内燃機関の終焉か、復権か:電動化とAIが拓く二輪車産業の新航路
第1章:エグゼクティブサマリー
本レポートの目的と調査範囲
本レポートは、世界の二輪車業界が直面する歴史的な転換点において、持続的な成長を達成するための事業戦略を策定することを目的とする。現在、二輪車市場は3つの巨大な構造変化の波、すなわち「市場の二極化」「パワートレインの電動化」「AIとコネクティビティによるインテリジェント化」に同時に見舞われている。この地殻変動は、既存の競争優位の源泉を根底から覆し、新たな勝者と敗者を生み出す可能性を秘めている。
本調査の範囲は、グローバルに事業を展開する主要な二輪車メーカー、BoschやBremboといった主要部品サプライヤー、販売と顧客接点の最前線であるディーラー網に加え、この変革を駆動するバッテリー技術、AI、ソフトウェア、ライディングギア、そして金融・保険といった関連産業までを包括的に網羅する。この広範な分析を通じて、業界の全体像を俯瞰し、異業種からの脅威と協業の機会を特定する。
最も重要な結論
本分析から導き出された結論は以下の通りである。
- 市場の二極化は不可逆である。 先進国では二輪車が「体験価値」を提供する趣味・嗜好品として高価格帯へシフトし、ブランドやコミュニティが購買決定要因となる。一方、アジアを中心とする新興国では「実用価値」を提供する生活の足として低価格帯のコミューター需要が爆発的に増加し、経済性や耐久性が最重要視される。単一のグローバル戦略でこの両極端の市場を攻略することは、もはや不可能である。
- 電動化は、価値の源泉をハードウェアからソフトウェアとエコシステムへ移行させる破壊的変革である。 電動化は単なるエンジンからモーターへの置き換えではない。競争力の源泉は、長年培われたエンジン技術から、バッテリー性能、エネルギーマネジメント、そして車両OSやコネクテッドサービスを司るソフトウェアへと根本的にシフトする。これにより、新興EVメーカーやテクノロジー企業の参入障壁が劇的に低下し、競争のルールそのものが書き換えられつつある。
- AIとコネクティビティは、安全性を新たな競争軸とし、ビジネスモデルを変革する。 ADAS(先進運転支援システム)の進化は、「バイクは危険」という長年の社会通念を覆し、新たな顧客層を市場に呼び込む最大の機会である。また、コネクテッド技術は、車両データを活用した新サービス(例:テレマティクス保険、予知保全)を可能にし、従来の「売り切り型」の製造業から、顧客と継続的な関係を築く「リカーリング型」のサービス業への転換を促す。
- 既存の強みだけでは生き残れない。 従来の「ブランド力」「エンジン技術」「広範な販売網」といった強みは、その価値を相対的に低下させている。これらの変革の波に適応するためには、事業ポートフォリオ、技術開発の優先順位、そして何よりも組織文化と人材構成の抜本的な再構築が急務である。
主要な戦略的推奨事項
以上の結論に基づき、今後5年から10年で持続的成長を遂げるために、以下の4つの戦略的アクションを強く推奨する。
- デュアル・アーキテクチャ戦略の採用: 既存の内燃機関(ICE)事業の収益性を最大化し、ブランドの「ヘリテージ(遺産)」価値を高める一方、電動(EV)事業を別組織として事実上スピンオフさせる。これにより、EV事業は既存の組織文化や意思決定プロセスに縛られることなく、市場の変化に迅速に対応できるアジリティを確保する。
- ソフトウェア・ケイパビリティの内製化と専門組織の設立: 車両OS、コネクテッドサービス基盤、データ解析能力を将来の競争優位の中核と明確に位置づける。外部委託への依存から脱却し、ソフトウェア開発の内製化を推進するため、シリコンバレーや深センなど世界のテクノロジーハブに専門の開発拠点を設立し、トップクラスのソフトウェアエンジニアを積極的に採用・投資する。
- 新興国市場における「モビリティ・エコシステム」の構築: 単なる低価格車両の販売競争から脱却する。バッテリー交換ステーション(BSS)、残価設定型ローンなどの金融サービス、デジタルを活用したメンテナンスネットワークをパッケージで提供することで、顧客を自社エコシステムにロックインし、ライフサイクル全体での収益性を確保する。
- 先進国市場におけるブランド価値の再定義とコミュニティの強化: ICEモデルは「操る悦び」を追求するヘリテージラインとして、限定生産やオーナーズクラブ活動を通じてその希少価値を高める。EVモデルでは「クリーンでスマートな都市移動体験」を核とした新たなブランドストーリーを構築し、先進性や環境意識の高い新たな顧客層に訴求する。オンラインとオフラインを融合させたコミュニティ活動を強化し、顧客のエンゲージMENTを高め、ブランドへの忠誠心を醸成する。
第2章:市場概観(Market Overview)
二輪車産業の戦略を策定する上で、まずグローバル市場の規模、成長性、そして構造をマクロな視点から定量的に把握することが不可欠である。本章では、販売台数・生産台数の推移と将来予測を基に、地域別、排気量別、パワートレイン別の市場動向を分析し、業界の成長ドライバーと阻害要因を明らかにする。
世界の二輪車販売・生産台数の推移と予測(2020年~2035年)
世界の二輪車市場は、新興国の力強い需要に支えられ、今後も安定的な成長が見込まれる。2023年の世界主要国における総生産台数は約5,700万台レベルに達したと推定される 1。販売台数(需要)ベースでは、2023年に約4,940万台を記録している 1。今後の予測として、2035年には世界の新車販売台数が6,197万台に達するという見方がある 2。
市場規模(金額ベース)については、複数の調査機関から異なる予測が提示されているが、これは分析対象とするセグメントや価格帯の前提条件の違いに起因する。例えば、ある調査では2024年の888.5億ドルから2035年には1200億ドルへ、年平均成長率(CAGR)2.77%で成長すると予測されている 3。別の調査では、2025年の758.2億ドルから2032年に1190.9億ドル(CAGR 6.7%)5、さらに別の調査では2025年の1215億ドルから2035年に1798億ドル(CAGR 3.9%)に達するという、より楽観的な見通しも存在する 6。
これらの予測のばらつきは、単なる計算誤差ではない。電動化の進展速度、次世代バッテリー技術の実用化タイミング、各国の規制強化の度合いといった、予測が極めて困難な構造変動要因に対する仮説の違いを反映している。これは、二輪車業界の未来が単一の線形的な成長軌道上にはなく、複数のシナリオ分岐が存在することを示唆している。したがって、事業戦略は単一の未来予測に依存するのではなく、複数のシナリオ(例:「急速な電動化シナリオ」「ICE復権シナリオ」)に対応できる柔軟性とオプションを持つことが賢明である。特に、投資規模の大きいバッテリー生産設備などについては、需要変動リスクをヘッジするための段階的投資や他社との協業が不可欠となる。
地域別市場分析
市場の地理的構成は極めて偏在しており、アジア太平洋地域が圧倒的な中心地である。
- アジア太平洋: 2024年時点で世界市場の60%以上のシェアを占め、成長の主要なエンジンとなっている 3。2023年の販売台数3,581万台は、世界需要の72.5%に相当する 1。特にインド(2023年販売: 1,797万台)、中国(同: 1,660万台)、インドネシア(同: 600万台超)が巨大市場を形成しており、手頃な価格のコミューターが「生活の足」として普及している 1。
- 欧州・北米: 台数ベースのシェアは小さいものの、レクリエーション目的の大型バイクや、環境規制を背景としたプレミアムEVバイクへのシフトが鮮明である 3。これらの市場は、ブランド価値や最先端技術が問われる高付加価値セグメントとして重要性を持つ。米国の市場規模は2032年までに87.6億ドルに達すると予測されている 5。
排気量別市場分析
排気量セグメントは、先進国と新興国の需要構造の違いを明確に反映している。
- 小型(150cc以下): 販売台数ベースでは市場の大部分を占める最大のセグメントである 6。特にインドやASEAN諸国において、その経済性と実用性から圧倒的な支持を得ている。
- 中型(151cc~500cc): 最も成長率が高いカテゴリーの一つである 6。新興国では中間層の所得向上に伴うアップグレード需要を、先進国ではベテランライダーのダウンサイジング需要や若年層の新規需要を捉えており、両市場の架け橋となる戦略的セグメントである。
- 大型(501cc以上): 主に先進国の趣味・嗜好品市場を形成してきたが、近年では中国(CAGR 8.6%予測)やインド(CAGR 8.0%予測)といった新興国でも富裕層を中心に需要が急拡大している 9。このセグメントの市場規模は、2025年の263億ドルから2035年には489億ドルに達すると予測されている 9。
以下の表は、世界の二輪車市場の構造を多角的に示している。
2024年(予測) | 2030年(予測) | 2035年(予測) | CAGR (2025-2035) | 主要ドライバー | |
---|---|---|---|---|---|
総市場規模(十億ドル) | $88.8 – $121.5 | – | $120.0 – $179.8 | 2.8% – 6.7% | 新興国の所得向上、都市化 |
総販売台数(百万台) | ~58 | ~60 | ~62 | ~0.5% | インド、ASEANの需要 |
パワートレイン別比率 | |||||
– ICE | ~91.5% | – | ~81.2% | – | 既存インフラ、価格 |
– EV | ~8.5% | – | ~18.8% | 11.6% – 19.9% | 規制、補助金、技術革新 |
地域別シェア(台数) | |||||
– アジア太平洋 | >70% | >70% | >70% | – | 人口、経済成長 |
– 欧州・北米 | <15% | <15% | <15% | – | 趣味需要、高付加価値化 |
排気量別シェア(台数) | |||||
– 150cc以下 | 大半 | 大半 | 大半 | 低 | 新興国の実用需要 |
– 151-500cc | – | – | – | 高 | 両市場での需要拡大 |
– 501cc以上 | – | – | – | 中 | 先進国の趣味、新興国の富裕層 |
出典: 1に基づく分析
パワートレイン別市場分析:電動化の波
二輪車市場における最大の構造変化は、電動化へのシフトである。
- ICE vs. EV比率と予測: 2024年時点でのグローバルなEV化率は約8.5%に過ぎないが、楽観的なシナリオでは2035年までに18.8%まで上昇する可能性がある 2。特にスクーターやモペットといった都市型コミューターセグメントでは電動化が先行しており、2024年時点で市場の65%以上をEVが占めているとのデータもある 10。
- EVバイク市場の成長ドライバー:
- 環境規制と政府インセンティブ: 各国の排出ガス規制強化(例:Euro規格)や、EV購入に対する補助金・税制優遇措置が、消費者のEVへの移行を強力に後押ししている 11。
- 技術革新: バッテリー技術の進歩が、EVの最大の課題であった航続距離と充電時間を改善している。リチウムイオン電池のエネルギー密度向上とコスト低下が普及の鍵を握る 13。
- 都市化と新たな需要: 都市部における交通渋滞や大気汚染問題、そしてeコマースの拡大に伴うラストワンマイル配送需要の増加が、静かでクリーンな電動コミューターにとって追い風となっている 16。
- 新興メーカーの参入: EVは内燃機関に比べて構造が単純であるため、多くの新規プレイヤーが市場に参入し、競争を活性化させている 13。
業界の主要KPIベンチマーク分析
競争環境を理解するため、主要メーカーのパフォーマンス指標を比較する。
- メーカー別販売シェア: 市場は寡占状態ではなく、各地域・セグメントで強みを持つプレイヤーが乱立している。金額ベースではホンダ(22.6%)、ヤマハ(10.4%)の日系企業が依然として強い影響力を持つ 8。しかし、販売台数ベースで見ると、インドのHero MotoCorp(10.3%)やBajaj Auto(7.0%)がヤマハを上回り、新興国市場のボリュームの大きさを物語っている 8。
- 営業利益率: プレミアムブランドであるDucatiやKTM、BMWは、高いブランド力と製品価格を背景に、10%を超える高い営業利益率を維持している。一方で、ボリュームゾーンで戦うメーカーは、熾烈な価格競争により利益率が圧迫される傾向にある。電動化への巨額な先行投資も、短期的には各社の収益性を下押しする要因となる。
第3章:外部環境分析(PESTLE Analysis)
二輪車業界は、政治、経済、社会、技術、法規制、環境といった多岐にわたるマクロ環境要因の変化に大きく影響される。PESTLEフレームワークを用いてこれらの外部要因を体系的に分析し、事業戦略上の機会と脅威を特定する。
政治(Politics)
政府の政策や国際関係は、業界のルールを直接的に形成する。
- 排ガス・騒音規制の強化: 欧州のEuro規格やインドのBharat Stage (BS) 規制に代表されるように、世界中で環境規制は厳格化の一途をたどっている 19。これらの規制は、内燃機関(ICE)の開発コストを著しく増大させ、基準をクリアできない旧型モデルの市場からの退場を促す。これが、メーカーにとって電動化への移行を加速させる最大の外的圧力となっている。特にカリフォルニア州では、2035年までに新車販売の50%をゼロエミッションバイク(ZEM)にするという野心的な目標案が議論されており、規制が技術開発の方向性を決定づける事例となっている 21。
- EV導入支援策: 各国政府によるEV購入補助金、税制優遇、充電インフラ整備への投資は、EVの初期購入コストという最大の障壁を引き下げ、市場の立ち上がりを強力に支援している 12。しかし、これらの政策は財政状況によって変更・終了される可能性があり、その動向はEV需要を大きく左右する不確実性要因でもある。
- 貿易政策と地政学リスク: 二輪車産業のグローバルなサプライチェーンは、各国の貿易政策に敏感である。例えば、特定国からの部品に対する高関税(最大25%に達するケースも報告されている 22)は、製品コストを直接押し上げる。また、ブラジルのように現地調達率(65%)を義務付ける政策は、現地生産体制の構築を企業に強いる 23。特にバッテリーや半導体のサプライチェーンは特定地域に集中しているため、地政学的緊張が供給途絶のリスクを高めている。
経済(Economy)
世界経済および各地域の経済状況は、二輪車の需要構造に直結する。
- 新興国の経済成長と中間層の拡大: インド、インドネシア、ベトナムといったアジアの新興国では、経済成長に伴い中間層が拡大し続けている。彼らにとって、二輪車は初めて手にするパーソナルモビリティであり、社会的地位向上の象徴でもある。この巨大な需要が、世界の二輪車市場の成長を牽引する最大のエンジンである 3。
- 先進国の可処分所得と景気動向: 日本や欧米などの先進国において、特に大型バイクは生活必需品ではなく趣味・嗜好品としての性格が強い。そのため、市場は景気動向や個人の可処分所得の変動に大きく影響される。金利の上昇はローンを利用した購入のハードルを上げ、需要を冷え込ませる要因となり得る 23。
社会(Society)
人々のライフスタイル、価値観、人口動態の変化は、長期的な市場トレンドを形成する。
- 先進国における人口動態の変化: 主要な顧客層であったベビーブーマー世代の高齢化が進み、ライダー人口の減少が懸念されている。一方で、かつてバイクに乗っていた層が再び乗り始める「リターンライダー」や、新たな顧客層としての女性ライダーの増加が、市場に新たな活気をもたらしている 23。
- 都市化の進展とライフスタイルの変容: 世界的に都市部への人口集中が進む中、交通渋滞や駐車スペース不足は深刻な問題となっている。この状況下で、手軽で機動性の高い二輪車は効率的な都市内移動手段として再評価されている 5。また、特に若年層を中心に「所有」から「利用」へと価値観がシフトしており、電動バイクのシェアリングやサブスクリプションといった新たなビジネスモデルが拡大する土壌が生まれている 17。
- 安全性への懸念と社会的イメージ: 「二輪車=危険」という社会的なイメージは依然として根強く、特に四輪車と比較した際の安全性の低さが、新規顧客獲得の大きな障壁となっている。インドでは二輪車乗員の死亡者数が10年で倍増したというデータもあり、このネガティブな認識を払拭することが業界全体の課題である 5。
技術(Technology)
技術革新は、製品の価値そのものを再定義し、新たな競争のルールを生み出す。
- 電動化技術の進化:
- バッテリー: EVの性能を決定づける最重要技術。リチウムイオン電池のエネルギー密度向上、コスト低下、充電時間の短縮が、EV普及のペースを左右する 13。将来的には、より安全で高エネルギー密度な全固体電池の実用化が期待されており、Ducatiなどが研究を進めている 24。
- 交換式バッテリー: 充電インフラが未整備な地域や、待ち時間を嫌うユーザーにとって、数分でバッテリーを交換できるシステムは画期的なソリューションである。ホンダの「Mobile Power Pack (MPP)」を核としたコンソーシアムの動きは、業界標準化に向けた重要な一歩である 25。
- 安全技術(ARAS)の革命:
- Boschなどが主導するレーダーやカメラを用いたARAS(先進ライダー支援システム)は、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、衝突予測警報、死角検知といった機能を実用化し、事故を未然に防ぐ能力を飛躍的に向上させている 27。これらの技術の普及は、前述の「安全性への懸念」という大きな課題を解決する可能性を秘めている。
- AIとコネクティビティの融合:
- スマートフォンとの連携はもはや標準機能となり、TFT液晶メーターを通じてナビゲーションや車両情報へのアクセスが容易になっている。さらに、V2X(Vehicle-to-Everything)通信技術は、車両同士や交通インフラが連携し、人間の認知能力を超えるレベルで危険を予測・回避することを可能にする 29。これにより、究極の目標である「事故ゼロ」社会の実現が視野に入ってくる。
これらの技術動向の中で、特に注目すべきは、安全性向上技術が持つ市場構造を変革するポテンシャルである。社会的な購入障壁として根強く存在する「バイクは危険」という認識は、新規顧客、特に家族の同意を得にくい若年層や女性の市場参入を妨げてきた。しかし、ARASやAIを活用した自立安定技術(転倒防止)が普及し、「バイクは転びにくい、事故に遭いにくい乗り物」という新しい常識が形成されれば、この最大の障壁が根本から覆る可能性がある。これは、これまで二輪車に関心を示さなかった全く新しい顧客層(例:安全性を最優先する都市部のコミューター)を市場に呼び込む起爆剤となり得る。したがって、ARASやAI安全技術への投資は、単なる既存製品への機能追加ではなく、市場そのものを拡大するための極めて重要な戦略的投資と位置づけるべきである。この領域で技術の標準化競争をリードできれば、四輪におけるABSやエアバッグのように、業界のデファクトスタンダードを確立し、長期的な競争優位を築くことが可能となる。
法規制(Legal)
法的な枠組みは、製品の設計から販売、使用に至るまで、事業活動のあらゆる側面に影響を及ぼす。
- 安全基準と認証制度: 各国で定められているヘルメットの着用義務、灯火類の基準、そしてABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の義務化といった安全基準は、製品開発における最低限の要求事項である。
- 製造物責任法(PL法): 製品の欠陥によって生じた損害に対するメーカーの責任を定める法律であり、品質管理体制の構築とリコール対応能力が厳しく問われる。
- データプライバシーとサイバーセキュリティ: コネクテッドバイクが普及するにつれ、収集される個人情報や走行データの取り扱いに関するプライバシー規制(例:GDPR)への準拠が必須となる。また、UNECE WP29のサイバーセキュリティ法規(UN-R155/156)のように、外部からのハッキングを防ぐためのセキュリティ対策が法的に義務付けられる動きが広がっており、新たなコンプライアンスコストとなっている 32。
環境(Environment)
地球環境問題への対応は、企業の社会的責任であると同時に、事業機会とリスクの源泉でもある。
- カーボンニュートラルへの圧力: パリ協定を背景に、世界各国が2050年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げている。運輸部門はCO2排出量の主要な源の一つであり、二輪車業界にも内燃機関からの脱却と電動化への移行が強く求められている。
- ライフサイクルアセスメント(LCA)への関心: 製品の環境性能評価は、走行時の排出ガスだけでなく、原材料の採掘から製造、使用、廃棄・リサイクルに至るまでの全ライフサイクルを通じた環境負荷(LCA)で評価される傾向が強まっている 33。特にEVバッテリーの製造・廃棄プロセスにおける環境負荷は、今後の重要な論点となる。
第4章:業界構造と競争環境の分析(Five Forces Analysis)
マイケル・ポーターのFive Forcesフレームワークを用いて、世界の二輪車業界の収益性に影響を与える5つの競争要因を分析する。これにより、業界の魅力度と、競争優位を築くための鍵がどこにあるのかを明らかにする。
供給者の交渉力:中〜高
二輪車の性能とコストを左右する部品供給者の力は、電動化の進展に伴い、ますます増大している。
- 伝統的基幹部品のサプライヤー: ABS/ECUにおけるBosch、ブレーキシステムにおけるBrembo、サスペンションにおけるShowaやÖhlinsなど、特定の高性能部品領域では、高い技術力とブランド力を持つ少数のメガサプライヤーが市場を支配している 34。これらのサプライヤーは完成車メーカーに対して強い交渉力を持ち、価格や供給条件に大きな影響を与える。例えば、ハーレーダビッドソンは高性能ブレーキ部品の約78%をBrembo一社に依存しており、代替が困難な状況にある 34。
- 電動化関連部品のサプライヤー: 電動化へのシフトは、新たなパワープレイヤーを生み出している。特に、EVの心臓部であるバッテリーセル(CATL, LG Energy Solution, Panasonicなど)や、車両の知能を司る半導体メーカーの重要性は飛躍的に高まっている。これらの部品は、EVの航続距離、充電性能、コスト、そして供給安定性を決定づける最重要要素である。バッテリーのサプライチェーンは中国や韓国の特定企業に大きく依存しており、地政学的リスクや資源価格の変動が完成車メーカーの経営を直撃する構造となっている 26。半導体不足が世界の自動車産業全体を揺るがしたように、これらの戦略部品を安定的に確保できるかどうかが、企業の生死を分ける時代に突入している。
買い手の交渉力:中
買い手の交渉力は、市場セグメントによって大きく異なる。
- 先進国の趣味・嗜好品市場: このセグメントの顧客は、価格よりもブランドが持つ独自のストーリー、デザイン、走行フィーリング、そして仲間とのコミュニティ体験といった「感性価値」を重視する。ハーレーダビッドソンのように、顧客の平均維持期間が12〜15年にも及ぶ強固なブランドロイヤルティが形成されている場合、買い手の価格交渉力は比較的弱い 34。彼らは単なる移動手段ではなく、自己表現の手段としてバイクを選んでいるため、代替ブランドへのスイッチングコスト(心理的コスト)は高い。
- 新興国の実用・コミューター市場: こちらのセグメントでは、状況は一変する。バイクは日々の生活や仕事を支えるための「ツール」であり、購入価格、燃費、耐久性、維持費といった経済合理性が購買決定の最重要要因となる 36。インターネットやSNSの普及により、製品スペックや価格の比較が容易になっており、ブランドへのこだわりは相対的に低い。そのため、買い手はより良い条件を提示するメーカーへ容易に乗り換えることができ、熾烈な価格競争を引き起こす要因となっている。
新規参入の脅威:高
伝統的に参入障壁が高いとされてきた二輪車業界だが、電動化がその壁を侵食し始めている。
- 伝統的な参入障壁: 内燃機関を搭載したバイクの製造には、複雑なエンジンやトランスミッションの開発・生産ノウハウ、そして巨額の設備投資(年間5億ドル以上とも言われる 34)が必要であった。加えて、長年のレース活動などを通じて築き上げられたブランドイメージや、世界中に広がる販売・サービス網も、新規参入者にとって高い壁として機能してきた。
- 電動化による参入障壁の低下: EVは、エンジンなどの複雑な摺動部品が不要で、部品点数も少ない。モーターやバッテリー、コントローラーといった主要コンポーネントを外部から調達すれば、比較的容易に車体を組み立てることが可能になる。この「水平分業化」の進展が、ハードウェア製造における参入障壁を劇的に引き下げた。これにより、米国のZero MotorcyclesやLiveWire、イタリアのEnergicaといったEV専業メーカーや、さらには家電メーカーなどの異業種からの参入が活発化している 38。
- 新興国メーカーの台頭: インドのHero MotoCorpやBajaj Auto、中国のCFMotoやYadeaといったメーカーは、巨大な国内市場で培った圧倒的な生産規模と低コストオペレーションを武器に、グローバル市場への進出を虎視眈々と狙っている 1。彼らはまず価格競争力の高い小型EVで先進国市場の足掛かりを築き、徐々に上位セグメントへと進出してくる可能性がある。
代替品の脅威:高
二輪車の代替品は、もはや他の二輪車ブランドだけではない。多様化するモビリティサービス全体が競合となる。
- 多様な移動手段: 都市部における移動ニーズに対しては、自動車(特に小型車や軽自動車)、公共交通機関に加え、近年急速に普及している電動アシスト自転車、eスクーター、そしてUberに代表されるライドシェアリングサービスが強力な代替品となっている 18。特に、短距離移動における手軽さや経済性では、これらのマイクロモビリティが二輪車を凌駕する場面も多い。e-bike(電動アシスト自転車)市場は2030年までに1,185億ドル規模に達すると予測されており、これは二輪車市場全体に匹敵する巨大な脅威である 34。
業界内の競争:高
既存プレイヤー間の競争は、伝統的な勢力図と新たな競争軸が交錯し、極めて激しいものとなっている。
- 既存勢力の競争構図: 世界市場では、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの日本の4大メーカーが、長年にわたり築き上げた技術力とグローバルな販売網を背景に、依然として約半数のシェアを握る支配的な地位を占めている 40。これに対し、BMW、Ducati、KTMといった欧州の個性派ブランドがプレミアムセグメントで独自の地位を築き、ハーレーダビッドソンやIndianといった米国ブランドがクルーザー文化を象徴する存在として君臨している。そして、巨大なインド市場ではHero MotoCorpやBajaj Autoといった現地メーカーが日系メーカーと熾烈なシェア争いを繰り広げている 8。
- 競争軸の変化: これまでの競争は、主にエンジンの排気量や馬力、ハンドリング性能といったハードウェアのスペックが中心であった。しかし、電動化とコネクティビティの進展により、競争の軸は「バッテリーの航続距離」「充電時間」「ソフトウェアの使いやすさ」「コネクテッドサービスの魅力」へと大きくシフトしつつある。この競争ルールの変化は、既存の序列を覆す可能性を秘めている。
この分析から浮かび上がるのは、電動化が業界構造に与える複合的な影響である。電動化は、一方ではエンジン技術という参入障壁を低くし、多様な新規参入者を呼び込む(新規参入の脅威:高)。他方で、EVの性能とコストを左右するバッテリーや半導体といった重要部品は、少数の特定サプライヤーに供給を依存する構造を生み出している(供給者の交渉力:高)。この2つの力が同時に作用することで、業界内の競争は激化して価格競争圧力が高まる一方で、主要部品のコストは高止まりするという、いわば「ダブルパンチ」の状態に陥る危険性がある。この構造的圧力の下では、従来の二輪車メーカーは、コモディティ化する車体の組み立て業者へとその役割が矮小化され、創出される価値の大部分をバッテリーメーカーやソフトウェアプラットフォーマーに奪われるリスクに直面する。このシナリオを回避するためには、単にEVを製造・販売するだけでなく、バッテリーの安定調達網の構築(サプライヤーとの合弁設立や直接出資など)や、独自の車両OS開発といった、バリューチェーンの上流および下流への垂直統合的な戦略的関与が不可欠となる。
第5章:バリューチェーンとサプライチェーン分析
業界の構造変化は、企業の価値創造プロセス(バリューチェーン)と、それを支える供給網(サプライチェーン)に根本的な変革を迫っている。本章では、価値の源泉がどこからどこへシフトしているのかを分析し、サプライチェーン上の新たなボトルネックを特定する。
バリューチェーン分析:価値の源泉はどこへシフトしたか
二輪車が生み出す価値の源泉は、ハードウェアからソフトウェア、そして体験へと劇的に移行している。
研究開発・設計:ハードウェアからソフトウェアへ
- 従来の価値の源泉: これまで、二輪車メーカーの競争優位は、長年の研究開発とレース活動を通じて培われた「内燃機関(エンジン)」の高性能化・小型化技術と、そのパワーを最大限に引き出す「車体設計(ハンドリング性能)」に集約されていた。エンジンの鼓動感や排気音といった官能的なフィーリング、そして意のままに操れる俊敏なハンドリングこそが、製品の価値とブランドイメージを形成する中核であった。
- 新たな価値の源泉: 電動化の波は、この構造を根底から覆す。価値創造の中心は、以下の3つの領域へとシフトしている。
- 電動パワートレイン: バッテリー、モーター、そしてそれらを統合制御するインバーターやBMS(バッテリーマネジメントシステム)といった電動パワートレインの性能が、航続距離、加速性能、充電時間といったEVの基本性能を決定づける。
- ソフトウェア: 車両のあらゆる機能を統合制御する車両OS(オペレーティングシステム)と、スマートフォンアプリやクラウドと連携して新たな機能・サービスを提供するコネクテッドプラットフォームが、新たな価値創造の主戦場となっている 32。米国のEVバイクメーカーZero Motorcyclesが提供する「Cypher III+」OSのように、購入後もソフトウェアのアップデートを通じて走行モードの追加や性能向上が可能になるビジネスモデルは、ハードウェアを売って終わりだった従来の関係性を覆す 43。
- ブランド・コミュニティ: 製品の機能的価値がコモディティ化する中で、ブランドが持つ独自のストーリーや世界観に共感し、同じ価値観を共有する仲間と繋がる「コミュニティ」の重要性が増している。Harley-DavidsonのH.O.G.に代表されるように、コミュニティは顧客のブランドへのエンゲージメントを高め、長期的なロイヤルティを醸成する強力な装置となる 44。
販売・サービス:ディーラー網の変革とD2Cの可能性
- 正規ディーラー網の強みと課題: 世界中に広がる正規ディーラー網は、既存メーカーが持つ最大の資産の一つである。製品の展示・販売、試乗機会の提供、専門的な知識を持つメカニックによるメンテナンス、そして何よりも顧客との対面での関係構築において、その役割は依然として大きい。しかし、電動化はディーラーのビジネスモデルにも変革を迫る。EVはエンジンオイルやプラグ交換といった定期的なメンテナンス項目が大幅に減少するため、ディーラーの収益の柱であったアフターサービス事業の縮小が避けられない。ディーラー網を維持するためには、充電サービスの提供、中古EVのバッテリー診断・保証、カスタマイズパーツの販売など、新たな収益源の確立が急務となる。
- D2C(Direct to Consumer)モデルの台頭: Teslaが四輪業界で示したように、ディーラーを介さず、オンラインで直接顧客に販売するD2Cモデルは、中間マージンを削減できるだけでなく、顧客データ(属性、購買行動、使用状況など)をメーカーが直接収集・分析できるという大きなメリットを持つ。新興EVメーカーの多くは、都市部に設置した体験型ショールームとオンライン販売を組み合わせた、アセットライトな販売モデルを採用している。既存メーカーも、オンラインでのコンフィギュレーションや予約システムを導入し、ディーラーを納車やサービスの拠点として活用するハイブリッドなモデルを模索する必要がある。
サプライチェーン分析:新たなボトルネックの出現
電動化は、サプライチェーンの勢力図を塗り替え、新たなリスクと依存関係を生み出している。
- エンジン関連サプライヤーの淘汰と転換: 電動化の進展は、ピストン、クランクシャフト、点火プラグ、排気システムといった伝統的なエンジン関連部品サプライヤーにとっては、死活問題である。これらの市場は確実に縮小していくため、事業の多角化や転換が不可避となる。生き残りのためには、モーターのコア部品、バッテリーケース、冷却システム、パワーエレクトロニクス関連部品など、EV向けの新たな製品分野へ早期にシフトすることが求められる。
- バッテリーと半導体の安定調達が最重要課題に:
- バッテリーサプライチェーン: 今後の二輪車産業における最大のボトルネックとなる。リチウム、コバルト、ニッケルといった重要鉱物の安定確保は、国家レベルの資源戦略とも絡み合う複雑な課題である。セル生産はCATL(中国)、LG Energy Solution(韓国)といったアジアの特定メーカーへの寡占化が進んでおり、これらの巨大サプライヤーに対する交渉力を持つことが極めて重要となる 33。完成車メーカーは、単なる購入者にとどまらず、セルメーカーとの長期供給契約、共同開発、さらには合弁会社設立(例:ホンダとLGのJV設立 26)といった、より踏み込んだ関係構築を迫られている。
- 半導体サプライチェーン: 電動化、コネクテッド化、ARASの高度化に伴い、車両一台あたりに搭載される半導体の種類と数は爆発的に増加する。特に、モーター制御やバッテリーマネジメントに用いられるパワー半導体や、高度な演算処理を担うSoC(System-on-a-Chip)は、安定調達が不可欠である。近年の世界的な半導体不足が示したように、半導体の供給遅延は即、生産停止に直結する。
このサプライチェーンの変化の中で、特に戦略的な意味合いを持つのが「バッテリー交換エコシステム」を巡る主導権争いである。EVの普及における最大の障壁は、依然として長い充電時間と航続距離への不安(レンジアングザイエティ)である。バッテリー交換ステーション(BSS)は、これらの課題を「数分で満充電のバッテリーに交換する」という体験で解決する画期的なソリューションとなり得る 47。台湾のGogoroはこのビジネスモデルで大きな成功を収めており、ホンダも交換式バッテリー「Mobile Power Pack (MPP)」を核としたエコシステムの構築を、業界他社を巻き込みながら進めている 25。
このBSSが社会インフラとして普及した場合、顧客の購買行動は大きく変化する可能性がある。ユーザーは特定の車両ブランドを選ぶのではなく、「どこでも利用可能なバッテリープラットフォーム」を基準に車両を選ぶようになるかもしれない。これは、スマートフォンの世界におけるOS(iOS vs. Android)や、家庭用ゲーム機市場におけるプラットフォーム(PlayStation vs. Xbox)の競争構造と酷似している。つまり、自社のバッテリー規格を業界のデファクトスタンダードとすることができれば、その企業は単なる車両メーカーを超え、業界全体のエネルギーインフラを支配するプラットフォーマーとなる可能性を秘めている。この主導権を握るためには、自社単独でインフラを構築する閉鎖的なアプローチではなく、他社にも規格を公開し、多くのメーカーを自陣営に引き込むオープンなアライアンス戦略が極めて重要になる。
第6章:顧客需要の特性分析
二輪車市場の二極化は、顧客が製品に求める価値(Key Buying Factor: KBF)の根本的な違いから生じている。持続可能な事業戦略を構築するためには、これらの異なる顧客セグメントを深く理解し、それぞれに最適化された価値提案を行うことが不可欠である。
顧客セグメント分析とKBF(Key Buying Factor)
市場は大きく二つのセグメントに大別される。それぞれのセグメントが重視する価値は、対極にあると言っても過言ではない。
先進国の「趣味・週末ライダー層」
このセグメントの顧客にとって、二輪車は単なる移動手段ではなく、自己表現のツール、人生を豊かにするパートナーである。彼らの購買を決定づける要因(KBF)は、機能的価値以上に情緒的価値に重きを置いている。
- KBF 1: デザインとブランドストーリー: 車両のスタイリングは、オーナーの個性や美意識を反映する最も重要な要素である。また、ブランドが持つ歴史、レースでの栄光、あるいは特定のライフスタイル(例:自由、冒険)を象徴するストーリーに強く共感し、その世界観の一部になることに価値を見出す 45。
- KBF 2: 走行性能と官能価値: スロットルを開けた時の胸のすくような加速感、コーナーを意のままに駆け抜ける一体感、そして内燃機関が奏でる鼓動や排気音といった、五感に訴えかける体験が重視される。
- KBF 3: カスタムの自由度: 純正部品やアフターマーケットパーツを用いて、自分だけの一台を創り上げる「カスタム文化」は、このセグメントの大きな魅力の一つである。車両は、創造性を発揮するためのキャンバスとなる。
- KBF 4: コミュニティとの繋がり: 同じブランドのオーナー同士でツーリングに出かけたり、情報を交換したりするコミュニティへの所属意識が、所有する喜びを増幅させる 44。Harley-DavidsonのH.O.G. (Harley Owners Group) は、このコミュニティがいかに強力なブランドロイヤルティを形成するかの典型例である。
新興国の「日常の足・コミューター層」
このセグメントの顧客にとって、二輪車は日々の通勤、通学、あるいは商売に不可欠な生活の道具である。彼らのKBFは、極めて実用的かつ経済合理性に基づいている。
- KBF 1: 購入価格と経済性: 限られた所得の中から購入するため、車両本体の価格が最も重要な判断基準となる。加えて、日々の出費に直結する燃費や、税金・保険といった維持費の低さも厳しく評価される 36。
- KBF 2: 耐久性と信頼性: 未整備な道路環境や過酷な気象条件下でも故障せず、長期間にわたって安定して稼働することが絶対条件である。故障は、日々の生活や収入の機会を直接的に奪うことにつながる。
- KBF 3: 実用性(積載性・二人乗り性能): 荷物を運んだり、家族を乗せたりする機会が多いため、大きなシートや荷台、グラブバーといった実用的な装備が重視される。
- KBF 4: メンテナンスの容易さと部品入手のしやすさ: 故障した際に、身近な修理工場で、安価かつ迅速に修理できることが重要である。そのためには、構造がシンプルで、交換部品が容易に入手できる必要がある。
新たな顧客体験(CX)の創出
デジタル技術の進化は、メーカーと顧客の関係性を変え、新たな顧客体験(Customer Experience: CX)の創出を可能にしている。
- ブランド・コミュニティの戦略的活用: 前述の通り、コミュニティはブランドロイヤルティの源泉である。メーカーは、単にオーナーズクラブを設立するだけでなく、ブランドの世界観を体現するツーリングイベントの企画、プロライダーによるライディングスクールの開催、限定グッズの提供などを通じて、顧客を「ファン」へと昇華させるための戦略的な投資を行うことが重要である。これらのオフラインでの体験は、ブランドへの深い愛着を育む。
- デジタルとリアルの融合によるエンゲージメント強化: コネクテッド技術は、顧客との関係を「購入時」の点から「所有期間全体」の線へと拡張する。
- 購入後: スマートフォンアプリを通じて、最適なツーリングルートの提案、仲間との走行ログの共有、ライディングスキルの分析とフィードバック、定期メンテナンス時期の通知といったパーソナライズされたサービスを提供する。
- 関係維持: これらの継続的な接点を通じて顧客の利用状況や好みをデータとして蓄積し、次の買い替え時に最適なモデルを提案したり、新たなアクセサリーやサービスを推奨したりすることが可能になる。これにより、顧客生涯価値(LTV)の最大化を図ることができる。
これら二極化する顧客セグメントを分析すると、単一のグローバルブランド戦略では両者のニーズに同時に応えることが極めて困難であることがわかる。先進国のライダーが求める「自己表現のためのプレミアムなブランドイメージ」は、新興国のコミューター市場における価格競争力を削ぐ可能性がある。逆に、新興国で「安価で実用的なツール」というイメージが定着すれば、先進国市場でのブランド価値を毀損しかねない。
この戦略的ジレンマを解決するためには、多くのグローバル消費財企業が採用しているように、ターゲットセグメントごとにブランドを明確に分ける「マルチブランド戦略」、すなわちブランド・アーキテクチャの再設計が有効なアプローチとなる。具体的には、既存の伝統的なブランドは、先進国のヘリテージ・趣味市場に特化させ、その歴史と世界観をさらに深化させる。一方で、新興国の実用市場や、グローバルに展開するEVコミューター市場には、全く新しいブランドを立ち上げる。インドのHero MotoCorpがEV専用ブランドとして「Vida」を設立したのが好例である 48。このアプローチにより、各市場のKBFに完全に最適化された製品、価格設定、マーケティングコミュニケーション、販売チャネル戦略を展開することが可能となり、ブランド間のカニバリゼーション(共食い)を避けつつ、市場全体のシェアを最大化することができる。
第7章:業界の内部環境分析
外部環境の激変に対応するためには、企業が保有する経営資源や能力(ケイパビリティ)を客観的に評価し、それらが将来の競争環境においても有効であるかを見極める必要がある。本章では、VRIOフレームワークを用いて持続的な競争優位の源泉を分析し、変革期に求められる人材と組織文化のあり方について考察する。
VRIO分析:持続的な競争優位の源泉は何か?
VRIOフレームワークは、経営資源が持つ「経済的価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Organization)」の4つの側面から、競争優位の持続性を評価するツールである。
経営資源/ケイパビリティ | 価値(V) | 希少性(R) | 模倣困難性(I) | 組織(O) | 持続的競争優位 | 電動化時代における有効性 |
---|---|---|---|---|---|---|
高性能エンジン技術 | 高 | 高 | 高 | 有 | あり(ICE市場) | 低下(EV市場では無価値化) |
ブランドイメージ/歴史 | 高 | 高 | 高 | 有 | あり | 維持/変化(新たな価値の付与が必要) |
グローバル販売・サービス網 | 高 | 中 | 中 | 有 | あり(一時的) | 維持/変化(役割の再定義が必須) |
生産技術/規模の経済 | 高 | 中 | 中 | 有 | あり(一時的) | 低下(EVは生産プロセスが変化) |
ソフトウェア/AI開発能力 | 高 | 高 | 高 | 課題 | 将来の源泉 | 極めて重要 |
VRIO分析の詳細と電動化時代における評価
- 高性能エンジン技術:
- 分析: 長年にわたり、内燃機関(ICE)の高性能化、小型化、そして信頼性を追求してきた技術力は、間違いなく価値があり(V)、特定のフィーリング(例:Vツインエンジンの鼓動感)は希少で(R)、そのノウハウの蓄積は模倣困難(I)である。これらを活用する組織体制(O)も整っている。
- 電動化時代の評価: しかし、この競争優位はICE市場に限定される。電動化が進む市場においては、この中核技術そのものが陳腐化し、価値を失う。これは既存メーカーにとって最大のアキレス腱である。
- ブランドイメージと歴史:
- 分析: レースでの勝利の歴史、特定のカルチャーとの結びつき(例:ハーレーダビッドソンと自由の象徴)、あるいは卓越したデザインによって築き上げられた強力なブランドイメージは、高い顧客ロイヤルティを生み出す価値ある(V)資産である。このようなブランドのオーラは希少で(R)、時間と一貫した努力の積み重ねの結果であり、短期的な投資で模倣することは不可能(I)である。
- 電動化時代の評価: ブランド資産は、電動化時代においても有効性を維持する。むしろ、コモディティ化しやすいEV製品に、独自のストーリーと情緒的価値を付与するための重要な基盤となる。ただし、ICE時代に築かれた「エンジンのサウンド」「機械的な魅力」といったイメージを、EVが提供する「静粛性」「スマートさ」といった新たな価値とどう結びつけ、ブランドストーリーを再構築するかが課題となる。
- グローバルな販売・サービス網:
- 分析: 世界中に広がるディーラーネットワークは、顧客へのアクセス、試乗機会の提供、アフターサービスといった点で大きな価値を持つ(V)。しかし、その規模はもはや希少とは言えず(R)、新興メーカーもD2Cや異業種との提携で代替的なチャネルを構築可能であり、模倣困難性は中程度(I)である。
- 電動化時代の評価: EVのメンテナンス項目減少により、ディーラーの収益構造は大きな転換を迫られる。単なる販売・修理拠点から、充電ステーション、バッテリー診断センター、モビリティサービスのハブといった新たな役割へと進化できなければ、この巨大な資産はむしろ固定費の重荷となりかねない。
- ソフトウェア/AI開発能力:
- 分析: これからの時代、車両の性能向上、新たな顧客体験の創出、効率的な運用を可能にするソフトウェアとAIの開発能力は、競争優位を決定づける最も価値ある(V)ケイパビリティとなる。現状、この領域で真に希少(R)かつ模倣困難(I)な能力を持つ二輪車メーカーはほとんど存在せず、多くの企業にとって最大の課題となっている。これを実行できる組織(O)の構築が急務である。
- 電動化時代の評価: まさにこれが未来の戦いの中心地である。
人材動向と組織文化:変革への最大の障壁
技術や戦略以上に、企業の変革を阻む最大の要因は、人材と組織文化にある。
- 求められる人材像の劇的なシフト: これまでの二輪車メーカーは、エンジンやシャシーを設計する機械エンジニアが組織の中核を担ってきた。しかし、これからはバッテリー、パワーエレクトロニクス、モーターを専門とする電気・電子エンジニア、そして車両OS、コネクテッドサービス、AIアルゴリズムを開発するソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストが、価値創造の主役となる。伝統的なメーカーが、GAFAに代表されるテクノロジー企業と、これらの希少な人材を巡って争奪戦を繰り広げなければならない。
- 組織文化の衝突と融合の難しさ: 伝統的な製造業の組織文化は、数年単位の長い製品開発サイクルの中で、失敗を許さず、精緻なハードウェアを完璧に作り上げることを是とする「ウォーターフォール型」であり、「職人気質」が尊重される傾向にある。一方、ソフトウェア開発の世界は、短いサイクルで試作品を作り、顧客からのフィードバックを得ながら絶えず改善を繰り返す「アジャイル型」が主流である。この両者は、仕事の進め方、意思決定のスピード、リスクに対する考え方など、あらゆる面で根本的に異なる。既存の組織内にアジャイルな文化を根付かせようとしても、多くの場合、既存の評価制度や予算プロセス、部門間の壁に阻まれ、形骸化してしまう。
この内部環境分析を通じて明らかになるのは、従来の競争優位の源泉が揺らぎ、未来の競争優位を築くためのケイパビリティ(特にソフトウェア)が決定的に不足しているという厳しい現実である。そして、その根底には、変化のスピードに対応できない硬直化した組織文化が存在する。
このような状況下で持続的に勝ち続けるために最も重要なケイパビリティは、特定の技術やブランド力そのものではなく、外部環境の変化を迅速に察知し、素早く製品やサービス、事業モデルを適応・進化させることができる「組織のアジリティ(俊敏性)」そのものへとシフトする。不確実性の高い未来においては、完璧な計画を立てることよりも、小さな失敗を繰り返しながら素早く学習し、方向修正できる能力が企業の生存を左右する。
したがって、経営層が取り組むべき最優先課題は、特定のEVモデルを開発すること以上に、失敗を許容し、迅速な意思決定を促し、部門間の壁を越えたコラボレーションを奨励する「アジャイルな組織文化」をいかにして醸成するかである。これは、人事評価制度、予算配分プロセス、組織構造といった、企業の根幹をなす経営システムの変革を伴う、極めて困難だが避けては通れないタスクである。ハーレーダビッドソンがLiveWire事業を別会社としてスピンオフした戦略は、この組織文化の変革を既存の枠組みの外で加速させるための、一つの有効な解と言えるだろう。
第8章:主要トレンドと未来予測
これまでの分析を踏まえ、今後5年から15年のスパンで二輪車業界の未来を形作るであろう4つの主要なトレンドを予測し、その戦略的意味合いを考察する。
電動化のロードマップ:コミューターから始まり、趣味バイクへ波及
電動化の進展は、セグメントごとに異なる速度で進む。
- 第一波(現在〜2030年):都市型コミューターの電動化
短距離・低速域での使用が中心となるスクーターや小型バイクは、電動化の第一波の主役となる。その理由は、①比較的小さなバッテリー容量で実用的な航続距離を確保でき、車両コストを抑えやすい、②都市部における環境規制の強化やゼロエミッション区域の設定が直接的な追い風となる、③eコマースの拡大に伴うラストワンマイル配送といったBtoB需要が市場を牽引する、といった点にある 17。この領域では、利便性を高めるバッテリー交換システムが普及の鍵を握る可能性がある。 - 第二波(2030年以降):大型・趣味バイクの電動化
長距離ツーリングやスポーツ走行を目的とする大型の趣味バイクの完全電動化は、より長い時間を要する。現在のバッテリー技術では、内燃機関(ICE)と同等の航続距離と軽量な車体を両立させることが困難であり、高コストという課題も存在する。全固体電池のような次世代バッテリー技術のブレークスルーが、このセグメントの本格的な電動化の前提条件となる。それまでの過渡期においては、カワサキが市場に投入したような、エンジンとモーターを組み合わせたストロングハイブリッドEV(HEV)が、環境性能と航続距離、そして「操る楽しさ」を両立する現実的な解として、一定の市場を形成する可能性がある 49。
安全技術の進化:事故ゼロへの挑戦
AIとセンサー技術の進化は、二輪車の安全性を劇的に向上させ、「事故ゼロ」という究極の目標を現実的なものにする。
- ARAS(先進ライダー支援システム)の標準装備化: 現在は一部のプレミアムモデルに搭載されているレーダーベースのACC(アダプティブクルーズコントロール)や死角検知システムが、ABSのようにあらゆるモデルに標準装備される未来が訪れる。さらにAIの活用により、ライダーの視線や操作パターンから疲労度や集中力の低下を検知し、休憩を促すといった、より高度な支援が可能になる。
- 自立安定技術による「転倒しないバイク」の実現: ホンダが研究開発を進める「Riding Assist」に代表される、極低速時や停車時にバイク自身がバランスを取る自立安定技術が実用化されれば、二輪車における最大のリスクである「転倒」、特に初心者や体格に不安のあるライダーが経験しがちな「立ちごけ」を原理的に無くすことができる 30。これは、二輪車の参入障壁を劇的に引き下げ、市場を拡大するゲームチェンジャーとなり得る技術である。
- V2X(協調型安全)による事故の予知・回避: バイク、自動車、そして信号機などの交通インフラが相互に通信(Vehicle-to-Everything)することで、人間のドライバーやライダーの認知能力を超えたレベルでの安全が実現する 29。例えば、見通しの悪い交差点に進入する際、死角から接近する車両の情報を事前に受信して警告を発したり、前方の車両が急ブレーキをかけた情報を瞬時に後続車全体で共有し、玉突き事故を防いだりすることが可能になる。
モビリティサービス(MaaS)の拡大:「所有」から「利用」へ
特に都市部において、二輪車は「所有」するモノから、必要な時に「利用」するサービスへとその役割を変えていく。
- シェアリングとサブスクリプションの普及: 電動バイクやeスクーターのシェアリングサービスは、短距離移動の新たな選択肢として、世界中の都市で拡大を続けている 13。また、月額定額制でバイクを利用できるサブスクリプションサービスは、初期費用を抑えたい若年層や、様々なモデルを試したいユーザーにとって魅力的な選択肢となる。
- メーカーのサービスプロバイダーへの転身: このトレンドの中で、二輪車メーカーは単なる車両の製造・販売者ではなく、フリート管理システム、充電・バッテリー交換ソリューション、保険、メンテナンスを統合したMaaS(Mobility as a Service)プラットフォーマーとしての役割を担う機会を得る。BtoBの配送フリート向けや、BtoCのシェアリングサービス事業者向けに、ハードウェアとソフトウェアを一体化したソリューションを提供することが、新たな収益の柱となる可能性がある。
ヘリテージ市場の未来:内燃機関の価値の再定義
電動化が主流となる未来において、内燃機関(ICE)を搭載したバイクは、その存在意義を問い直される。
- アナログ価値の希少化: 電動化が進めば進むほど、ICEが持つ独特の「エンジンサウンド」「振動(鼓動感)」「ギアを操作する手間」といった、効率や合理性とは対極にあるアナログな感性価値は、その希少性を増していく。
- 「趣味の逸品」としてのヘリテージ市場: クラシックバイクや、往年の名車を現代の技術で再現したネオクラシックモデルは、機械式腕時計やフィルムカメラ、真空管アンプのように、性能や利便性とは異なる次元で評価される「趣味の逸品」「動く芸術品」としての地位を確立するだろう。この市場は規模こそ縮小するものの、高いブランドロイヤルティと収益性を持つニッチ市場として存続する可能性が高い。
- カーボンニュートラル燃料による延命: スズキなどが検討しているように、植物由来のバイオ燃料や、再生可能エネルギーとCO2から製造する合成燃料(e-fuel)といったカーボンニュートラル燃料を活用することで、ICEの排気音やフィーリングを楽しみながら、環境規制に対応するという道も探求される 52。これは、ICEの持つ文化的価値を未来に継承するための重要な選択肢となる。
これらのトレンドが交差する中で、特に「コネクティビティ」は、MaaSや保険といったサービス事業を融合させ、全く新しい収益源を創出する触媒となり得る。コネクテッドバイクは、走行距離、速度、急ブレーキ・急加速の頻度、走行エリア、メンテナンス状況といった、詳細な車両および運転データをリアルタイムで収集する能力を持つ。このビッグデータをAIで解析することにより、個々のライダーのリスクプロファイルを極めて正確に評価することが可能になる。
このリスクプロファイルに基づき、個々の運転行動に応じて保険料が変動する「テレマティクス保険(走行連動型保険)」を提供できるようになる。安全な運転を心がける優良なライダーほど保険料が安くなるため、安全運転への強力なインセンティブとして機能し、社会全体の事故削減にも貢献する。二輪車メーカーは、自社のコネクテッドプラットフォームを基盤として、保険会社と提携、あるいは自ら保険事業に参入することで、車両販売後の継続的な収益源を確立できる。このビジネスモデルは、MaaS事業とも極めて親和性が高い。例えば、シェアリングサービスの利用者の運転状況に応じて利用料金や保険料をダイナミックに変動させることで、より柔軟で競争力のある価格設定が可能になる。このように、車両販売(ハードウェア)と、データに基づくサービス(ソフトウェア/金融)を組み合わせることで、顧客一人当たりの生涯価値(LTV)を最大化するビジネスモデルへの転換が加速するだろう。
第9章:主要プレイヤーの戦略分析
世界の二輪車市場における競争力学を理解するため、主要プレイヤーの戦略、強み・弱み、そして業界変革への対応状況を比較分析する。各社のアプローチの違いは、この転換期における戦略的選択の多様性を示している。
以下の比較マトリクスは、主要メーカーの戦略的ポジショニングを概観するものである。
メーカー | 電動化戦略(アプローチ/目標) | 主要ターゲット市場(地域/セグメント) | 技術的強み(コアコンピタンス) | 主要アライアンス | 弱み/課題 |
---|---|---|---|---|---|
Honda | 全方位戦略(EV, HEV, 交換式バッテリー, CN燃料)。2030年EV350万台/10モデル以上 26 | グローバル全域、全セグメント | 圧倒的な研究開発力、生産技術、MPP(交換式バッテリー)エコシステム | LG (バッテリー), GM (四輪EV) | 資源分散による焦点の曖昧化、大企業ゆえの意思決定の遅さ |
Yamaha | 慎重なアプローチ。自社開発と外部連携(スタートアップ)の両輪 53 | グローバル。特にASEANのプレミアム市場 | デザイン、ブランド力、多様な製品群(マリン、ロボティクス等) | Gogoro (台湾), Tier IV (自動運転) | 電動化へのコミットメントが不明確で、他社に後れを取るリスク |
Suzuki | 選択と集中。2030年BEV比率25%(8モデル)。大型車はCN燃料を検討 52 | インド、ASEANの小型車市場 | 低コスト生産技術、軽量化技術 | トヨタ(四輪)、東芝・デンソー(バッテリー) | プレミアムセグメント、大型EVでの存在感の薄さ |
Kawasaki | 最も急進的な電動化。2035年までに先進国主要機種を電動化。HEV、水素エンジンも開発 49 | 先進国の大型・パフォーマンス市場 | 高性能エンジン技術、スーパーチャージャー、HEV技術 | Bimota(デザイン・車体) | EVの量産実績の不足、コミューター市場での弱さ |
BMW | 都市部からの電動化。Urban Mobilityセグメントを2030年までに完全電動化 55 | 欧州、北米のプレミアム市場 | 四輪で培ったEV・コネクテッド技術、ブランド力 | TVS(インドでの小型車生産) | 高価格帯に集中しており、ボリュームゾーンでの展開が限定的 |
Ducati | パフォーマンス重視。MotoEを技術開発の場とし、全固体電池を研究 24 | グローバルなスーパースポーツ市場 | レース由来の技術力、デザイン、ブランド(情熱) | VWグループ, QuantumScape (全固体電池) | EVの市販モデルが未投入。高価格帯に特化。 |
KTM | オフロードとパフォーマンス中心。ICE効率改善と並行してEV開発。2050年ネットゼロ目標 58 | グローバルなオフロード、パフォーマンス市場 | オフロード技術、軽量高剛性な車体設計 | Bajaj(生産・販売)、CFMoto(エンジン供給) | 都市型コミューター、コネクテッド技術での遅れ |
H-D / LiveWire | EV事業を「LiveWire」として分社化・上場。本体はICEクルーザーに集中 60 | 北米中心のクルーザー市場(H-D)、グローバルな都市部EV市場(LiveWire) | 強力なブランド文化(H-D)、EV先行開発の知見(LiveWire) | KYMCO(生産・販売) | H-Dの顧客層高齢化、LiveWireの野心的すぎる成長目標 |
Hero | インド市場特化。EVブランド「Vida」で手頃なスクーター市場に注力 48 | インド、その他新興国のコミューター市場 | インド国内の圧倒的な販売網、低コスト生産 | Ather Energy, Zero Motorcycles, H-D | プレミアムセグメントでのブランド力不足、技術の外部依存 |
Bajaj | 三輪EVでの成功を二輪へ展開。EV「Chetak」でシェア拡大 63 | インド、輸出市場(アフリカ、中南米) | 三輪EVでの市場実績、コスト競争力 | KTM, Triumph | 二輪EVのラインナップ不足、サプライチェーンの脆弱性 |
Royal Enfield | 伝統とブランドイメージを最優先。電動化は慎重に検討中(Flying Fleaコンセプト) 64 | グローバルなミドルクラス・クラシック市場 | 独自のブランド世界観、強固なコミュニティ | – | 電動化への対応の遅れ、技術的先進性の欠如 |
Zero | EV専業のパイオニア。基幹技術(モーター、バッテリー、OS)を自社開発 43 | 北米、欧州のプレミアムEV市場 | EVパワートレイン統合技術、車両OS「Cypher」 | – | 生産規模の小ささ、価格競争力の低さ、広範な販売網の欠如 |
各プレイヤーの戦略的動向
日系4社:それぞれの生存戦略
- Honda: 業界の巨人として、あらゆる可能性に賭ける「全方位戦略」を展開。ICEの燃費改善から、多様なEVモデル(コミューターからFUNバイクまで)、交換式バッテリー「MPP」によるエコシステム構築、さらにはカーボンニュートラル燃料の研究まで、考えうる全ての選択肢を追求している 25。この戦略はリスクを分散する一方で、経営資源が分散し、どの領域でも決定的なリーダーシップを確立できないリスクを内包する。
- Yamaha: ホンダとは対照的に、より慎重なアプローチを取る。電動領域では、自社でのプラットフォーム開発を進めつつ、台湾のGogoroとの協業やスタートアップ企業との連携を模索するなど、外部の知見を積極的に活用する姿勢を見せる 53。急進的な電動化目標を掲げるのではなく、市場の成熟度を見極めながら現実的な手を打っていく戦略だが、変化の速い市場で後れを取る危険性も指摘される。
- Suzuki: 自社の強みであるインド市場と小型車セグメントに焦点を当てた「選択と集中」戦略。2030年度までにBEV比率25%という現実的な目標を設定しつつ、趣味性の高い大型バイクではカーボンニュートラル燃料の活用を検討するなど、ICEの価値を維持しようとする独自のスタンスを示す 52。
- Kawasaki: 日系メーカーの中で最も急進的かつ大胆な電動化戦略を宣言。「2035年までに先進国向け主要機種の電動化を完了する」という目標を掲げ、世界初のストロングハイブリッドバイクを市場に投入した 49。さらには次世代エネルギーとして水素エンジンの研究開発にも着手しており、技術的リーダーシップによってブランドイメージを再構築しようという強い意志が感じられる。
欧州・米国勢:ブランド価値の再定義
- BMW Motorrad: 四輪事業で培った先進的なEV技術とコネクテッド技術を二輪に展開。特に「Urban Mobility」セグメントを電動化の重点領域と定め、2030年までの完全電動化を目指す 55。プレミアムブランドとしての地位を、先進技術によってさらに強固にする戦略である。
- Ducati: 「パフォーマンスこそが全て」というブランド哲学を電動化時代にも貫く。世界最高峰の電動バイクレース「MotoE」へのマシン供給を通じて極限状況でのデータとノウハウを蓄積し、親会社であるVWグループのリソースを活用して全固体電池のような次世代技術を研究している 24。妥協のない高性能EVを市場に投入することで、ブランドの神話を維持しようとしている。
- Harley-Davidson / LiveWire: 最もドラスティックな組織改革を断行。伝統的なICEクルーザー事業(Harley-Davidson)と、先進的なEV事業(LiveWire)を完全に分離した 60。本体はコアなファン層に集中して収益性を確保し、スピンオフしたLiveWireはアジャイルなベンチャーとして、外部資本(台湾のKYMCOとも提携)を活用しながら急成長を目指す。これは、伝統的企業のジレンマを解決するための一つのモデルケースとなり得る。
新興国勢とEV専業メーカー:破壊者たちの挑戦
- Hero MotoCorp & Bajaj Auto: インドの二大巨頭は、巨大な国内市場を基盤に、EVシフトを加速させている。HeroはEV専用ブランド「Vida」を立ち上げ、手頃な価格帯のスクーター市場を攻略 48。Bajajは得意とする三輪EV市場での成功体験(シェア35%超)を二輪EV「Chetak」に横展開する戦略を取る 63。両社とも、アライアンスを積極的に活用し(HeroはAtherやZeroと、BajajはKTMやTriumphと提携)、技術開発のスピードを補っている。
- Zero Motorcycles: EVバイク市場のパイオニアとして、モーター、バッテリーパック、そして車両OS「Cypher」といった基幹技術をすべて自社開発している点が最大の強みである 43。これにより、ハードウェアとソフトウェアの高度な統合を実現し、独自のライディング体験を提供している。しかし、生産規模の小ささがコスト競争力や収益性の課題となっている。
- Energica: 高性能EVで高い評価を受け、MotoEの初代サプライヤーも務めたが、2024年10月に破産清算を発表した 67。この事例は、優れた技術力を持つだけでは事業を継続できないという厳しい現実を物語っている。市場の需要タイミング、継続的な投資の確保、サプライチェーンマネジメント、そして収益性のあるビジネスモデルの構築といった、事業運営全体の難しさを示す重要な教訓である。
第10章:戦略的インプリケーションと推奨事項
これまでの包括的な分析を統合し、直面する戦略的課題を明確化するとともに、持続的な成長を実現するための具体的な事業戦略を提言する。
今後5~10年で、二輪車業界の勝者と敗者を分ける決定的要因
業界の地殻変動を乗り越え、未来の勝者となるために不可欠な要因は、もはや従来の延長線上には存在しない。以下の4つのケイパビリティが、企業の命運を分けることになるだろう。
- ソフトウェア開発能力の内製化:
ハードウェアの性能差が縮小しコモディティ化が進む中で、競争優位の源泉はソフトウェアへと完全に移行する。車両の性能を最適化し、独自の顧客体験を創出し、OTA(Over-the-Air)アップデートによって購入後も継続的に価値を提供する能力は、外部委託では獲得できない。車両OS、コネクテッドサービス、AIアルゴリズムといった中核技術を自社で開発・保有できるかどうかが、製品の差別化と将来の収益性を決定づける。 - バッテリー戦略の巧拙:
EVの性能、コスト、供給安定性を左右するバッテリーをいかにマネジメントするかは、最重要の経営課題である。これには、①重要鉱物の確保からセル生産、パック化、リユース・リサイクルに至るバリューチェーン全体への戦略的関与、②有力なバッテリーメーカーとの強固なアライアンス構築、③全固体電池などの次世代技術へのアクセスを確保するための研究開発投資、という3つの側面が含まれる。この「バッテリー戦争」を制するものが、EV時代の主導権を握る。 - 二極化市場への対応力(ポートフォリオとブランドの最適化):
先進国の「体験価値」を求める高付加価値市場と、新興国の「実用価値」を求めるボリューム市場。この両極端の市場で同時に成功を収めるには、それぞれのKBF(Key Buying Factor)に最適化された製品ポートフォリオ、価格戦略、そしてブランド・アーキテクチャを構築・運営できる高度な経営能力が求められる。単一のブランド、単一の価値観でグローバル市場を席巻できた時代は終わった。 - 変革のスピードと組織のアジリティ:
最も重要かつ困難なのが、この要因である。技術と市場が非連続的に変化する環境では、完璧な計画を立てて実行する伝統的な大企業のやり方は通用しない。市場のシグナルをいち早く察知し、迅速に意思決定を行い、小さな失敗を許容しながら素早く学習・方向修正できる、アジャイルな組織文化とプロセスを構築できるかどうかが、企業の生存確率を左右する。イタリアの高性能EVメーカーEnergicaの破産は、優れた技術を持っていても、市場の変化のスピードと経営のアジリティが伴わなければ敗北するという、痛烈な教訓である 67。
捉えるべき機会と備えるべき脅威
機会 (Opportunities) | 脅威 (Threats) | |
---|---|---|
市場/顧客 | 1. 新規顧客層の開拓: ARAS/AIによる安全性向上を訴求し、「バイクは危険」という認識を持つ層(若者、女性、高齢者)を新たな市場として開拓。 | 1. ICE市場の縮小: 既存事業の根幹であるICE市場が、規制強化とEVシフトにより確実に縮小。既存の資産(工場、人材、技術)が陳腐化・負債化するリスク。 |
技術/製品 | 2. サービス事業への展開: コネクティビティを基盤に、MaaS(シェアリング、サブスク)、テレマティクス保険、予知保全といったリカーリング収益モデルを確立。 | 2. 新興EVメーカーによるディスラプション: 特に都市型コミューター市場において、低コストとスピードを武器とする新興メーカーに市場を侵食される脅威。 |
競争/業界 | 3. 新興国でのプレミアム化: 新興国の中間層・富裕層の拡大に伴い、実用コミューターからのアップセル需要を捉え、高収益なプレミアムセグメントを育成。 | 3. バリューチェーンにおける主導権の喪失: バッテリーセルメーカーや巨大IT企業(OSプラットフォーマー)が業界の主導権を握り、二輪車メーカーが利益率の低いハードウェア組立業者へと転落するリスク。 |
戦略的オプションの提示と評価
取りうる戦略的選択肢は、大きく4つに分類できる。
- Option A: 全方位・漸進的変革(Honda型アプローチ)
- 内容: ICEの改良、EV、HEV、水素、合成燃料など、あらゆる技術的可能性を維持し、既存の組織体制の中で徐々にEVへのリソース配分を増やしていく。
- メリット: あらゆる未来シナリオに対応できる柔軟性、技術的リスクの分散。
- デメリット: 経営資源が分散し、どの分野でも決定的な優位を築けない「器用貧乏」に陥るリスク。既存組織の慣性が変革のスピードを阻害し、意思決定が遅延する。
- 成功確率: 中。業界リーダーの座は維持できるかもしれないが、破壊的イノベーションの創出は困難。
- Option B: 事業スピンオフ・急進的変革(Harley-Davidson/LiveWire型アプローチ)
- 内容: EV事業を本体から切り出し、別会社として独立させる。独立したEV事業は、独自のミッション、組織文化、意思決定プロセス、外部からの資金調達によって、ベンチャー企業のようなスピードとアジリティを追求する。本体は、キャッシュカウであるICE事業の収益最大化に集中する。
- メリット: EV事業の意思決定スピードが飛躍的に向上。既存の組織文化との衝突を回避。外部資本の活用による大規模な成長投資が可能。優秀なソフトウェア人材を惹きつけやすい。
- デメリット: ブランド資産の分断リスク。短期的には管理コストが増大。スピンオフした事業が成功する保証はない。
- 成功確率: 高(ただし、実行の難易度も極めて高い)。
- Option C: 買収による時間短縮(M&A主導型アプローチ)
- 内容: EVやソフトウェアの分野で有望な技術や人材を持つスタートアップ企業を買収し、開発期間を短縮(Time-to-Market)する。
- メリット: 不足している技術やケイパビリティを迅速に獲得できる可能性がある。
- デメリット: 有望な企業の買収には高額なコストがかかる。買収後の統合(PMI)がうまくいかず、企業文化の衝突によって買収した企業の強みが失われるリスクが非常に高い。
- 成功確率: 低〜中。買収はあくまで補完的手段であり、戦略の主軸とするにはリスクが高い。
- Option D: ヘリテージ特化(ニッチ・プレミアム型アプローチ)
- 内容: 将来の成長が見込めるボリューム市場やEV市場を戦略的に放棄し、自社の強みであるICE搭載の高級・趣味バイクに特化する。ブランドの希少価値を高め、高収益ビジネスモデルを追求する。
- メリット: 既存の強みとブランド資産を最大限に活用できる。熾烈な価格競争から距離を置くことができる。
- デメリット: 市場全体の成長機会を完全に逸失する。将来的なさらなる規制強化によって、事業継続そのものが困難になるリスクを抱える。
- 成功確率: 中(ニッチ市場のプレイヤーとして生き残る確率)。
最終提言と実行に向けたアクションプラン
最終提言:Option B「事業スピンオフ・急進的変革」の採用
提言理由:
二輪車業界が直面しているのは、過去の延長線上にはない「非連続的」な変革である。この環境下では、既存の巨大な組織構造と成功体験に根差した文化の中で漸進的な変化を目指すOption Aでは、身軽でアジャイルな新興EVメーカーのスピードに対抗することはできない。勝敗を分ける決定的要因が「組織のアジリティ」である以上、変革を加速させるための構造的な手を打つ必要がある。
EV事業を「出島」として本体から切り離し、独立させるOption Bは、この課題に対する最も現実的かつ効果的な戦略である。これにより、EV事業は失敗を恐れずに新たな挑戦ができるアジャイルな文化をゼロから醸成し、従来の給与体系や人事制度に縛られずにトップクラスのソフトウェア人材を惹きつけ、市場の変化に対して迅速な意思決定を下すことが可能になる。一方、本体はキャッシュカウであるICE事業で稼いだ潤沢な利益を、独立したEV事業の成長投資に戦略的に振り向けるという役割分担が明確になる。これは、企業の伝統と革新を両立させ、未来を勝ち抜くための、痛みを伴うが不可欠な外科手術である。
実行に向けたアクションプラン概要
この戦略を実行するため、以下の3段階のアクションプランを提案する。
- Phase 1:準備・計画フェーズ(初年度)
- 目的: EV事業のカーブアウト(切り出し)に向けた全社的なコンセンサスの形成と、実行体制の構築。
- 主要アクション:
- CEO直轄の「変革推進室(Transformation Management Office)」を設置。
- 新設するEV事業会社のリーダー(CEO候補)を内外から探索・任命。
- カーブアウトする事業範囲、人材、資産を特定し、事業計画、資本政策を策定。
- 外部からCTO(最高技術責任者)候補、ソフトウェアアーキテクトなどのキー人材の採用を開始。
- KPI: 事業計画の取締役会承認、主要リーダーの任命完了。
- Phase 2:設立・始動フェーズ(2~3年目)
- 目的: EV事業会社を法的に設立し、第一弾製品を市場に投入することで、事業を本格的に始動させる。
- 主要アクション:
- EV事業会社を設立。本体とは別の場所に、独自の開発拠点と小規模なパイロット工場を設置。
- 第一弾製品として、市場が確立されつつある都市型電動コミューターを戦略的価格で市場投入。
- アライアンス戦略に基づき、有力なバッテリーサプライヤーとの共同開発契約や、ソフトウェア企業との技術提携を具体化。
- KPI: 新会社設立、第一弾製品の市場投入、目標販売台数の達成、主要アライアンス契約の締結。
- Phase 3:成長・拡大フェーズ(4~5年目)
- 目的: 製品ラインナップを拡充し、グローバル市場への展開を加速させる。独自の販売・サービスチャネルを構築する。
- 主要アクション:
- ミドルクラスのFUN-EVなど、製品ラインナップを拡充。
- 欧州、東南アジアなど、重点グローバル市場への展開を開始。
- 本体のディーラー網の一部をEV販売・サービス拠点として活用しつつ、独自のオンライン販売チャネルと都市型体験ストアを構築。
- コネクテッドサービスによる売上を事業計画に組み込む。
- KPI: グローバル市場でのEV販売台数、市場シェア、ソフトウェア・サービス売上比率、新会社の人材採用数と定着率。
- 成功のための必須要件:
- 経営トップの強力なコミットメント: この変革は、短期的な収益の悪化や既存事業部門からの反発を招く可能性がある。経営トップが、短期的な痛みを乗り越えてでも変革を断行するという揺るぎない意志を社内外に示し続けることが不可欠である。
- 潤沢な初期投資: 新会社の設立、人材採用、研究開発には、初期段階でXX億ドル規模の戦略的投資が必要となる。
- 文化の醸成: 新会社が、本体とは異なる「スピードと挑戦」を是とする独自の文化を築けるよう、人事制度や評価体系をゼロベースで設計する。
第11章:付録
参考文献・引用データ・参考ウェブサイト
本レポートの作成にあたり、以下の情報源を参照した。
専門用語解説
- ABS (Anti-lock Brake System): アンチロック・ブレーキ・システム。急ブレーキ時にタイヤのロックを防ぎ、車両の安定性と操舵性を維持する安全装置。
- ADAS (Advanced Driver-Assistance Systems): 先進運転支援システム。カメラやレーダーなどのセンサーを用いて周囲の状況を監視し、ドライバーに警告したり、車両の操作を補助したりするシステムの総称。
- ARAS (Advanced Rider-Assistance Systems): 先進ライダー支援システム。ADASの二輪車版。
- CAGR (Compound Annual Growth Rate): 年平均成長率。複数年にわたる成長率を、幾何平均を用いて1年あたりの成長率に換算したもの。
- ICE (Internal Combustion Engine): 内燃機関。ガソリンなどの燃料をシリンダー内で燃焼させ、そのエネルギーを動力に変換するエンジン。
- IMU (Inertial Measurement Unit): 慣性計測装置。加速度センサーとジャイロセンサーを組み合わせ、物体の角速度や加速度を検出する装置。二輪車では車体の傾きや動きを検知し、ABSやTCSの高度化に利用される。
- KBF (Key Buying Factor): 重要購買決定要因。顧客が製品やサービスを購入する際に、特に重視する要因。
- LCA (Life Cycle Assessment): ライフサイクルアセスメント。製品やサービスが、その原料調達から製造、使用、廃棄・リサイクルに至るまでの全生涯にわたって、環境にどのような影響を与えるかを定量的に評価する手法。
- MaaS (Mobility as a Service): マース。様々な交通手段を、ITを用いて一つのサービスとして統合し、利用者に提供する概念。
- TCS (Traction Control System): トラクションコントロールシステム。発進・加速時に駆動輪の空転を検知し、エンジンの出力などを制御してスリップを防ぐ装置。
- V2X (Vehicle-to-Everything): 車両と様々なもの(他の車両、歩行者、交通インフラなど)が通信する技術の総称。
- VRIO (Value, Rarity, Inimitability, Organization): 企業の経営資源が持続的な競争優位の源泉となるかを分析するためのフレームワーク。
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