコンサルティングセールス。これは、アルゴリズムによるレコメンデーションとは質の異なる、信頼関係に基づいた価値提供である。
- サービス提供プロセス: 獣医師による診察、トリマーによる専門的な施術、ドッグトレーナーによる実践的なしつけ教室など、専門スキルを持つ人材が提供する人的サービス。これらはECでは代替不可能な、リアル店舗の核となる付加価値である。
- アフターサービスプロセス: 購入後も気軽に相談できる窓口としての役割。ペットの成長や加齢に伴う新たな悩みに継続的に寄り添うことで、顧客との長期的な関係を構築し、生涯価値(LTV)を高める。
- コミュニティ形成: 店舗を、同じ関心や悩みを持つ飼い主同士が繋がり、情報を交換し、交流を深めるコミュニティのハブとして機能させる。これにより、店舗は単なる「モノを売る場所」から、顧客のペットライフに欠かせない「集う場所」へと進化する。
結論として、ペットショップは自社のバリューチェーンを見直し、「仕入・販売」という上流・中流プロセスへの過度な依存から脱却し、「カウンセリング」「専門サービスの提供」「アフターケア」「コミュニティ形成」といった下流の顧客接点プロセスでいかに独自の付加価値を創出できるか、という点に経営資源を集中させるべきである。
第6章:顧客需要の特性分析
持続可能な成長戦略を策定するためには、その戦略の受け手である顧客、すなわち飼い主を深く理解することが不可欠である。飼い主は決して一枚岩ではなく、多様なセグメントに分類され、それぞれのライフスタイルやペットとの関係性に応じて異なるニーズや課題を抱えている。本章では、飼い主のセグメンテーション、ペットのライフステージに応じた需要の変化、そして「コト消費」への関心について分析する。
飼い主のセグメンテーションとKBF(購買決定要因)
飼い主は、その経験値や家族構成、ライフスタイルによっていくつかのセグメントに分類できる。それぞれのセグメントが持つ特有のニーズとKBF(Key Buying Factor:購買決定要因)を理解することが、効果的なマーケティングとサービス提供の第一歩となる。
- 新規飼育者:
- ニーズ・課題: 初めてペットを飼うため、何から準備すればよいか、どの商品を選べばよいかといった基本的な情報が不足している。「しつけはうまくできるか」「病気になったらどうしよう」といった不安も大きい。
- KBF: 専門知識を持つスタッフからの網羅的で分かりやすいアドバイス。必要なものが一通り揃う「スターターキット」のような安心感のある品揃え。購入後の相談窓口など、手厚いアフターフォロー。衝動買いを防ぎ、終生飼育の責任を啓蒙するような倫理的な姿勢も、信頼を得る上で重要となる 43。
- 多頭飼育者:
- ニーズ・課題: 複数のペットを飼育しているため、フードやトイレシートなどの消耗品の消費量が非常に多い。そのため、コストパフォーマンスを重視する傾向が強い。一方で、それぞれのペットの年齢、犬種・猫種、健康状態に合わせた個別のケアも必要であり、多様なニーズを両立させたいと考えている。
- KBF: 大容量パックやPB商品などの価格競争力。幅広い商品ラインナップ。それぞれのペットに合った商品を提案してくれる専門性。
- シニア飼育者:
- ニーズ・課題: 自身の加齢に伴う体力的な問題(重いフードの持ち運び、毎日の散歩、動物病院への通院など)や、将来自身が病気や介護状態になった場合にペットの世話をどうするかという不安を抱えている。「老老介護」問題に直面しているケースも少なくない 24。
- KBF: 軽量なフード、宅配サービス、ペットシッターや散歩代行サービス、動物病院の送迎や往診サービス、ペット信託や老犬・老猫ホームに関する情報提供など、自身の負担を軽減し、安心してペットとの生活を続けられるサポート体制。
- 特定犬種・猫種の愛好家:
- ニーズ・課題: 特定の犬種・猫種に対する深い知識と愛情を持ち、その種に特有の遺伝的疾患や最適なケア方法(食事、トリミングなど)に関する専門的な情報を求めている。
- KBF: 犬種・猫種別の専門フードやケア用品の品揃え。その犬種・猫種の特性を熟知したスタッフやトリマーの存在。同じ犬種・猫種を飼うオーナー同士が交流できるイベントやコミュニティ。
ペットのライフステージに応じた需要の変化
ペットの一生は、人間の子供と同様に、成長段階に応じて必要なケアや商品、サービスが変化する。顧客のLTVを最大化するためには、このライフステージの変化に寄り添い、適切なタイミングで適切なソリューションを提供することが極めて重要である。
- 幼齢期(パピー・キトン期):
- 主要な関心事: 基本的なしつけ(トイレ、無駄吠え)、社会化(他の犬や人との交流)、ワクチン接種、避妊・去勢手術。
- 需要の高い商品・サービス: 成長期に必要な栄養素を配合したパピー/キトンフード、おもちゃ、ケージ・サークル、トイレ用品、しつけ教室、パピーパーティ。
- 成齢期(アダルト期):
- 主要な関心事: 健康維持、適正体重の管理、デンタルケア、ストレス解消。
- 需要の高い商品・サービス: 年齢や活動量に合わせた成犬/成猫用フード、デンタルケア用品(歯ブラシ、ガム)、運動欲求を満たすおもちゃ、定期的な健康診断、トリミング。
- シニア期(高齢期):
- 主要な関心事: 関節、腎臓、心臓、認知機能など、加齢に伴う身体機能の低下や特有の疾患への対応。QOL(生活の質)の維持。
- 需要の高い商品・サービス: 消化しやすく、特定の健康課題に配慮したシニアフードや療法食、関節や認知機能をサポートするサプリメント、介護用品(ペット用おむつ、床ずれ防止マット、歩行補助ハーネス)、リハビリテーション、訪問介護、終末期医療(ターミナルケア) 44。
店舗選択(リアル vs EC)のドライバー
飼い主が商品やサービスを購入する際に、リアル店舗とECのどちらを選択するかは、求める価値によって決まる。
- ECを選択する理由: 価格の安さ、品揃えの豊富さ、24時間いつでも注文できる利便性、重い商品を自宅まで届けてくれる物理的負担の軽減、定期購入による買い忘れ防止 11。
- リアル店舗を選択する理由: 専門知識を持つスタッフに直接相談したい、商品の実物を見て・触って確かめたい、トリミングサロンや動物病院が併設されている利便性、ペットを同伴して買い物を楽しみたい、イベントに参加したい 9。
「コト消費」への需要
「ペットの家族化」は、飼い主の消費行動を「モノ消費」から「コト消費」へとシフトさせている。飼い主は、単に商品を購入するだけでなく、ペットとの「絆を深める体験」や「かけがえのない思い出作り」に価値を見出し、対価を支払うことを厭わない 42。
- 参加動機: ペットとの生活をより豊かにしたい、他の飼い主と交流して情報交換したい、専門家から直接指導を受けたい、SNSで共有できるような特別な体験をしたい、といった動機が挙げられる。
- 具体的な「コト消費」の例: しつけ教室、ドッグラン、ペット同伴可能なカフェ、プロカメラマンによる写真撮影会、ペットの誕生日を祝うイベント、季節のイベント(クリスマス、ハロウィン)、ペットの健康に関するセミナーなど。
これらの「コト消費」は、それ自体が収益源となるだけでなく、店舗への来店動機を創出し、関連商品(モノ)の販売(クロスセル)に繋げ、顧客ロイヤルティを醸成する上で極めて重要な戦略的要素となる。
第7章:業界の内部環境分析
外部環境の変化に対応し、競争優位を築くためには、自社が持つ経営資源(リソース)や能力(ケイパビリティ)を客観的に評価する必要がある。本章では、VRIOフレームワークを用いて持続的な競争優位の源泉を特定するとともに、業界が抱える人材動向と労働生産性の課題を分析する。
VRIO分析:持続的な競争優位の源泉
VRIOフレームワークは、経営資源やケイパビリティが「経済的価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Organization)」の4つの観点から持続的な競争優位に繋がるかを評価する手法である。
- 経済的価値(Valuable): 顧客ニーズの変化や競争環境に対応し、機会を捉え、脅威を無力化できるか?
- 価値が高い資源/能力:
- 専門人材(獣医師、動物看護師、トリマー、訓練士): 高度化・多様化する顧客ニーズ(健康、ウェルネス、しつけ)に応える上で、その価値は極めて高い。
- 好立地な店舗網: ECの脅威に対し、リアルな顧客接点、サービス提供拠点、コミュニティハブとして依然として高い価値を持つ。
- 優良ブリーダーとの強固なネットワーク: 動物愛護への要請が高まる中、倫理的で透明性の高いサプライチェーンを構築する上で不可欠であり、価値は増している。
- 動物病院との連携: 予防から治療、介護まで一貫したヘルスケアサービスを提供する上で、その連携は強力な価値を生む。
- 価値が高い資源/能力:
- 希少性(Rare): その資源/能力を保有している競合は少ないか?
- 希少性が高い資源/能力:
- 質の高い専門人材: 獣医師や経験豊富な人気トリマーは、業界全体で不足しており、採用競争も激しいため希少性が高い 45。
- 動物病院を併設した大規模複合店舗: 多額の設備投資と許認可が必要であり、多くの競合が容易に保有できるものではないため希少である。
- 希少性が高い資源/能力:
- 模倣困難性(Inimitable): 競合がその資源/能力を模倣するには、多大なコストや時間がかかるか?
- 模倣が困難な資源/能力:
- 長年にわたり築き上げた顧客との信頼関係: スタッフと顧客、あるいは顧客同士の間に生まれる人間的な繋がりや信頼は、一朝一夕には構築できず、模倣が最も困難な無形資産である。
- ブランドイメージと企業文化: 動物愛護や地域社会への貢献といった活動を通じて醸成されるポジティブなブランドイメージや、従業員の間に浸透した企業文化は、競合が表面的な模倣を試みても本質を再現することは難しい。
- 模倣が困難な資源/能力:
- 組織(Organized): 企業がその資源/能力を最大限に活用するための組織的な方針や仕組みが整っているか?
- 重要な組織能力:
- 専門人材がその能力を最大限に発揮し、やりがいを感じて働き続けられるような人事制度、評価制度、研修体制が整備されているか。
- 店舗網(オフライン)とECサイト(オンライン)の顧客情報や在庫情報を一元管理し、顧客にシームレスな体験を提供するオムニチャネル体制が構築されているか。
- 収集したデータを分析し、戦略的な意思決定に活かすデータ駆動型の組織文化があるか。
- 重要な組織能力:
VRIO分析からの結論: ペットショップ業界における持続的な競争優位の源泉は、かつての「好立地な店舗網」や「商品仕入力」といった有形資産から、「専門人材」「顧客との信頼関係」「ブランドイメージ」といった無形資産、そしてそれらを最大限に活用するための「組織能力」へと明確にシフトしている。将来の競争は、これらの無形資産と組織能力をいかに構築・強化できるかにかかっている。
人材動向
事業の価値源泉が「ヒト」へとシフトする中で、人材の確保・育成・定着は最重要の経営課題となっている。
- 求められる人材像の変化: 従来の「販売員」のように商品を説明するだけの役割から、ペットの一生に寄り添い、健康、栄養、行動に関する専門的な知見に基づいて顧客の悩みを解決する「ライフパートナー」や「専門アドバイザー」へと、求められる役割が大きく変化している。高いコミュニケーション能力と専門知識の両方が不可欠となる。
- 専門人材の需給と採用難易度:
- 獣医師・動物看護師: ペット医療の高度化に伴い需要は増加の一途を辿るが、供給は限られている。特に動物病院との間で優秀な人材の獲得競争が激化している。動物看護師の有効求人倍率は1.77倍 45 など、需要が供給を上回る売り手市場が続いている。
- トリマー、ドッグトレーナー: 専門スキルを持つ人材への需要は高いが、労働環境や待遇面での課題から離職率も低くない。トリマーの平均年収は約340万円〜380万円程度であり 48、キャリアパスの提示や待遇改善が人材定着の鍵となる。
労働生産性
ペットショップの運営は、多くのプロセスが人手に依存しており、労働集約性が高いという特徴を持つ。
- 労働集約的な業務: 生体の日常的な世話(給餌、清掃、健康チェック)、膨大なSKU(在庫管理単位)の商品管理、顧客一人ひとりへの丁寧な接客、トリミングやしつけ教室といったサービスの提供など、多くの業務が自動化しにくく、人手を必要とする。
- デジタル化による生産性向上のポテンシャル: 労働集約性が高いからこそ、デジタル技術の活用による生産性向上の余地は大きい。
- 予約・顧客管理システム: トリミングやペットホテルの予約受付をオンライン化・自動化することで、電話応対の時間を削減できる 51。
- 電子カルテ: 顧客情報やペットの施術履歴、健康情報をデジタルで一元管理することで、スタッフ間の情報共有をスムーズにし、接客品質を向上させることができる 52。
- これらのデジタルツールを導入することで、スタッフは単純な事務作業から解放され、専門知識を活かしたカウンセリングや顧客との関係構築といった、より付加価値の高い業務に集中することが可能になる。
第8章:AIの影響とペットテックの進化による変革
AI(人工知能)とペットテックの進化は、単なる業務効率化のツールに留まらず、ペットショップ業界のビジネスモデル、顧客体験(CX)、そして競争優位の源泉そのものを根底から覆すほどのインパクトを持つ。テクノロジーを戦略的に活用できるか否かが、未来の勝者と敗者を分ける決定的な要因となる。本章では、AIがもたらす変革を多角的に分析し、その事業戦略へのインパクトを深く掘り下げる。
これまでのペット業界におけるテクノロジー活用は、自動給餌器や見守りカメラといった「利便性の向上」や、購買履歴に基づく「レコメンデーション」が中心であった。これらは既存のビジネスを効率化するものであったが、現在進行している変革は、その次元が異なる。ウェアラブルデバイスやスマートトイレといったIoT機器がペット個体の生体データ(活動量、心拍数、睡眠パターン、排泄データなど)を常時収集し、その膨大なデータをAIが解析することで、「病気の予兆検知」や「個体に最適化されたケアプランの提案」といった、これまで不可能だった「予防医療」や「超パーソナライズ」という新たな価値を創造している。これは、ペットショップが従来の「小売業」の枠を超え、データとテクノロジーを駆使する「ヘルスケア・サービス業」へと進化する可能性を示唆している。
顧客体験(CX)の高度化
AIは、画一的なサービス提供から、顧客一人ひとりのペットに寄り添う「N=1」の体験提供を可能にする。
- パーソナライズド・レコメンデーションの進化: 従来の購買履歴に基づくレコメンデーションから、AIがペットの品種、年齢、体重、アレルギー情報、さらにはウェアラブルデバイスから得られる活動量データまでを統合的に分析し、「最近運動量が落ちているシニア期の柴犬には、この関節ケア成分を配合したフードが最適です」といった、科学的根拠に基づいた極めて精度の高い提案を行うことが可能になる 54。これにより、顧客は情報過多の中から最適な商品を迷うことなく選択でき、店舗への信頼感を深める。
- 24時間対応のAIコンシェルジュ(チャットボット): 飼育に関する初歩的な質問から、深夜の急な体調変化に関する不安まで、AIチャットボットが24時間365日、即座に対応する 56。例えば、「子犬が夜鳴きするのですが、どうすればいいですか?」といった相談に対し、AIは一般的な対処法を提示しつつ、必要であれば翌日の専門家(ドッグトレーナー)によるカウンセリング予約や、緊急性が高いと判断した場合は提携する夜間動物病院への連絡を促す。これにより、顧客の不安を即時に解消し、スタッフの業務負荷を軽減する 58。
- 行動・感情分析によるコミュニケーション支援: 店舗や自宅に設置されたAIカメラがペットの映像を解析し、留守番中の行動パターンから分離不安の兆候を検知したり、鳴き声の周波数やボディランゲージからストレスや喜びといった感情を推定したりする 60。その分析結果を飼い主にフィードバックすることで、「あなたの愛犬は、お留守番中にこのおもちゃで遊んでいる時に最もリラックスしています」といったインサイトを提供し、飼い主がペットをより深く理解し、絆を深める手助けとなる。
店舗運営・マーケティングの効率化
AIは、経験や勘に頼りがちだった店舗運営やマーケティングを、データに基づいた科学的なオペレーションへと変革する。
- AIによる需要予測と在庫最適化: AIが過去の販売データ、天候、季節性、近隣のイベント情報、SNSのトレンドなどを多角的に分析し、商品カテゴリごと、あるいは個々の商品(SKU)の需要を高精度で予測する。これにより、フードの欠品による販売機会の損失や、特にリスクの高い生体の過剰在庫を最小限に抑え、キャッシュフローを改善する。
- LTV(生涯価値)向上施策の自動化と最適化: AIを搭載したCRM(顧客関係管理)システムが、全顧客の購買履歴、来店頻度、ペット情報などを分析し、RFM分析(Recency, Frequency, Monetary)などの手法を用いて自動的に顧客をセグメント化する(例:「優良ロイヤル顧客」「育成候補顧客」「離反予備軍」など) 62。さらにAIは、各セグメント、ひいては顧客一人ひとりに対して、「次に購入する可能性が高い商品」や「アプローチに最適なタイミング」、「最も効果的なチャネル(メール、LINE、アプリ通知)」を予測する 63。この予測に基づき、パーソナライズされたクーポンやペットのライフステージに合わせた情報(例:7歳の誕生日にシニアフードの案内を送る)を自動で配信し、顧客エンゲージメントとLTVを最大化する 65。
サービスとの融合(ペットテック)
AIとペットテックの真価は、物販や店舗運営の効率化に留まらず、全く新しい高付加価値サービスを創出する点にある。
- データ連携による予防医療サービスの実現: 顧客にウェアラブルデバイス(例:PetVoice)やスマートトイレ(例:Toletta)の利用を促し、収集される日々の健康データ(活動量、睡眠時間、飲水量、体重、尿量・回数など)を自社のプラットフォームに集約する 32。AIがこれらの時系列データを24時間体制で監視し、平常時のパターンから逸脱する「異常の予兆」を検知した場合(例:「過去24時間の飲水量が平常時の150%を超えています。腎臓疾患の初期症状の可能性があります」)、即座に飼い主のスマートフォンアプリにアラートを送信する。同時に、自社が運営または提携する動物病院へのオンライン相談や来院予約をシームレスに促す。これは、病気になってから治療する「対症療法」から、病気になる前に発見・対処する「予防医療」へのパラダイムシフトであり、極めて高い顧客価値と新たなサブスクリプション型の収益源を生み出す。
- AIによるサービスのパーソナライズ: AIがペットの行動データを分析し、個々の性格や課題(例:吠え癖、引っ張り癖)に合わせた最適なトレーニングプランを動画コンテンツと共に提供する。また、過去のトリミング写真を大量に学習した画像生成AIが、犬種、毛質、顔立ちに合わせて最も似合うカットスタイルを複数提案し、飼い主が事前にシミュレーションできるといったサービスの開発も可能になる。
倫理的課題への対応(アニマルウェルフェアの向上)
AIは、業界が抱える最も深刻な課題であるアニマルウェルフェアの向上にも貢献するポテンシャルを秘めている。
- AIによる生体管理の高度化: 生体を仕入れているブリーダーの施設や、店舗のバックヤードにAIカメラと環境センサーを設置する。AIは24時間、個々の動物の行動を監視し、咳、下痢、跛行、特定の場所を舐め続けるといった異常行動や、ケージ内の温度・湿度の異常を自動で検知し、即座に管理者へ通知する 68。これにより、人間の目視だけでは見逃しがちな健康問題の兆候を早期に発見し、迅速な獣医療に繋げることができる。これは、従来の管理体制と比較して、アニマルウェルフェアの水準を客観的かつ飛躍的に向上させる手段となりうる。
- AI活用における倫理的配慮: AIは強力なツールであるが、万能ではない。AIはデータに基づき最適化を行うが、「生体販売そのものが倫理的に許容されるべきか」といった根本的な価値判断はできない。AIによるアニマルウェルフェアの向上を、生体販売ビジネスを継続するための「免罪符」や「言い訳」として利用するのではなく、企業として動物の福祉にどう向き合うかという明確な倫理方針と哲学を持つことが、社会からの信頼を得る上で不可欠である。
第9章:主要トレンドと未来予測
これまでの分析を踏まえ、今後5年から10年の間にペットショップ業界を形成するであろう主要なトレンドと、その帰結としての未来像を予測する。これらのトレンドは、業界の常識を覆し、新たなビジネスチャンスを生み出す原動力となる。
ペットのヒューマナイゼーションの徹底
「ペットの家族化」は今後さらに深化・徹底され、ペットに提供されるケアの質は人間と同等、あるいはそれ以上になることが標準となる。
- 身体的ケアの高度化: ペットの高齢化が進行するにつれて、需要は従来の治療中心の医療から、QOL(生活の質)の維持・向上へとシフトする。具体的には、関節炎や椎間板ヘルニアに対するリハビリテーションや理学療法、アレルギーや皮膚疾患に対する鍼治療や漢方といった代替医療、さらには再生医療や遺伝子治療といった最先端の高度医療へのアクセスが、一部の富裕層だけでなく一般の飼い主にも広がる。
- 精神的ウェルネス市場の拡大: 身体的な健康だけでなく、精神的な健康(ウェルネス)への関心が高まる。分離不安、ストレス、問題行動に対して、専門の動物行動学カウンセラーによる行動療法やメンタルヘルスケアサービスが新たな市場として本格的に立ち上がる。ペットのストレスを軽減するための環境音楽、アロマセラピー、マッサージといったサービスも一般化するだろう。
生体販売ビジネスの二極化
動物愛護に関する社会的・法的な圧力の高まりを受け、従来の画一的な生体販売モデルは成り立たなくなり、ビジネスモデルは大きく二極化する。
- ハイエンドな「ブティック型」専門店: アニマルウェルフェアの基準を極めて高く設定し、サプライチェーンの完全な透明性を確保した専門店。遺伝子検査によって遺伝病のリスクが排除され、十分な社会化期を経た健康な個体のみを扱う。購入希望者には厳しい審査と飼育に関する講習を義務付け、安易な購入を防ぐ。高価格帯ではあるが、最高の安心と倫理性を求める顧客層から強く支持されるモデルとなる。
- 「譲渡ハブ」への転換: 多くのペットショップは、リスクと批判の大きい商業的な生体販売から段階的に、あるいは完全に撤退する。その代わりに、地域の動物愛護団体や自治体と連携し、店舗を保護犬・保護猫の「譲渡ハブ(拠点)」として機能させる。譲渡を成立させること自体で収益を上げるのではなく、譲渡に伴う初期の健康診断、ワクチン接種、しつけトレーニング、ペット保険の加入サポート、そしてその後のフードや用品の継続的な購入といった関連サービスをパッケージで提供することで、新たな収益モデルを構築する。
医療とのシームレスな連携
ペットケアにおける医療の重要性が増すにつれ、小売と医療の垣根はますます低くなり、最終的には融合する。
- ワンストップ型複合施設の登場: ペットショップ、トリミングサロン、動物病院、リハビリ施設、シニアケア施設(ペットホテル型介護施設)が一体となった大規模な複合施設が、郊外のロードサイドなどを中心に登場する。これにより、顧客は予防医療(ワクチン、健康診断)から、専門的な治療や手術、そしてシニア期の介護に至るまで、ペットの生涯にわたるあらゆるヘルスケアニーズを一つの場所で完結できるようになる。このワンストップ体制は、顧客を生涯にわたって囲い込む強力なエコシステムとなる。
D2Cとサブスクリプションモデルの一般化
顧客とのダイレクトな関係構築と、継続的な収益モデルがビジネスの主流となる。
- パーソナライズ化の進展: AIによる健康データ分析に基づき、個々のペットの健康状態、アレルギー、嗜好に合わせて栄養素をカスタム配合したパーソナライズド・ペットフードが普及する 29。これらのフードは、ECサイトを通じてサブスクリプションモデルで定期的に配送されるのが標準となる。
- 消耗品の定期配送: フードだけでなく、トイレシート、猫砂、デンタルケア用品といった日常的な消耗品も、買い忘れのない定期配送サービスが一般化する。小売業者は、単発の販売による売上を追うのではなく、いかに多くの顧客にサブスクリプション会員になってもらうかを競うようになる。
コミュニティ・ビジネスとしての店舗
ECが利便性を提供する一方で、リアル店舗の存在価値は「コミュニティ」の創出に集約されていく。
- 「サードプレイス」化: リアル店舗は、単に商品を売買する場所ではなく、飼い主がペットと共に訪れ、専門家と気軽に相談したり、同じ悩みや喜びを持つ他の飼い主と交流したりできる「サードプレイス(自宅、職場に次ぐ第三の居場所)」としての機能を強化する。
- 体験価値の提供: ドッグラン、ペット同伴可能なカフェスペースの併設は標準装備となり、専門家を招いたセミナー、季節のイベント、犬種・猫種別のオフ会などが頻繁に開催される。これらの「体験」が店舗への来店動機となり、顧客のロイヤルティを醸成する最も重要な要素となる。
第10章:主要プレイヤーの戦略分析
ペットショップ業界の競争環境は、多様なビジネスモデルを持つプレイヤーがそれぞれの強みを活かして競い合う、複雑な様相を呈している。本章では、主要なプレイヤーをタイプ別に分類し、その戦略、強み・弱み、そして業界のメガトレンドへの対応状況を比較分析する。
大手ペットショップチェーン
従来の業界を牽引してきたプレイヤー。総合的なサービス提供による顧客の囲い込みを目指す。
- イオンペット株式会社:
- 戦略: 業界最大手の売上高を誇り、イオングループの強力な集客基盤(イオンモールなど)を最大限に活用。「PETEMO」の統一屋号のもと、物販(リテール)、トリミングサロン、ペットホテル、動物病院をワンストップで提供する総合戦略を推進している 35。
- 強み: 全国的な店舗網と高いブランド認知度。グループの購買力を活かしたPB(プライベートブランド)商品開発力。多様なサービスを一つの場所で提供できる利便性。
- 弱み: 大規模組織ゆえの意思決定の遅さ。モール内店舗が中心であるため、独自の店舗フォーマット展開に制約が生じる可能性がある。
- EC/デジタル戦略: グループ全体のデジタル戦略の一環としてECを展開するが、D2CブランドやEC専業プラットフォーマーと比較すると、パーソナライズや顧客体験の面で後れを取る可能性がある。
- 動物愛護への取り組み: 保護猫の譲渡施設を併設した専門店を開設するなど、社会的要請への対応にも着手している 71。ただし、事業の根幹は依然として生体販売にある。
- 株式会社コジマ:
- 戦略: 「限りない安心をお客様へ」という企業理念を掲げ、販売する生体の健康と品質を最優先する戦略で差別化を図る 36。
- 強み: 仕入れ段階から獣医師が関与し、全頭に遺伝子病検査を実施するなど、徹底した健康管理体制。店舗に併設された動物病院との密な連携による、購入後の手厚いアフターフォロー 73。
- 弱み: 高品質を維持するためのコストが価格に転嫁され、価格競争力では劣る可能性がある。店舗網は首都圏に集中している。
- EC/デジタル戦略: 対面販売を原則としており、顧客との深い関係構築を重視。ECは用品販売が中心で、主力事業ではない。
- 動物愛護への取り組み: 生体の健康管理を徹底することでアニマルウェルフェアに応えようとするアプローチ。
GMS/ホームセンター
本体の集客力と価格競争力を武器に、ペット市場で大きな存在感を示す。
- 株式会社カインズ:
- 戦略: ホームセンター事業で培った強力なPB商品開発力をペット分野にも応用し、デザイン性と機能性、価格を両立させたオリジナル商品を展開 37。また、CSR活動を戦略的に活用し、ブランドイメージを向上させている。
- 強み: 全国の店舗網と圧倒的な集客力。SPA(製造小売)モデルによる高い商品開発力と価格競争力。
- 弱み: ペット専門店と比較すると、獣医療などの専門的なサービスの提供範囲は限定的。
- EC/デジタル戦略: オウンドメディア「Wanqol(わんクォール)」を運営し、飼い主向けに有益な情報を発信することで、顧客とのエンゲージメントを深め、店舗やECへの送客を図るコンテンツマーケティングに長けている 28。
- 動物愛護への取り組み: 多くの店舗で保護犬・保護猫の里親譲渡会を定常的に開催しており、企業の社会的責任を果たす姿勢を明確に打ち出している 28。
ECプラットフォーマー/D2C
デジタルを主戦場とし、新たな顧客体験とビジネスモデルで既存市場を侵食する。
- Amazon/楽天:
- 戦略: 「地球上で最も豊富な品揃え」をペット分野でも実現。ロングテール商品を網羅し、価格競争力と高度な物流網を武器に市場シェアを拡大する。
- 強み: 圧倒的な顧客基盤とデータ量。強力な価格競争力と迅速な配送サービス。定期おトク便などのサブスクリプション機能。
- 弱み: 専門的なカウンセリングや、トリミング・医療といったリアルなサービスの提供はできない。商品の品質が玉石混交となるリスク。
- EC/デジタル戦略: ECそのものが事業であり、AIによるレコメンデーションやレビュー機能を駆使して購買を促進する。
- 動物愛護への取り組み: プラットフォームとして、動物愛護団体の支援プログラム(「保護犬・保護猫 支援プログラム」など)を実施しているが、個々の出品者の倫理基準を担保することは困難。
- D2Cブランド(例:株式会社PETOKOTO):
- 戦略: フレッシュペットフードという新たな市場を創造。個々の犬のデータに基づき最適化したフードを、オンラインで直接顧客に届けるD2Cモデルを展開 75。
- 強み: 顧客との直接的な関係構築による高いエンゲージメント。パーソナライズとサブスクリプションによる高いLTV。強力なブランドストーリーと世界観。
- 弱み: ターゲット層が限定される。マスマーケットへのリーチには課題がある。物流コストが収益を圧迫する可能性がある。
- EC/デジタル戦略: SNSやコンテンツマーケティングを駆使してブランドの世界観を伝え、共感した顧客を自社ECサイトに誘導する。
- 動物愛護への取り組み: 創業のきっかけが殺処分問題であり、事業を通じてペットのウェルネスを追求すること自体が、動物愛護への貢献であるという思想を強く打ち出している 75。
以下の表は、各プレイヤーの戦略を比較したものである。
| プレイヤー | 事業モデル | 強み | 弱み | サービスポートフォリオ | EC/デジタル戦略 | 動物愛護への取り組み |
|---|---|---|---|---|---|---|
| イオンペット | 総合サービス提供型 | 全国店舗網、ブランド力、ワンストップ | 組織の規模、独自性の制約 | 物販とサービスが均衡 | グループ戦略の一環 | 保護猫譲渡施設を一部併設 71 |
| コジマ | 品質・健康特化型 | 生体の健康管理、医療連携 | 価格競争力、店舗網の偏り | 生体・物販が中心、医療で補完 | 対面重視、ECは補完的 | 販売する生体の健康を徹底 36 |
| カインズ | PB主導のGMS型 | 集客力、PB商品開発力、価格 | 専門サービスの限定性 | 物販が圧倒的主力 | コンテンツマーケティング強化 74 | 全社的に譲渡会を積極推進 28 |
| Amazon | ECプラットフォーム型 | 顧客基盤、品揃え、物流、価格 | 専門性・サービスの欠如、品質のばらつき | 物販のみ | AIレコメンデーション、レビュー機能 | 支援プログラムの実施 |
| PETOKOTO | D2C/サブスク型 | 顧客との直接関係、ブランドストーリー | ターゲットの限定性、物流コスト | パーソナライズドフードに特化 | SNSと自社ECが中核 | 事業理念そのものが動物福祉 75 |
第11章:戦略的インプリケーションと推奨事項
これまでの包括的な分析を統合し、ペットショップ業界の未来、そして取るべき具体的な戦略について提言する。
今後5~10年で勝者と敗者を分ける決定的要因
ペットショップ業界の未来は、過去の延長線上にはない。構造変化の波に乗り、自らを変革できた企業のみが生き残る。勝者と敗者を分ける決定的な要因は、以下の3点に集約される。
- ビジネスモデルの転換能力: 従来の「生体・モノ販売」への依存から脱却し、顧客の生涯価値(LTV)を最大化する「サービス・サブスクリプション中心」の収益モデルを構築できるか。これは、単なる事業の多角化ではなく、企業の収益構造と価値提供のあり方を根本から再設計する覚悟を意味する。
- 社会的信頼の獲得: 動物愛護という倫理的要請に真摯に向き合い、サプライチェーンの透明性を確保し、保護動物問題の解決に積極的に貢献する姿勢を示せるか。企業の倫理観が消費者に厳しく問われる時代において、社会的信頼はブランド価値と顧客ロイヤルティに直結する最も重要な無形資産となる。
- データとテクノロジーの活用能力: 顧客とペットのデータを収集・分析し、AIとペットテックを活用して、個々のニーズに最適化されたパーソナライズ体験を提供できるか。テクノロジーは、もはや単なる効率化ツールではなく、新たな顧客価値を創造し、競合との差別化を図るための必須条件である。
これらに対応できない企業、すなわち、旧来のビジネスモデルにしがみつき、社会的要請から目を背け、テクノロジー投資を怠る企業は、市場での存在意義を失い、淘汰される運命にある。
捉えるべき機会と備えるべき脅威
- 捉えるべき機会(Opportunity):
- シニアケア市場の開拓: ペットの高齢化は、介護、リハビリ、療法食、終末期ケアといった、高付加価値かつ継続性の高いサービス市場の爆発的な成長を意味する。この未開拓な領域で先行者利益を確立する絶好の機会である。
- 予防医療・ヘルスケアサービスの事業化: ペットテックを活用し、日々の健康データをモニタリングすることで、「治療」から「予防」へと価値提供の軸足を移す。これは、新たなサブスクリプション収益を生み出すと同時に、顧客との関係をより強固にする。
- 社会貢献を軸としたブランド再構築: 生体販売からの段階的撤退と、保護犬猫の譲渡活動への本格的なシフトは、企業のブランドイメージを劇的に向上させる。倫理的な消費を求めるミレニアル世代やZ世代の顧客層から熱烈な支持を獲得する機会となる。
- 備えるべき脅威(Threat):
- EC・D2Cによる顧客基盤の侵食: 価格と利便性に優れるECプラットフォーマーや、特定のニーズを深く満たすD2Cブランドによる、顧客の流出は今後も続く。リアル店舗の存在価値が常に問われ続ける。
- 異業種からのディスラプション(破壊的変革): IT企業や家電メーカーが、優れた技術力とデータ解析能力を武器に、全く新しいヘルスケアサービスやプラットフォームを構築し、既存の業界構造を破壊するリスク。
- 規制強化と事業モデルの陳腐化: 動物愛護に関する法規制は、今後さらに強化される可能性が高い。生体販売に依存する事業モデルは、ある日突然、法的・社会的に成り立たなくなるリスクを常に内包している。
戦略的オプションの提示と評価
以上の分析に基づき、取りうる3つの戦略的オプションと、それらを統合した最終提言を示す。
| Option A: サービス特化型プレミアムモデル | Option B: オムニチャネル・コミュニティモデル | Option C: 社会貢献主導型モデル | |
|---|---|---|---|
| 戦略概要 | 生体販売から段階的に撤退し、店舗を高度医療、専門サービスを提供する「ウェルネスセンター」に転換。 | リアル店舗を「コミュニティハブ」と位置づけ、ECは利便性(サブスク)とデータ収集に特化。O2Oを強化。 | 生体販売から完全撤退。全店舗に保護犬猫の譲渡スペースを併設し、譲渡事業を核に据える。 |
| 期待されるメリット | 高い収益性。顧客のスイッチングコスト増大。明確な専門性によるブランド構築。 | 既存の店舗資産を有効活用。高い顧客ロイヤルティの醸成。物販とサービスのバランス。 | 圧倒的なブランド差別化。高い社会的受容性と信頼。ミッションドリブンな組織文化。 |
| デメリット/リスク | 多額の初期投資(設備、人材)。専門人材の確保・定着の困難さ。ターゲット顧客層が限定される。 | ECプラットフォーマーとの厳しい競争。システム投資の負担。オンラインとオフラインの連携の複雑さ。 | 収益モデルの確立に時間を要する。NPO等との連携が不可欠。オペレーションの複雑化。 |
| 成功のための重要要素(KSF) | トップクラスの専門人材(獣医師等)の確保。最先端医療設備への継続的投資。 | シームレスな顧客体験を実現するIT基盤。魅力的なコミュニティイベントの企画・運営能力。 | 動物愛護団体との強固なパートナーシップ。譲渡プロセスを円滑に進める運営ノウハウ。 |
最終提言:ハイブリッド戦略「ウェルネス・コミュニティ・ハブ」の推進
最も推奨すべき戦略は、上記オプションAとBの長所を融合させ、オプションCの精神を取り入れたハイブリッド戦略である。これは、単一のモデルに特化するリスクを避けつつ、業界の構造変化に最も効果的に対応する道である。
戦略コンセプト:
リアル店舗を、単なる販売の場から、「ペットと飼い主の生涯にわたる健康(ウェルネス)と、飼い主同士の繋がり(コミュニティ)を育む拠点(ハブ)」へと再定義する。
具体的アクションプラン(ロードマップ):
- Phase 1:基盤構築(1~2年目)
- 目標: サービス売上比率を30%に向上。オンライン会員数XX万人達成。
- アクション:
- デジタル基盤の統一: 全店舗にクラウド型の予約システムと電子カルテを導入し、顧客・ペット情報を一元化する。
- ECの再構築: ECサイトをリニューアルし、フードや消耗品のサブスクリプションサービスを開始。利便性を徹底的に追求する。
- 倫理的シフトの開始: 旗艦店数店舗で生体販売スペースを縮小し、保護犬猫の譲渡イベントを定例化。NPOとの連携を開始する。
- 主要KPI: サービス売上比率、EC売上比率、サブスクリプション会員数、譲渡成立件数。
- Phase 2:サービス拡大とデータ活用(3~4年目)
- 目標: LTV(顧客生涯価値)を前年比15%向上。ペットテック関連サービスの収益化。
- アクション:
- ヘルスケアサービスの導入: PB商品としてウェアラブルデバイスを開発・販売。収集した健康データを活用した簡易的なモニタリングサービス(サブスクリプション型)をトライアル開始。
- 専門サービスの拡充: 動物病院併設店舗を計画的に拡大。シニアケアや行動療法など、専門性の高いサービスメニューを開発・導入する。
- コミュニティの活性化: 全店舗で定期的なセミナーやイベントを開催。オンラインコミュニティも立ち上げ、オフラインとの連携を図る。
- 主要KPI: LTV、顧客当たり平均サービス利用数、ペットテック関連売上、イベント参加者数。
- Phase 3:モデルの完成とリーダーシップ確立(5年目以降)
- 目標: サービス売上比率50%達成。業界No.1の顧客満足度と社会的評価の獲得。
- アクション:
- 予防医療の本格展開: AIによるデータ分析に基づく「データ駆動型予防医療」を中核サービスとして確立。
- ブランドの再定義: 生体販売への依存から完全に脱却し、「ペットの生涯にわたるウェルネス・パートナー」としてのブランドを確立。
- エコシステムの構築: ペットテック企業や保険会社、不動産会社(ペット可物件)など、異業種とのアライアンスを強化し、ペットライフ全体をサポートするエコシステムを構築する。
- 主要KPI: サービス売上比率、顧客維持率、NPS(ネット・プロモーター・スコア)、ブランド認知度・好感度。
この戦略を実行することにより、目先の価格競争から脱却し、倫理的な課題を乗り越え、データと専門性を核とした持続可能な成長軌道に乗ることができると確信する。
第12章:付録
参考文献・引用データリスト
本レポートの作成にあたり、以下の公開情報、調査レポート、統計データを参照した。
- 市場調査レポート
- 株式会社矢野経済研究所: 「2024年版ペットビジネスマーケティング総覧」 1
- 株式会社矢野経済研究所: 「ペットビジネスに関する調査を実施(2021年)」 7
- 株式会社矢野経済研究所: 「ペットビジネスに関する調査を実施(2025年)」 2
- 株式会社矢野経済研究所: 「ペットビジネスに関する調査を実施(2024年)」 4
- 株式会社富士経済: 「2025年ペット関連市場マーケティング総覧」 10
- 株式会社富士経済: 「ペット関連商品の国内市場を調査(2021年)」 77
- 株式会社富士経済: 「国内ペット関連総市場を販売チャネル別に調査(2024年)」 16
- 株式会社富士経済: 「ペットフード・用品の国内市場調査(2024年)」 8
- 株式会社富士経済: 「オムニチャネル戦略としての重要性が高まるペットEC市場 2024」 78
- KD Market Insights: 「日本のペットフード市場調査レポート」 79
- IMARC Group: 「日本のペット保険市場レポート」 80
- Fortune Business Insights: 「世界のペット保険市場レポート」 81
- Fortune Business Insights: 「世界のペットフード市場レポート」 82
- Global Market Insights: 「世界のペットテック市場レポート」 83
- xenoBrain: 「ペットテック業界 市場規模推移」 15
- 業界団体・政府統計
- 一般社団法人ペットフード協会: 「令和6年 全国犬猫飼育実態調査」 5
- 一般社団法人ペットフード協会: 「市場規模推移(流通量推移)」 87
- 農林水産省: 「ペットフードの動向」 88
- 環境省: 「全国の犬・猫の引取り数の推移」 19
- 経済産業省: 「ミニ経済分析」 85
- 企業・サービス関連情報
- イオンペット株式会社: 企業情報、ニュースリリース 35
- 株式会社コジマ: 企業情報、採用情報 36
- 株式会社カインズ: 企業情報、ニュースリリース 28
- 株式会社PETOKOTO: 企業情報、プレスリリース 30
- 株式会社RABO: 企業情報 94
- 株式会社TYL: プレスリリース 94
- その他ペットテック関連企業ウェブサイト 29
- 報道・調査記事
- ダイヤモンド・リテイルメディア 11
- 流通ニュース 107
- Impress Netshop 9
- PR TIMES 22
- sippo(朝日新聞社) 24
- その他各種メディア、調査機関の公開情報
引用文献
- 【ペット業界の最新動向】日本のペット市場の現状と今後の展望 | 株式会社QIX – Wantedly, https://www.wantedly.com/companies/company_2995578/post_articles/961283
- 【矢野経済研究所プレスリリース】ペットビジネスに関する調査を実施(2025年) 2024年度のペット … – ドリームニュース, https://www.dreamnews.jp/press/0000327771/
- ペットビジネスに関する調査を実施(2025年) | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所, https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3906
- ペットビジネスに関する調査を実施(2024年) | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所, https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3568
- ペット飼育頭数と平均寿命の最新動向|犬・猫の推移データと長寿化の背景, https://www.wepet.jp/knowledge/8451/
- 【2024年・2025年最新版】日本のペット飼育頭数は犬減少・猫横ばいに!ペット市場規模も解説, https://media.equall.jp/archives/15331
- ポストコロナのペット市場はどうなる? |株式会社ナムコミュニケーション, https://namujapan.com/blog/trendinfo/20211026/
- ペットフード・用品の市場を調査 | プレスリリース | 富士経済グループ, https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24054
- ペットフード、ペットケア用品+生活用品市場は2027年に5.2%増の6660億円に拡大すると予測, https://netshop.impress.co.jp/node/14118
- 私たちの価値観 – アイペット損害保険株式会社 採用情報, https://ipet-ins.recruitment.jp/rc2025_outline
- 富士経済、ペット関連製品の国内EC市場、2027年に2463億円と予想, https://diamond-rm.net/flash_news/321793/
- ペット関連商品の国内EC市場を調査 | プレスリリース | 富士経済グループ, https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24046
- 【ペット市場 2023年度】コロナを経て拡大する国内海外の市場規模内訳や今後の動向をサービス紹介とともに解説。|大久保泰介 – note, https://note.com/taisukeokubo/n/nd9159f37d07e
- ペット市場の最新動向と企業にとってのビジネスチャンス – OVER株式会社, https://overrrr.com/news/250206
- AIが予測するペットテック業界 業界|2030年市場規模推移と主要企業ランキング, https://service.xenobrain.jp/forecastresults/market-size/pettech
- 国内ペット関連総市場を販売チャネル別に調査 | プレスリリース – 富士経済, https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24116
- ペットショップがなくなる日は近い?廃止が進む理由と日本の現状, https://wannya365.jp/article/column/1180
- ペットオークション 禁止の生後8週以下の子犬・子猫の販売疑い 出生日の偽装横行か 環境省の要請受け自治体が調査|TBS NEWS DIG – YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=P2suuzZl_bM
- ペットショップの売れ残りは殺処分される?日本の現状や救う方法を解説 – ピースワンコ・ジャパン, https://wanko.peace-winds.org/journal/26506
- 【2023年最新】まだまだ続くドッグフードの値上げ!裏事情や対策を紹介 – INUNAVI(いぬなび), https://inunavi.plan-b.co.jp/dogfood_price/
- ペットフードにも値上げの波が…多様化する療養食“シンプル・イズ・ベター”な選び方, https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/369655
- ペットの家族化に対する意識調査 72.9%がペットは家族(ヒト)と同等であると回答 約2人に1人がペットの飼育をするにあたり「人と同じように扱う」ことを意識 | 株式会社サンセルモのプレスリリース – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000092150.html
- 【ペットの家族化に関する調査】99.6%がペットを家族と回答! – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000153.000052686.html
- 老齢ペット、余生どう守る 高齢飼い主に「老老介護」の壁 | 「犬や猫ともっと幸せに」をコンセプトにしたWEBメディア「sippo」, https://sippo.asahi.com/article/10560514
- シニア世代のペット事情調査レポート〜飼育傾向やペットが生活へもたらす影響について, https://ostance.com/lab/reports/ykflv8jqx1lf7ip13iue4lcc
- ペットビジネスの闇(実態と現状)について – ペトプロ, https://petopro.net/105/
- 保護犬・保護猫の譲渡活動が拡大中!2025年10月以降 綿半店舗開催の譲渡会スケジュールが決定! – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000365.000047889.html
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- ペットフードD2Cのサービス4選!メリット・市場規模・成功のポイントも紹介! | ShopifyECサイト制作・アプリ・運用・越境EC等の情報をお届け|Shopify experts-Shopi Lab(ショピラボ), https://shopi-lab.com/marketing/25115/
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- 犬オークションの現場 ペット流通のブラックボックス② | 「犬や猫ともっと幸せに」をコンセプトにしたWEBメディア「sippo」, https://sippo.asahi.com/article/10560362
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- 動物看護師の将来性はある?生活できないと言われる理由と対処法 – ペットナースエージェント, https://pet-nurseagent.jp/tips/future-potential/
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- トリマーの給料は平均いくら?年収やボーナスを徹底調査 – アニジョブプラス, https://www.anicomjobsplus.com/archives/column/animalgroomer-salary
- トリマーのお給料は?年収・月収など気になる収入面を解説します! – BrushUP学び, https://www.brush-up.jp/theme/pet/trimmer/sub/salary
- 記録も管理もこれ1つ!ペットカルテアプリでスマート運営 – サロンドワン, https://salon-de-one.com/column/smart-pet-carte-app.html
- ペットショップでの電子ペーパー(電子棚札)によるDX方法7選, https://grt-esl.jp/retail/pet-shop-esl/
- ペットサロン顧客管理・予約管理 BeKARTE, https://www.be-salo.com/bekarte_pet/
- AIを活用して愛猫が喜ぶキャットフードが見つかる 「ごはんマッチング」サービスを開始 |2024年, https://www.unicharm.co.jp/ja/company/news/2024/0731-01.html
- 愛犬の健康と食(ドッグフード)の楽しみを追求する新サービス「愛犬のご飯に関する事は何でも聞ける<Bowls AI>」提供開始。 | 株式会社REVOPETのプレスリリース – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000158636.html
- ペット飼育のお悩み、AIペットシッターの「ぺろ」が解決します!|株式会社アンドエーアイ – note, https://note.com/official_andai/n/n3f8c8aac8eb0
- ペトサポ – ペット購入前に相談できるAIチャット, https://petsupport.studio.site/
- もしぺ, https://www.moshipe.com/
- Vet.AI|ペットのオンライン獣医相談24時間サービス, https://www.vetaiai.com/landing/JP
- AIによる動物とのコミュニケーション:AIが動物の感情や意思を解析できる時代が来る | AIフル装備, https://ai.gridworld.co/aineta/16135
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- 顧客をAIで”えこひいき”する!LTVを最大化するAI搭載CRMと、パーソナライズされたLINE/メルマガ自動配信術 | 株式会社シンエイ, https://shinei-t.co.jp/ec-growth/ai-crm-ltv/
- 【LTVって何?】動物病院経営の新たな視点, https://animal.funaisoken.co.jp/blog/3861/
- LTV分析のメリットとは?分析にあたって重要な算出方法の例も解説 – クロス・マーケティング, https://www.cross-m.co.jp/column/data_marketing/dtm20211008
- LTVを最大化するには?定義や計算方法、最大化方法を詳しく解説 – Mazrica Sales, https://product-senses.mazrica.com/senseslab/marketing/maximize-the-lifetime-value
- AI×IoTで守る、賃貸経営とペットの快適生活【後編】 | 空室対策・空き家活用 +Lifeちえいず, https://plusrooms.net/34607/
- ペットテック最前線:ウェアラブルデバイスで健康管理が変わる, https://petkenko-do.com/blogs/news/%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A-%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%A7%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%81%8C%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B
- AIで牛の気持ちがわかる?! | 研究ストーリー – 東京工業大学, https://www.titech.ac.jp/public-relations/research/stories/ai-and-cattle
- 日本初!繁殖豚の管理を高精度で行うAI技術開発、アニマルウェルフェアにも対応 – AIsmiley, https://aismiley.co.jp/ai_news/ecopork-ai-freestall/
- 最先端エッジAI技術を活用した牛の行動観察システムを共同開発 – 東京工業大学, https://www.titech.ac.jp/news/2019/043843
- ペット関連商品業界首位のイオンペットがめざす、さらなる成長の一手とは?, https://diamond-rm.net/management/495952/
- 企業情報|ペットショップのコジマ, https://pets-kojima.com/company/
- (株)コジマの2026年度会社概要 | マイナビ2027, https://job.mynavi.jp/27/pc/search/corp202956/outline.html
- カインズのオウンドメディア「WanQol(ワンクォール)」が「コンテンツマーケティング・グランプリ2024」専門コンテンツ部門グランプリを受賞 | ホームセンターのCAINZ 公式企業サイト, https://www.cainz.co.jp/news/12214/
- ペットテックスタートアップのPETOKOTO、「ペットテック業界カオスマップ2022(日本版/海外版)」を公開 – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000015317.html
- 2025年版 ペットビジネスマーケティング総覧 | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所, https://www.yano.co.jp/market_reports/C67106800
- ペット関連商品の国内市場を調査
新型コロナの流行に伴いペットと過ごす時間が増え需要が高まる | プレスリリース | 富士経済グループ, https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=21062 - オムニチャネル戦略としての重要性が高まるペットEC市場 2024 | 調査レポート – 富士経済, https://www.fuji-keizai.co.jp/report/detail.html?code=162403908&la=en
- 日本ペットフード市場:業界規模、シェア、トレンド、機会、競争環境および主要地域(2035年) | KDマーケットインサイツ株式会社 | プレスリリース配信代行サービス『ドリームニュース』, https://www.dreamnews.jp/press/0000328423/
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- ペットフード市場規模、成長、シェア、トレンド、分析、2032 – Fortune Business Insights, https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E6%A5%AD%E7%95%8C-%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88/%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%89%E5%B8%82%E5%A0%B4-100554
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- (別紙) 2023(令和5)年度ペットフード産業実態調査の結果, https://petfood.or.jp/pdf/data/2023/data.pdf
- ペットブームは頭打ち?|その他の研究・分析レポート – 経済産業省, https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20230804hitokoto.html
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- NEWS | AIコンシェルジュ「ペトサポ」のベータテスト版をリリース – PetBit Inc., https://petbit.jp/posts/petsupport
- ペット市場、「量」から「質」への転換期 高付加価値戦略で 差をつけろ – ダイヤモンド・チェーンストア, https://diamond-rm.net/management/510151/2/
- ペット関連市場/23年は5974億円見込み、サプリ・衣類は直販率が伸長 | 流通ニュース, https://www.ryutsuu.biz/strategy/p062220.html
- 2023年の国内ペット周辺ビジネスの市場規模は1兆5000億円超 – ネットショップ担当者フォーラム, https://netshop.impress.co.jp/node/12411
- 犬オークションの現場 ペット流通のブラックボックス③ | 「犬や猫ともっと幸せに」をコンセプトにしたWEBメディア「sippo」, https://sippo.asahi.com/article/10560363

