信頼の再構築:AIとトークン化が駆動するブロックチェーン経済圏の産業実装戦略
第1章:エグゼ-ティブサマリー
本レポートの目的と調査範囲
本レポートは、技術的成熟と産業実装の岐路に立つブロックチェーン業界における新たな事業機会を特定し、経営層への具体的な戦略提言を行うことを目的とする。ブロックチェーン技術は、暗号資産の投機的利用という初期段階を終え、実世界における課題解決と新たな価値創造を実現する「産業インフラ」としての役割を担うフェーズへと移行している。この転換期において、市場の構造、競争環境、主要トレンドを深く理解し、持続的な競争優位を築くための戦略を策定することが急務である。
本調査の対象範囲は、ブロックチェーン経済圏を構成する主要なレイヤーを包括的に網羅する。具体的には、EthereumやSolanaに代表されるレイヤー1(L1)およびスケーリング技術であるレイヤー2(L2)などの基盤技術、Hyperledger FabricやR3 Cordaといったエンタープライズ向けソリューション、クラウド事業者が提供するBlockchain as a Service(BaaS)、そして金融、サプライチェーン管理、デジタルアイデンティティといった主要なアプリケーション市場とする。
ブロックチェーン業界の現状と将来性に関する最も重要な結論
本分析を通じて導き出された最も重要な結論は以下の通りである。
- 市場のフェーズシフト:投機から実用価値(Utility)へ
ブロックチェーン市場は、投機的価値を追求するフェーズから、現実世界の課題を解決し、明確な投資対効果(ROI)を生み出す実用価値を追求する「産業実装フェーズ」へと明確に移行している。市場の勝敗を分ける決定要因は、もはやプロトコルの技術的優位性(例:秒間トランザクション数)そのものではなく、特定の産業課題を解決する「ソリューション提供能力」と、開発者やユーザー、パートナー企業を巻き込む「エコシステム形成能力」へとシフトしている。 - 4つのメガトレンドによる価値創造の加速
今後3~5年の市場成長と価値創造は、特に4つのメガトレンドによって牽引される。これらは単独の技術ではなく、相互に連携し、新たなビジネスモデルを創出する。- 現実資産のトークン化(RWA): 不動産や債券などの伝統的資産がブロックチェーン上で流通し、金融市場の流動性と効率性を根本から変革する。
- 分散型物理インフラ(DePIN): トークンインセンティブを用いて、通信やエネルギーなどの物理インフラをボトムアップで構築する新たなモデルが台頭する。
- 分散型ID(DID): 個人が自らのアイデンティティを管理・制御する時代が到来し、プライバシー保護とシームレスなユーザー体験を両立させる新サービスが生まれる。
- AIとの融合: AIの意思決定プロセスやデータの真正性をブロックチェーンで担保することで、「信頼できるAI」の社会実装を加速させる。
- 「ハイブリッド型アプローチ」の主流化
「パブリックチェーン vs. プライベート/コンソーシアムチェーン」という二元論的な対立は終焉を迎えつつある。大手金融機関やグローバル企業は、プライベートチェーンが提供する管理可能性とコンプライアンス、そしてパブリックチェーンが提供するグローバルな流動性と相互運用性の双方を享受するため、「ハイブリッド型アプローチ」を積極的に模索している。企業の機密データはプライベートな環境で管理しつつ、資産の移転や価値の決済はパブリックなネットワークを活用するアーキテクチャが主流となり、この二つの世界を繋ぐインフラ・サービス事業に大きな機会が存在する。
分析から導き出された、事業戦略上の主要な推奨事項
上記の分析に基づき、ブロックチェーン市場で成功を収めるために、以下の3つの戦略的アクションを推奨する。
- RWAトークン化プラットフォーム事業への参入:
金融資産(特にプライベートクレジットや不動産)に特化した、コンプライアンス遵守型のトークン発行・管理・流通プラットフォームを構築する。大手金融機関や資産運用会社との提携を軸に、規制に準拠した信頼性の高いエコシステムを形成し、黎明期にあるRWA市場での主導権を確立する。 - 産業特化型ハイブリッド・ソリューションの提供:
サプライチェーンやヘルスケアなど、自社の既存事業とシナジーが見込める特定産業の課題解決に焦点を当てたソリューションを開発する。企業の機密データはプライベート/コンソーシアムチェーンで管理し、資産移転や検証可能性の担保にはパブリックチェーン(L2)を連携させるアーキテクチャを標準化し、インテグレーターとしての地位を築く。 - 「AI + ブロックチェーン」による信頼性検証サービス事業の創出:
AIの社会実装が進む中で不可避となる「説明可能性」と「信頼性」に対する市場ニーズに応えるため、AIの学習データや意思決定プロセス、生成物の真正性をブロックチェーンで証明する「AI監査・トレーサビリティ」サービスを開発する。これは、将来的にすべてのAI活用企業が顧客となりうる、極めて大きな潜在市場を持つ事業領域である。
第2章:市場概観(Market Overview)
グローバルおよび日本のブロックチェーン市場規模の推移と今後の予測(2020年~2030年)
ブロックチェーン市場の規模を評価する際、二つの異なる指標が存在することを理解することが戦略策定の第一歩となる。一つは企業や政府がブロックチェーン技術や関連サービスに投じる「支出額」、もう一つはブロックチェーン技術の活用によって生み出される「事業価値総額」である。この二つの指標は市場の異なる側面を捉えており、その予測値には大きな乖離が存在する。
グローバル市場規模
- 支出額ベースの市場予測: この指標は、企業がBaaS、コンサルティング、システムインテグレーション(SI)などに直接支払う金額を反映しており、ITサービス市場としての規模感を示す。複数の市場調査会社が、この支出額ベースの市場が今後5年間で年平均成長率(CAGR)60%を超える急成長を遂げると予測している。
- MarketsandMarketsは、2025年の329.9億ドルから2030年には3,934.5億ドルへ、CAGR 64.2%で成長すると予測している 1。
- Fortune Business Insightsも同様に、2025年の311.8億ドルから2032年には3,934.2億ドルへ、CAGR 43.65%での成長を見込んでいる 3。これらの予測は、企業によるブロックチェーン技術への直接投資が今後本格化することを示唆している。
- 事業価値ベースの市場予測: この指標は、ブロックチェーン活用による業務効率化、コスト削減、新規事業創出など、技術がもたらす経済的インパクトの総和を示す。
- Gartnerは、ブロックチェーンが生み出す事業価値が2025年までに1,760億ドル、2030年までに3.1兆ドルに達すると予測している 4。
- IHS Markitも、2030年までに2兆ドル規模の市場になるとの強気な見通しを示している 6。支出額ベースの予測と比較して桁違いに大きいこれらの数字は、ブロックチェーンが単なるITツールではなく、ビジネスモデルそのものを変革し、巨大な経済的価値を創出する潜在能力を持つことを物語っている。
調査会社 | 予測対象 | 2025年予測値 (億ドル) | 2030年予測値 (億ドル) | CAGR (%) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
MarketsandMarkets | 支出額 | 330 | 3,935 | 64.2 | BaaS、プラットフォーム、サービスへの直接投資額 1 |
Grand View Research | 支出額 | 313 | 14,315 | 90.1 | (2025-2030) 7 |
Fortune Business Insights | 支出額 | 312 | 3,934 (2032年) | 43.7 | (2025-2032) 3 |
Gartner | 事業価値 | 1,760 | 31,000 | – | ブロックチェーンによる経済的インパクトの総額 4 |
IHS Markit | 事業価値 | – | 20,000 | – | Gartnerと同様に事業価値を評価 6 |
日本市場規模
日本市場は、グローバル市場の中でも特に高い成長ポテンシャルを秘めている。Grand View Researchによると、日本のブロックチェーン技術市場は2022年の4.99億ドルから2030年には747.7億ドルへと、CAGR 88.8%という驚異的なペースで成長すると予測されている 9。この背景には、政府によるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進政策、大手企業によるサプライチェーン改革や金融分野での実証実験の活発化、そして規制環境の整備に向けた前向きな動きがある。
ベンチャーキャピタル(VC)投資動向
VCによる投資動向は、市場の将来性に対する先行指標となる。一時的な市場の落ち込みを経て、ブロックチェーンおよび暗号資産スタートアップへのVC投資は回復基調にある。2023年の約101億ドルから2024年には136億ドルへと増加し、2025年第1四半期だけで49億ドルに達した。投資分野としては、Web3、DeFi、そしてインフラ関連が中心となっている 1。この資金流入の再開は、市場が投機的な熱狂から実用的な技術開発へと焦点を移し、新たな成長サイクルに入ったことを示唆している。
市場セグメンテーション分析
ブロックチェーン市場は、複数の軸でセグメント化することで、その構造をより深く理解できる。
- タイプ別:
- プライベートチェーン: 企業がデータプライバシーやアクセス管理を重視するため、エンタープライズ領域で最大の市場シェアを占めている 3。
- パブリックチェーン: 透明性やパーミッションレスな参加が求められる用途で需要がある 1。
- コンソーシアムチェーン: 複数の組織が共同で運営するモデルで、業界横断的な連携に適している 1。
- ハイブリッドチェーン: プライベートの管理性とパブリックの透明性を両立させるモデルであり、最も高い成長率が予測されている 3。これは、企業が機密性を保ちつつ、外部との相互運用性を確保したいというニーズの表れである。
- 技術レイヤー別:
- L1(基盤層)/インフラ&プロトコル: 現在、市場の基盤を形成し、最大のシェアを占めている 7。
- L2(スケーリング層)、ミドルウェア、アプリケーション: 技術基盤が成熟するにつれて、価値創造の中心は実用的なアプリケーションへとシフトしている。アプリケーションプロバイダー層とミドルウェア層は、今後最も高い成長率を示すと予測されている 1。これは、市場が「インフラ構築」から「インフラ活用」のフェーズへと移行していることを明確に示している。
- BaaS (Blockchain as a Service): 企業がブロックチェーンを導入する際の主要なエントリーポイントとなっており、2024年時点で市場の54%を占める最大のセグメントである 3。クラウド事業者が提供するマネージドサービスにより、企業はインフラの複雑な管理から解放される。
- 産業別ユースケース:
- BFSI(銀行・金融・保険): 早期から導入が進み、取引量の多さから最大の市場シェアを維持している 1。
- サプライチェーン管理: 製品のトレーサビリティや透明性向上への要求から、急速に導入が拡大している 7。
- ヘルスケア、エネルギー&ユーティリティ: データの機密性保護やP2Pでのエネルギー取引といった新たなユースケースにより、最も高い成長率が期待されるセグメントである 3。
- ビジネスモデル別:
レイヤーごとに多様な収益モデルが確立されている。パブリックチェーンではトランザクション手数料、プライベートプラットフォームではライセンス料、クラウド事業者ではBaaS利用料、SIerではコンサルティングやシステム開発料、そしてオンチェーン分析企業ではデータサービス料が主な収益源となっている。
主要な市場成長ドライバーと阻害要因
- 成長ドライバー:
- 企業のDX推進と効率化要求: 多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを推進する中で、ブロックチェーンはプロセスの簡素化、透明性、セキュリティ、不変性を提供し、コスト削減と効率化を実現する強力なツールとして認識されている 1。
- 透明性・トレーサビリティへの需要: サプライチェーンにおける製品の来歴追跡や、ESG(環境・社会・ガバナンス)活動の証明など、ステークホルダーからの透明性に対する要求の高まりが導入を後押ししている 7。
- 規制整備の進展: 米国のGENIUS Act(ステーブルコイン規制法案)や欧州のMiCA(暗号資産市場規制)など、主要国での規制の枠組みが明確化されることで、これまで参入をためらっていた機関投資家や大企業が安心して市場に参入できる環境が整いつつある 1。
- AI、IoTとの技術融合: ブロックチェーンは、IoTデバイスから収集されるデータの完全性を保証し、AIの意思決定プロセスを記録・監査するための基盤となる。これらの技術融合が、新たなユースケースとビジネスチャンスを生み出している 1。
- 阻害要因:
- 規制の不確実性と断片化: 規制整備は進展しているものの、国や地域によってアプローチが異なり、グローバルな事業展開における法的な予見性が依然として低い 1。
- 既存システムとの連携コストと複雑性: 多くの企業にとって、ブロックチェーンを既存の基幹システムと連携させることは技術的にもコスト的にも大きな負担となる 1。
- 業界標準の欠如と相互運用性の課題: 異なるブロックチェーン基盤間でのデータや資産の移動が困難であり、業界全体としてのネットワーク効果が限定されている 1。
- 専門人材の深刻な不足: スマートコントラクト開発者や暗号技術者など、高度な専門知識を持つ人材が世界的に不足しており、人材獲得競争が激化していることがプロジェクト推進の大きなボトルネックとなっている 1。
- PoCから本番稼働への移行障壁: 多くのプロジェクトが概念実証(PoC)段階で停滞する「PoCの死の谷」に陥っている。その主な原因は、技術的課題よりも、ROIの不明確さや、コンソーシアム参加企業間の合意形成の困難さといった組織的・ビジネス的な課題にある 23。
業界の主要KPIベンチマーク分析
業界の健全性と競争動向を測るため、主要なKPIをベンチマーク分析する。
- 主要L1チェーンのオンチェーンデータ:
L1プロトコルの活動レベルは、エコシステムの活力を示す重要な指標である。- Ethereum: 日間アクティブアドレス数は約65万件で安定的に推移しており、強固なユーザー基盤を持つ 25。トランザクション性能(TPS)自体はL1では低いが、その役割はL2のセキュリティを担保するセトルメントレイヤーへと変化している。
- Solana: 秒間3,000トランザクションを超える高いTPSを誇り、週間アクティブアドレス数は1,000万を超え、Ethereumを上回る活況を呈している 28。これは、低コスト・高速なトランザクションを求めるリテールユーザーやアプリケーションを惹きつけていることを示している。
- Avalanche: 日間アクティブアドレス数は約4.8万件、トランザクション数は176万件と、一定の活動レベルを維持している 31。
- 開発者数:
開発者数はエコシステムの将来の成長を占う最も重要な先行指標である。Electric Capitalのレポートによると、Ethereumエコシステムが依然として最大の開発者数(6,244人)を擁しているが、2024年にはSolanaが新規開発者獲得数でトップ(7,625人)に立った 33。これは、開発者の関心が、安定性と成熟度のEthereumから、パフォーマンスと新しい可能性を秘めたSolanaへと一部シフトしていることを示唆している。 - エンタープライズ導入:
エンタープライズ領域では、PoCから本番稼働への移行率が極めて低いことが課題となっている。Gartnerなどの調査では、この移行率がわずか5%程度に留まるとの指摘もあり、多くのプロジェクトが実用化に至らずに頓挫している現状がうかがえる 24。 - BaaSプロバイダー:
BaaS市場は、クラウドインフラ市場のシェア構造を色濃く反映している。Synergy Research Groupによると、2025年第2四半期のクラウドインフラ市場シェアは、AWSが30%、Microsoft Azureが20%、Google Cloudが13%となっており、この3社で市場の6割以上を占める寡占状態にある 35。この支配的な地位が、BaaS市場における彼らの交渉力と影響力の源泉となっている。
プロトコル | TPS (秒間トランザクション数) | 週間アクティブアドレス数 | 開発者数 (2024年) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
Ethereum | ~ (L1) | 約250万 | 6,244 | 最大のエコシステム、L2によるスケーリングが主流 25 |
Solana | 約1,030万 | 3,201 | 高速・低コスト、リテール・ゲーム用途で急成長 28 | |
Avalanche | – | 約26万 | – | サブネットによる高いカスタマイズ性 31 |
市場の二重構造、すなわち「技術への支出市場」と「技術活用による価値創造市場」の存在は、戦略策定において極めて重要な視点を提供する。調査会社による市場規模予測の大きな乖離は、単なる測定誤差ではなく、この二重構造を反映したものである。企業は自社がどちらの市場で競争するのか、あるいは両市場をどのように繋ぐのかを明確に定義する必要がある。ITサービスプロバイダーであれば前者、事業会社であれば後者が主戦場となるだろう。
また、主要L1プロトコルのKPIトレンドは、市場が単純な性能競争の時代を終え、役割分化の時代に入ったことを示している。Solanaが高いTPSとアクティブユーザー数を背景に、高頻度取引を要するアプリケーションの実行基盤としての地位を固める一方、EthereumはL1をグローバルな「信頼の基盤」、すなわち決済・セトルメントレイヤーとして位置づけ、実際のアプリケーション実行はL2エコシステムに委ねる戦略を明確にしている。Ethereum開発者の半数以上がL2で活動しているという事実は、この価値集約のシフトを裏付けている 33。したがって、今後のL1の競争力を評価する上では、単体のTPSではなく、どのようなL2エコシステムを惹きつけ、どのような「信頼」を提供しているかという質的な側面がより重要となる。
第3章:外部環境分析(PESTLE Analysis)
ブロックチェーン業界は、政治、経済、社会、技術、法規制、環境といった多様なマクロ環境要因から強い影響を受ける。PESTLEフレームワークを用いてこれらの要因を分析し、事業戦略上の機会と脅威を特定する。
政治(Politics)
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発動向:
世界各国の中央銀行がCBDCの研究・開発を加速させている。2025年初頭時点で、114カ国が何らかの形でCBDCを検討しており、そのうち69カ国は開発やパイロットプログラムといった先進段階にある 39。特に中国はデジタル人民元(e-CNY)の実証実験を深め、公共交通機関での決済など市民生活への実装を進めている 40。G20諸国のうち19カ国が検討段階にあることは、CBDCが将来の国際金融システムの基盤となる可能性を示唆している 39。So What?: CBDCの導入は、民間のステーブルコインや決済システムとの競合・協調関係を生み出す。CBDCと相互運用可能な技術標準を採用するブロックチェーンプラットフォームは、将来的に政府調達や公共サービスの領域で優位に立つ可能性がある。また、CBDCを扱うためのインフラやアプリケーション開発は、新たなビジネスチャンスとなる。 - データ主権(Data Sovereignty)と越境データ規制:
国家安全保障や個人情報保護の観点から、自国のデータを国内に留め置こうとする「データ主権」の動きが世界的に強まっている 41。EUのGDPR(一般データ保護規則)は、EU市民の個人データをEU域外へ移転する際に厳格な要件を課しており、これが事実上のグローバルスタンダードとなりつつある 42。So What?: ノードが世界中に分散し、データが国境を越えて複製されるパブリックブロックチェーンのアーキテクチャは、データ主権の要請と根本的に対立する可能性がある。この規制動向は、特定の国や地域内にノードを限定したプライベート/コンソーシアムチェーンの採用を後押しする。同時に、これらの閉じたネットワークとグローバルなパブリックネットワークを安全に接続する「ハイブリッド型アーキテクチャ」やクロスチェーン技術への需要を高め、新たなインフラビジネスの機会を創出する。
経済(Economy)
- 世界経済の不確実性とIT投資:
世界経済の不確実性や景気後退懸念は、企業のIT投資、特にブロックチェーンのような先行投資分野への支出を抑制する圧力となる 14。しかし、見方を変えれば、経済が不透明な時期こそ、企業はコスト削減や業務効率化へのインセンティブを強く持つ。ブロックチェーンがサプライチェーンの最適化や仲介コストの削減といった明確なROIを提供できる場合、不況下でも投資が正当化されうる 14。So What?: 景気変動に左右されにくい事業を構築するためには、短期的に明確なコスト削減効果を示せるユースケース(例:貿易金融の書類手続き自動化、サプライチェーンの在庫管理最適化)に焦点を当てたソリューション提供が重要となる。 - インフレ・金利変動とRWA(現実資産のトークン化):
インフレや中央銀行の金融政策に伴う金利の変動は、トークン化された資産、特に金利に連動するRWAの価値と魅力に直接的な影響を与える 43。高金利環境下では、米国債などの安全資産に連動し、安定した利回りを提供するトークン化された金融商品(例:BlackRockのBUIDLファンド)への需要が高まる 43。So What?: RWAは、暗号資産市場のボラティリティからの逃避先として、またDeFi(分散型金融)プロトコルにおける安定した担保資産として、エコシステム内で重要な役割を担うようになる。金利環境の変化に応じて、魅力的な利回りを提供するRWA商品を組成・提供するビジネスは、大きな成長機会を持つ。
社会(Society)
- 中央集権型プラットフォームへの不信感:
大手テック企業による個人データの独占的な利用や、相次ぐデータ漏洩事件により、中央集権型のプラットフォームに対する社会的な不信感が高まっている。調査によれば、消費者の82%がデータ利用への懸念から特定のブランドの利用を中止した経験がある 45。So What?: この社会的な潮流は、ユーザーが自身のデータを自らの管理下に置き、開示先を選択できる「自己主権型アイデンティティ(Self-Sovereign Identity, SSI)」や「分散型ID(DID)」への強い需要を喚起する 41。DIDは、次世代のデジタル社会における個人認証の基盤インフラとなる可能性を秘めており、関連サービス市場は急拡大が見込まれる。 - サプライチェーンの透明性とサステナビリティへの要求:
消費者や投資家は、製品がどこで、どのように作られたかという透明性や、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを、購買や投資の判断基準としてますます重視するようになっている。ある調査では、消費者の55%がサステナブルな製品に対してより多く支払う意思があることを示している 50。So What?: ブロックチェーンは、製品の原材料から消費者に届くまでの全工程を追跡し、改ざん不可能な記録を提供することで、この要求に応えるための最適なツールである 12。特に、食品、高級品、医薬品などの分野で、トレーサビリティを確保するソリューションは強力な競争優位性をもたらす。
技術(Technology)
- コンセンサスアルゴリズムの進化:
Ethereumが採用したProof of Stake(PoS)への移行(The Merge)は、エネルギー消費量を99.95%以上削減するという劇的な成果を上げた 51。これにより、ブロックチェーンの環境負荷に対する社会的な批判が大幅に緩和され、ESGを重視する企業にとっての導入障壁が大きく低下した。So What?: ブロックチェーン技術は、もはや環境問題の観点から敬遠される対象ではなく、サステナビリティ目標の達成に貢献するツールとして位置づけられるようになった。カーボンクレジットの取引や再生可能エネルギーのトレーサビリティなど、環境分野での新たなユースケース創出が加速する。 - インターオペラビリティ(相互運用性)技術の成熟:
CosmosのIBC(Inter-Blockchain Communication)やPolkadotのXCM(Cross-Consensus Message Format)といったクロスチェーン技術が成熟し、これまでサイロ化していた個別のブロックチェーンエコシステムが相互に連携できるようになった 53。IBCは既に117以上のチェーンを接続し、月間150万人以上のアクティブユーザーを抱える広大なネットワークを形成している 55。So What?: これにより、開発者は単一のチェーンの制約に縛られることなく、複数のチェーンの長所を組み合わせた新しいタイプのアプリケーション(Omnichain Applications)を構築できるようになった。将来のビジネスは、特定のチェーン上だけでなく、複数のチェーンにまたがる形で展開されることが標準となる。 - ゼロ知識証明(ZKP)の実用化:
ZKPは、ある情報(例:パスワード)そのものを明かすことなく、その情報を知っているという事実だけを証明できる暗号技術である。この技術は、プライバシー保護とスケーラビリティ向上を両立させる切り札として注目されている 56。So What?: ZKPは、企業が機密性の高いデータを扱うブロックチェーンアプリケーションを構築する上での最大のブレークスルーとなる。例えば、金融機関は顧客の具体的な収入額を知ることなく、融資基準を満たしていることを証明できる 57。また、ヘルスケア分野では、個々の患者データを秘匿したまま、集団としての医療データの分析が可能になる。プライバシーが重視されるあらゆる産業で、ZKPは新たなユースケースを切り開く。 - AIとの融合:
AIとブロックチェーンの融合は、双方の弱点を補完し、新たな価値を生み出す。AIの意思決定プロセス(どのデータで学習し、どのようなロジックで結論を出したか)をブロックチェーンに記録することで、AIの「ブラックボックス問題」を緩和し、その判断の「説明可能性」と「監査可能性」を担保できる 58。So What?: AIの社会実装が加速するほど、その判断の信頼性をどう確保するかが重大な課題となる。「AI監査・トレーサビリティ」は、規制当局、企業、消費者にとって不可欠なサービスとなり、巨大な新市場を形成する可能性がある。また、AIが生成したデジタルコンテンツの真正性をブロックチェーンで証明し、偽情報やディープフェイク対策に応用するビジネスも有望である。
法規制(Legal)
- スマートコントラクトの法的有効性:
米国の一部の州(ワイオミング州、テキサス州)や、日本、シンガポールなどの国々では、スマートコントラクトを法的に有効な契約として認める法整備が進んでいる 60。これにより、スマートコントラクトを用いたビジネスの法的予見性が高まっている。So What?: スマートコントラクトの法的地位が確立されることで、不動産取引、保険金支払い、貿易金融など、これまで人手を介していた契約執行プロセスを自動化するビジネスが加速する。ただし、国際的な取引においては、準拠法の問題など、依然として複雑な法的課題が残る。 - デジタル資産の所有権と規制:
デジタル資産(暗号資産、NFT、セキュリティトークン)の法的な位置づけや所有権の定義が、各国で急速に進められている。日本では、2025年に金融庁が「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」を設置し、暗号資産を単なる決済手段から「金融投資商品」へと位置づけを見直す議論を本格化させた 62。これにより、税制(申告分離課税への変更)や暗号資産ETFの解禁といった、機関投資家や個人投資家の参入を促す制度改革が期待される 64。So What?: 規制の明確化は、これまで法的な不確実性を理由に参入をためらっていた大手金融機関や機関投資家にとって最大の追い風となる。これにより、コンプライアンスが確保されたRWAトークン化や、セキュリティトークン(STO)市場が本格的に拡大するフェーズに入る。 - プライバシー(GDPR)とオンチェーンデータの関係性:
GDPRが定める「忘れられる権利(Right to be Forgotten)」は、一度記録されると変更が極めて困難なブロックチェーンの「不変性(Immutability)」の原則と根本的に対立する 66。個人データをブロックチェーン上に直接記録することは、重大なコンプライアンスリスクを伴う。So What?: この課題を回避するため、個人データそのものはオフチェーン(ブロックチェーン外)のデータベースに保存し、そのデータへのアクセス権やハッシュ値のみをオンチェーンで管理するアーキテクチャが標準となる。また、カメレオンハッシュのような、特定の権限を持つ者がデータを後から編集可能にする技術的研究も進められているが、実用化にはまだ課題が多い 66。プライバシー遵守を前提としたシステム設計能力が、ソリューションプロバイダーにとって不可欠な要件となる。
環境(Environment)
- エネルギー消費問題の解決と社会的な受容性の向上:
前述の通り、PoSやL2技術の普及により、ブロックチェーンのエネルギー消費問題は大幅に改善された 51。これにより、環境負荷に対する懸念が払拭され、社会的な受容性が高まっている。So What?: 企業は、ブロックチェーン技術の導入が自社のESG目標に反するのではないかという懸念から解放される。むしろ、サプライチェーンの透明化によるサステナビリティ証明や、再生可能エネルギー証書の取引など、ESG目標達成に積極的にブロックチェーンを活用する動きが加速する。
データ主権規制の強化は、一見するとグローバルなパブリックチェーンの思想と矛盾し、その発展の足枷となるように見える。しかし、この規制動向は、市場に新たな構造と機会を生み出す触媒として機能する。企業は、各国の規制を遵守するために、データが地理的に管理されるコンソーシアムチェーンの採用を優先せざるを得なくなる。しかし、コンソーシアムチェーンだけでは、グローバルなビジネスに必要な流動性やオープンなエコシステムとの接続性が欠如してしまう。このジレンマを解決するものこそ、ローカルな規制に準拠したコンソーシアムチェーンと、グローバルなパブリックチェーンを安全に接続する「ハイブリッド・アーキテクチャ」や「クロスチェーン技術」である。ここに、次世代の金融・ビジネスインフラを構築する新たな事業機会が生まれる。
同様に、中央集権型プラットフォームへの不信感とプライバシー規制の強化という二つの社会・法規制トレンドは、相乗効果をもって「分散型ID(DID)」を次世代デジタルインフラの中核へと押し上げる。消費者は大手テック企業によるデータ収集に強い懸念を抱き 45、同時にGDPRのような規制が企業に厳格なデータ管理を求めている 67。この状況下で、企業が大量の顧客個人情報を自社サーバーで保持し続けることは、コンプライアンス違反やデータ漏洩という経営上の重大なリスクを抱え込むことを意味する。分散型IDは、この問題を根本から解決する。ユーザーが自身のID情報を管理し、企業は必要な検証情報(例:「成人であること」の証明)のみを都度受け取るモデルに移行することで、企業は個人情報保持のリスクから解放され、ユーザーはプライバシーを自らの手に取り戻すことができる 49。この双方にとって有益な構造が、2030年に1020億ドル規模へと予測されるDID市場の急成長を牽引する 70。DIDは単なる一アプリケーションではなく、Web3時代の基盤的なインフラとなるだろう。
第4章:業界構造と競争環境の分析(Five Forces Analysis)
ブロックチェーン業界の収益構造と競争の力学をマイケル・ポーターのFive Forcesモデルを用いて分析する。この業界はレイヤーによって競争環境が大きく異なる多層的な構造を持つ。
売り手の交渉力 (Bargaining Power of Suppliers) – 高い
ブロックチェーンエコシステムは、特定の強力なサプライヤーに依存している。
- クラウドインフラプロバイダー:
Blockchain as a Service(BaaS)市場は、実質的にクラウドインフラ市場の延長線上にある。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の大手3社がクラウド市場の60%以上を寡占しており、その支配力はBaaS市場にも及んでいる 35。AWSはAmazon Managed BlockchainでHyperledger FabricとEthereumをサポートし 72、AzureはConsenSysと提携してQuorum Blockchain Serviceを提供 74、GoogleはBlockchain Node Engineを展開している 76。企業がブロックチェーンを導入する際、既存のクラウド環境上でBaaSを利用するのが最も効率的であるため、これらのクラウドジャイアントへの依存度は極めて高く、彼らの価格設定やサービス提供方針が業界に大きな影響を与える。売り手の交渉力は非常に強い。 - 専門人材:
スマートコントラクト言語(Solidity, Rust)、暗号技術、分散システム理論に精通した専門人材は世界的に極めて希少である。ブロックチェーン開発者の求人は年率23%で成長しており、需要が供給を大幅に上回っている 22。この深刻な人材不足により、優秀なエンジニアやアーキテクトの賃金は高騰し、彼らはプロジェクトやプラットフォームを自由に選択できる強い立場にある。人材は、この業界における最も重要な「サプライヤー」であり、その交渉力は極めて高い。
買い手の交渉力 (Bargaining Power of Buyers) – 中程度から高い
買い手の交渉力は、セグメントや導入フェーズによって異なる。
- 大手企業・政府機関:
コンソーシアム型のブロックチェーンプロジェクトを主導する大手金融機関、製造業、政府機関は、技術標準の選定(例:Hyperledger FabricかCordaか)や価格交渉において強い影響力を持つ。彼らは自らの業界要件に合わせたカスタマイズを要求し、複数のベンダーを競わせることができるため、交渉力は高い。 - スイッチングコスト:
一度特定のブロックチェーン基盤、特に業務プロセスと深く統合されたプライベート/コンソーシアムチェーンを導入した場合、他の基盤への移行は技術的・組織的に極めて困難であり、多大なコストを要する。この高いスイッチングコストは、一度導入が決まった後では買い手の交渉力を著しく低下させる要因となる。 - 情報の非対称性:
ブロックチェーン技術は依然として複雑で難解であるため、買い手である一般企業は、売り手であるSIerやプラットフォームベンダーに対して情報的に不利な立場に置かれやすい。この情報の非対称性は、買い手の交渉力を弱める方向に作用する。
新規参入の脅威 (Threat of New Entrants) – レイヤーにより大きく異なる
- L1/L2基盤プロトコルレイヤー(脅威は低い):
新しいL1ブロックチェーンが成功するためには、技術的な優位性だけでなく、膨大な数の開発者、ユーザー、アプリケーションからなる強力な「ネットワーク効果」を構築する必要がある。これは巨額の資本と長い時間を要するプロセスであり、既に確立されたEthereumやSolanaのエコシステムに対抗する参入障壁は極めて高い。 - ソリューション/アプリケーションレイヤー(脅威は高い):
一方で、特定の産業(例:不動産、アート、ヘルスケア)や特定のユースケース(例:ESGレポーティング、デジタル証明書発行)に特化したソリューションレイヤーでは、状況は一変する。深い業界知識とユニークなアイデアを持つスタートアップが、大手企業と互角以上に戦う機会が豊富に存在する。クラウドやBaaSの普及により、インフラに関する初期投資も比較的小さく抑えられるため、このレイヤーにおける新規参入の脅威は高い。
代替品の脅威 (Threat of Substitutes) – 高い
ブロックチェーンが提供する価値は、常に既存の技術と比較される。
- 従来の集中管理型システム:
多くのユースケース、特に単一の企業内でのデータ管理や、既に信頼関係が構築されている企業間でのデータ共有においては、従来の集中管理型データベースやAPI連携によるシステムが、コスト、パフォーマンス、導入の容易さの面でブロックチェーンを上回ることが多い 24。ブロックチェーンが本当に必要かどうかを慎重に見極めなければ、代替品に敗れることになる。 - ブロックチェーンの価値が代替されにくい領域:
ブロックチェーンの真の価値は、互いに信頼し合えない複数の主体間で、中央集権的な仲介者なしに、①データの完全性を担保し、②ルール(スマートコントラクト)を自動執行する点にある。この特性が不可欠な領域、例えば、多数の企業が関わる国際貿易金融、サプライチェーンにおける製品トレーサビリティ、国境を越えた個人認証(分散型ID)などが、代替が困難な領域である。
業界内の競争 (Intensity of Rivalry) – 非常に高い
業界内の競争は、あらゆるレイヤーで激化している。
- パブリックチェーン間の競争:
Ethereum、Solana、Avalancheなどの主要L1プロトコルは、開発者エコシステムの拡大、トランザクション性能(TPSとファイナリティ)、EVM(Ethereum Virtual Machine)互換性、手数料の安さを巡って、熾烈なシェア争いを繰り広げている 77。 - エンタープライズ領域の競争:
Hyperledger Fabric(IBM主導、モジュール性重視)、R3 Corda(金融業界特化、法的確実性重視)、ConsenSys Quorum(Ethereumベース、パブリックとの親和性重視)の三大プラットフォームが、それぞれのアーキテクチャ思想と得意領域を武器に競争している 78。近年は、単独での競争だけでなく、プライベートとパブリックの連携を視野に入れた協調の動き(例:R3とSolanaの戦略的提携 80)も見られ、競争の力学はより複雑化している。 - BaaSプロバイダー間の競争:
AWS、Azure、Google Cloudは、自社の広範なクラウド顧客基盤を活かし、エンタープライズ向けブロックチェーンサービスの提供で激しく競争している。AWSは幅広い選択肢と市場シェア、AzureはMicrosoft製品群との親和性とエンタープライズへの強み、Googleはデータ分析とAI連携をそれぞれの差別化要因としている 73。
このFive Forces分析から、ブロックチェーン業界の収益構造に関する重要な示唆が浮かび上がる。まず、業界の収益性は「インフラ層の寡占」と「アプリケーション層の断片化」によって二極化する傾向にある。売り手であるクラウド大手の力が強く、基盤プロトコルレイヤーへの新規参入障壁が高いことから、BaaSや主要L1プロトコルといったインフラ層では、少数の支配的なプレイヤーが高い収益性を確保する構造が形成されつつある。これは、インターネット業界において、インフラを支配するGoogleやAmazonが巨大な利益を上げる一方で、その上で競争する無数のアプリケーション開発者の収益性が低い構造と酷似している。持続的な高収益を目指す企業は、インフラ層での確固たる地位を築くか、あるいはアプリケーション層で圧倒的なネットワーク効果を持つニッチトップの座を確立するかの、いずれかの戦略を選択する必要がある。
さらに、競争の主戦場は「単一プラットフォームの性能」から「エコシステム間の相互運用性」へと明確にシフトしている。業界内の各セグメントで競争が激化する中、R3とSolanaの提携やSWIFTとConsenSysの連携といった動きは、もはや単独のプラットフォームで市場を制覇することが困難であることを示している 80。買い手である企業は、特定のプラットフォームにロックインされることを回避し、異なるシステムと柔軟に連携できる相互運用性を強く求めている 85。この需要に応えるため、競争戦略の焦点は、自社プラットフォームの閉じた優位性を追求することから、IBCやCCIPのような標準プロトコルを通じて他のエコシステムと連携し、より大きな複合的価値を提供することへと移っている。将来の勝者は、最も高性能な単一チェーンではなく、最も多くのチェーンとシームレスに連携できる「ハブ」としての機能を持つエコシステムとなる可能性が高い。
項目 | Hyperledger Fabric | R3 Corda | ConsenSys Quorum |
---|---|---|---|
主導組織/コミュニティ | Linux Foundation (IBM等が貢献) | R3コンソーシアム | ConsenSys (J.P. Morganが開発) |
アーキテクチャ思想 | モジュール型、チャネルによるデータ分離 | UTXOベース、Point-to-Point通信 | アカウントベース、Ethereumの拡張 |
コンセンサスアルゴリズム | プラガブル (Raft, PBFT) | Notary (公証人)による検証 | プラガブル (Raft, IBFT) |
スマートコントラクト言語 | Go, Java, JavaScript (Chaincode) | Java, Kotlin (CorDapps) | Solidity, Vyper (Smart Contracts) |
プライバシー機能 | チャネル、プライベートデータコレクション | 取引データを関係者のみに共有 | プライベートトランザクション |
主なターゲット産業 | サプライチェーン、製造、ヘルスケア | 金融、保険、貿易金融 | 金融、およびEthereumエコシステムとの連携 |
主要導入事例 | IBM Food Trust, TradeLens | we.trade, Marco Polo | komgo, 金融機関のPoC多数 |
第5章:エコシステムとバリューチェーン分析
ブロックチェーン業界の競争優位を理解するためには、個々の企業や技術だけでなく、それらが形成するエコシステムの構造と、価値が創造・分配されるバリューチェーンの力学を分析することが不可欠である。
エコシステム分析
主要なブロックチェーンエコシステムは、それぞれ異なる思想とガバナンスモデルに基づいて構築されており、それが各エコシステムの戦略的ポジショニングを決定づけている。
- 主要エコシステムの構造と思想:
- Ethereum: 「World Computer(世界のコンピュータ)」というビジョンを掲げ、徹底したオープンソースと分散化を最重視するエコシステムである。そのガバナンスは、EIP(Ethereum Improvement Proposal)と呼ばれる改善提案プロセスを通じて、コア開発者、研究者、そして広範なコミュニティが緩やかに主導する 86。特定の企業や組織による中央集権的な意思決定を意図的に避けるこの思想は、高い検閲耐性と中立性を実現する一方、意思決定のスピードが遅くなるというトレードオフを抱えている。この特性は、グローバルで中立的な金融インフラ(DeFi)や決済基盤といったユースケースに最適である。
- Hyperledger: Linux Foundation傘下のプロジェクト群であり、明確にエンタープライズ利用を前提として設計されている。特定の暗号資産を持たず、ビジネス課題の解決に特化したオープンガバナンスモデルを採用している 88。多様な業界の企業が参加し、モジュール化されたコンポーネント(例:合意形成、ID管理)を共同開発する「温室(greenhouse)」構造が特徴であり、参加企業はこれらのコンポーネントを組み合わせて自社のニーズに合ったブロックチェーンを構築できる 78。このアプローチは、特定の業界内での標準化や規制遵守が求められるサプライチェーンや貿易金融などのユースケースに適している。
- Cosmos: 「Internet of Blockchains(ブロックチェーンのインターネット)」をビジョンとし、各ブロックチェーンが独自のガバナンスや機能を持つ「主権(Sovereignty)」を維持しながら、IBC(Inter-Blockchain Communication)プロトコルを通じて相互に接続するという思想を持つ 54。ガバナンスはエコシステム全体で統一されるのではなく、個々のチェーンに完全に委ねられており、ボトムアップで多様なチェーンが連携し進化していく。このモデルは、独自のルールや経済圏を構築したいプロジェクト、例えば特定のゲーム内経済や独自の金融商品を持つDeFiプロトコルなどに魅力的である。
- Polkadot: 「共有セキュリティ(Shared Security)」モデルを最大の特徴とする。エコシステムの中心に存在するリレーチェーンに、パラチェーンと呼ばれる個別のブロックチェーンが接続することで、パラチェーンは自前で高度なセキュリティを確保することなく、リレーチェーンの堅牢なセキュリティを享受できる 91。また、OpenGovという先進的なオンチェーンガバナンスモデルを導入しており、ネイティブトークンであるDOTのホルダーが、提案・投票を通じてネットワークのアップグレードや財務(Treasury)からの資金配分を直接決定する 92。この仕組みは、高度なセキュリティを必要としながらも、コミュニティ主導で迅速な意思決定を行いたいプロジェクトに適している。
- 価値の創出と分配:
ブロックチェーンにおける価値の分配メカニズムは、伝統的なインターネットのそれとは大きく異なるとされてきた。インターネットの世界では、TCP/IPやHTTPといったプロトコル自体は価値を持たず、その上で構築されたGoogleやFacebookといったアプリケーション層が価値を独占する「Thin Protocol, Fat Application」モデルが主流であった。
これに対し、ブロックチェーンでは、プロトコルのネイティブトークン(例:ETH, SOL)がエコシステム全体の活動(手数料の支払い、ステーキングなど)に不可欠であり、プロトコル自体が価値を捉える「Fat Protocol, Thin Application」という仮説が提唱された 94。しかし、L2スケーリングソリューションの台頭により、この仮説は進化を遂げている。L1のスケーラビリティ問題により、ユーザーアクティビティとそれに伴う手数料収入の多くが、ArbitrumやOptimismといったL2へと移管した。Ethereum開発者の56%がL2で活動しているという事実は、価値創出の主戦場がL2へシフトしていることを示している 33。その結果、L2プロトコル自体も独自のトークンを発行し、大きな経済的価値を持つようになった。一方で、L2は最終的なセキュリティをL1に依存しているため、L1の価値(すなわちETHの価値)も依然として重要である。この状況は、価値が「セキュリティと決済の基盤であるL1」と「ユーザー体験とアプリケーション実行の場である主要L2」の両端に集約される「ダンベル型」の価値分布構造が形成されつつあることを示唆している。この構造では、中間に位置する特定の機能に特化したミドルウェアや、ネットワーク効果を持たないニッチなアプリケーションの価値は、相対的に小さくなる可能性がある。
バリューチェーン分析
ブロックチェーン業界のバリューチェーンは、アイデアの創出から最終的な運用・保守まで、一連のプロセスとして捉えることができる。
- バリューチェーンの構成:
- 基礎技術研究開発: 大学や研究所、プロトコル財団の研究部門が、暗号理論、コンセンサスアルゴリズム、スケーリング技術などの基礎研究を行う。
- プロトコル/プラットフォーム構築: Ethereum FoundationやHyperledgerコミュニティ、L2開発チームなどが、基礎研究の成果を基に、ブロックチェーンの基盤となるプロトコルやプラットフォームを開発・維持する。
- ソリューション/アプリケーション開発: ConsenSysのような専門企業や、無数のスタートアップが、基盤プラットフォーム上で特定の課題を解決するためのソリューションやdApps(分散型アプリケーション)を開発する。
- 導入コンサルティング・SI: Accenture、IBM、NTTデータといった大手SIerやコンサルティングファームが、顧客企業のビジネス要件を分析し、最適なブロックチェーンソリューションの選定、設計、導入を支援する。
- 運用・保守: AWS、Azure、GCPなどのクラウド事業者が提供するBaaSや、SIerによるマネージドサービスが、導入後のシステムの安定稼働を支える。
- 価値の源泉のシフト:
バリューチェーンにおける価値の源泉は、業界の成熟とともにダイナミックに変化している。- 初期(~2017年頃): 価値の源泉は、Proof of Workに代わる新しいコンセンサスアルゴリズムや、独自の暗号技術といった「基礎技術」そのものにあった。技術的な新規性が競争優位に直結していた時代である。
- 現在(2018年~): 基盤技術がある程度コモディティ化し、BaaSなどで容易に利用できるようになった現在、価値の源泉は「業界課題を解決するソリューション提供能力」へと明確にシフトしている。単にブロックチェーンを導入するだけでは価値は生まれず、特定の業界(例:食品、金融、物流)のペインポイントを深く理解し、それを解決する具体的なアプリケーションを提供することが重要となっている。例えば、IBM Food Trustは、食品業界におけるトレーサビリティという明確な課題に特化することで、参加企業に具体的な価値を提供している 96。
- 将来: さらに将来的には、価値の源泉は個別のソリューション提供能力から、エコシステム全体の「ガバナンスとネットワーク効果」へと昇華していくと予測される。多くの参加者を惹きつけ、公正で効率的なルールを設計・運用し、エコシステム全体の価値を最大化させる能力が、持続的な競争優位の源泉となる。PolkadotのOpenGovやCosmosの主権的ガバナンスモデルは、まさにこの未来を見据えた戦略的取り組みと言える。
第6章:顧客需要の特性分析
ブロックチェーン技術の産業実装を成功させるためには、技術の供給サイドだけでなく、顧客である企業が何を求め、どのような課題に直面しているのかを深く理解することが不可欠である。
主要顧客セグメントとKBF(Key Buying Factor)
顧客セグメントごとに、ブロックチェーン導入を検討する際の主要な購買決定要因(KBF)は異なる。
- 金融機関(銀行、証券、保険):
- KBF: 「規制遵守」「高度なセキュリティ」「既存システムとの相互運用性」「決済のファイナリティ(決済完了性)」。金融業界は最も規制が厳しい分野の一つであり、コンプライアンスを満たすことが導入の絶対条件となる。
- ニーズ: 貿易金融における書類プロセスの効率化、証券のトークン化による24時間取引と即時決済(T+0)、クロスボーダー決済の迅速化とコスト削減。
- 製造業・物流業:
- KBF: 「サプライチェーン全体の可視化」「偽造品・模倣品防止」「業務効率化(書類のデジタル化)」。複雑に絡み合ったサプライチェーンの状況をリアルタイムで把握し、信頼性を高めることが最大の関心事である。
- ニーズ: 製品の原材料調達から最終消費者に届くまでのトレーサビリティ確保が最大のニーズであり、これにより品質管理の向上、リコールの迅速化、ブランド価値の保護を目指す 12。
- 政府・公共機関:
- KBF: 「行政プロセスの透明性」「公的記録の耐改竄性」「市民サービスの利便性向上」。公的機関として、プロセスの公正性とデータの信頼性を担保することが最優先される。
- ニーズ: 国民一人ひとりに付与されるデジタルID、改ざん不可能な土地登記記録、透明性の高い投票システムなど、社会インフラの信頼性を高めるための活用が検討されている 41。
- ヘルスケア:
- KBF: 「患者データのプライバシー保護」「医療機関間での安全なデータ共有」「治験データの完全性」。GDPR(EU)やHIPAA(米国)といった厳格なプライバシー規制への準拠が不可欠である 100。
- ニーズ: 患者の同意に基づき、異なる病院や診療所間で医療記録を安全に共有することや、臨床試験データの信頼性を確保し、研究開発を加速させることが求められる。
PoCで止まる真の要因(PoC Purgatory)
多くの企業がブロックチェーンのPoC(概念実証)に着手するものの、その大半が本格導入に至らずに頓挫する「PoCの煉獄(Purgatory)」と呼ばれる現象が広く見られる。Gartnerの調査では、本番稼働に至るプロジェクトはわずか5%に過ぎないとの指摘もある 24。その根本原因は、技術的な課題以上に、組織的・ビジネス的な障壁にある。
- 組織的・政治的課題(最大の障壁):
- 複数企業間の合意形成の困難さ: ブロックチェーンの価値は、複数の企業が参加するネットワークを構築して初めて最大化される。しかし、特に競合関係にある企業間で、データフォーマットの標準化、ガバナンスルールの策定、システム投資の費用負担といった点について合意を形成することは極めて困難である 23。海運大手Maerskが主導した貿易プラットフォーム「TradeLens」が、十分なステークホルダーの支持を得られずにサービスを終了したことは、この課題の深刻さを示す象徴的な事例である 23。
- インセンティブの不一致: コンソーシアムを主導する一部の企業に利益が偏在し、他の多くの参加企業にとってネットワークに参加する十分な経済的インセンティブが提供されないケースが多い 24。データを提供する手間やコストに見合うメリットがなければ、参加者は増えず、ネットワークは活性化しない。
- 費用対効果(ROI)の不明確さ:
ブロックチェーン導入による直接的なコスト削減効果や新たな収益向上効果を、事前に定量的に算出することが難しい。そのため、多額の初期投資を必要とする本格導入について、経営層の投資判断を得ることが困難となっている 14。 - 法規制の不確実性:
データプライバシー、資産の所有権、スマートコントラクトの法的効力などに関する法規制が未整備、あるいは国によって異なるため、企業がコンプライアンスリスクを懸念し、本格導入に踏み切れない状況がある 24。
顧客が真に求める価値
エンタープライズ領域の顧客がブロックチェーンに求める価値の本質を理解することが重要である。
- 多くの企業にとって、「分散化」というイデオロギーや思想そのものは目的ではない。彼らが求めているのは、分散化という技術特性がもたらす具体的なビジネス上の便益、すなわち**「耐改竄性によるデータの信頼性向上」と「関係者間でのデータ共有の効率化によるコスト削減」**の二つである 24。
- ブロックチェーンはしばしば「信頼を不要にする(trustless)」技術と説明されるが、ビジネスの世界、特に企業間取引においては、逆説的に「信頼できる(trusted)」ネットワークが求められる。つまり、参加者の身元が認証されており、明確なガバナンスルールが存在し、万が一の紛争解決メカニズムが整備されていることが重要である。これが、匿名参加が可能なパブリックチェーンよりも、参加者が限定されたプライベート/コンソーシアムチェーンがエンタープライズ領域で選好される根本的な理由である 89。
- 企業は自社の機密情報を競合他社に無制限に公開したいとは考えていない。彼らが求めているのは、全ての情報が公開される「完全な透明性」ではなく、誰に、何を、どの範囲で見せるかを自ら厳密にコントロールできる**「選択的な透明性」**である。このニーズに応える技術として、Hyperledger Fabricのチャネル機能や、ゼロ知識証明(ZKP)が極めて重要となる。
市場を牽引するROIの明確なユースケース
PoCの死の谷を越え、市場を牽引しているのは、明確なROIを示せるユースケースである。
- サプライチェーン・ファイナンス:
ブロックチェーン上で請求書や船荷証券といった貿易書類をデジタル化し、関係者間で共有することで、検証プロセスを自動化し、決済サイクルを大幅に短縮する。これにより、企業の運転資本効率が改善される。Marco Polo Networkなどがこの分野の代表例である 101。 - 貿易金融:
信用状(L/C)の発行・確認プロセスなどをブロックチェーン上で効率化することで、従来は数日から数週間かかっていた取引時間を数時間に短縮する。we.tradeは、欧州の主要銀行が設立したコンソーシアムであり、この分野をリードしてきた 102。 - 製品トレーサビリティ(特に偽造品対策):
高級品や医薬品といった分野では、偽造品によるブランド価値の毀損や健康被害が深刻な問題となっている。ブロックチェーンを用いて製品一つ一つに固有のデジタルIDを付与し、製造から流通までの全履歴を記録することで、真贋証明を確実に行うことができる。LVMHグループが主導するAURAコンソーシアムは、高級品の真贋証明とトレーサビリティ確保にブロックチェーンを活用している 104。 - 金融資産のトークン化:
債券やファンド持分といった金融資産をトークン化することで、取引の決済を即時化(T+0)し、カウンターパーティリスクを低減する。また、トークン化された資産はDeFiプロトコル上で担保として利用できるなど、新たな流動性を生み出す。JPMorganのOnyxプラットフォームやBlackRockのBUIDLファンドは、この領域における金融大手の先進的な取り組みである 44。
PoCの死の谷を越えるための鍵は、技術そのものではなく、「中立的なガバナンス設計」と「インセンティブ・エンジニアリング」にある。多くのPoCが失敗する根本原因は、競合企業間の利害対立や信頼の欠如にある 23。特定の一社が主導するコンソーシアムは、他の参加者から「データを支配されるのではないか」という根強い懸念を招き、結果として十分な参加者を集められずに失敗しやすい。この構造的課題を克服するためには、第一に、業界団体や中立的な第三者機関がガバナンスを主導し、全ての参加者にとって公平なルールを策定することが不可欠である。第二に、ネットワークへの参加やデータ提供が、全ての参加者にとって経済的に合理的であるようなインセンティブ設計(トークノミクスを含む)が必要となる。したがって、ブロックチェーン・ソリューションプロバイダーが提供すべき真の価値は、単にコードを書く技術力以上に、この複雑な「ゲームのルール」を設計し、多様なステークホルダー間の合意形成をファシリテートする能力にある。
第7章:業界の内部環境分析
業界の持続的な競争優位の源泉を理解するため、その内部環境、特に経営資源、人材、生産性に焦点を当てて分析する。
VRIO分析
ブロックチェーン業界における持続的な競争優位の源泉となる経営資源やケイパビリティをVRIOフレームワーク(Value, Rarity, Inimitability, Organization)で評価する。
- 価値(Value):
- 独自のコンセンサスアルゴリズム技術: 高い処理能力や省エネルギー性を実現する技術は価値を持つ。
- 大規模な開発者コミュニティ: 活発なコミュニティは、エコシステムの革新と成長を促進する源泉である。
- 特定産業における強力なコンソーシアム: 業界の主要プレイヤーを巻き込んだネットワークは、デファクトスタンダードとなることで大きな価値を生む。
- ブランドの信頼性: 特に金融やエンタープライズ領域において、規制遵守やセキュリティに対する信頼は極めて重要である。
- 希少性(Rarity):
- 高い: 大規模で活発な開発者コミュニティ(例:Ethereum)は、一朝一夕には構築できず、長年の歴史と求心力が必要であり、極めて希少である。
- 中程度から高い: 特定産業(例:金融、物流)の主要プレイヤーを網羅した強力なコンソーシアム(例:we.trade)の構築は、多大な労力と政治力を要するため希少性が高い。
- 模倣困難性(Inimitability):
- 高い: プロトコル層における「ネットワーク効果」。一度、多くの開発者、ユーザー、アプリケーションが集積すると、後発のプロトコルがその地位を覆すことは非常に困難になる。dAppsの資産やユーザーは、そのプロトコルにロックインされやすい。
- 高い: 規制当局からの認可や、業界標準としての地位。これらは法制度や業界の商慣行に深く根ざしており、単なる技術力だけでは模倣できない。
- 組織(Organization):
- 重要: VRIOの全ての要素を活かすためには、組織能力が不可欠である。特に、オープンソースプロジェクトを効果的に運営し、多様なステークホルダーの利害を調整しながらエコシステム全体を成長させる「ガバナンス能力」が、持続的競争優位を左右する。Ethereum FoundationやLinux Foundationは、このような組織能力を持つ代表例である。
人材動向
ブロックチェーン業界の成長を支える、あるいは制約する最大の要因は人材である。
- 需要動向と供給ギャップ:
- ブロックチェーン開発者の求人は年率23%で成長しており、これは他の多くのIT技術分野を凌駕するペースである 22。
- 特に、スマートコントラクト開発の主流言語であるSolidity(Ethereum系)とRust(Solana, Polkadot系)を扱えるエンジニア、そしてゼロ知識証明(ZKP)のような高度な暗号技術を実装できる専門家の需要が供給を大幅に上回っており、深刻な供給ギャップが生じている 22。
- さらに、AIとブロックチェーンの融合領域に精通したハイブリッドな人材は極めて希少であり、高い価値を持つ。
- このスキルギャップは開発者層に留まらない。ある調査では、2025年までにサプライチェーン分野のリーダーの90%が、ブロックチェーンを活用するために必要な人材やスキルを欠くと予測されており、業界全体でビジネスサイドの人材育成も急務となっている 50。
- グローバルおよび日本の賃金相場とトレンド:
- グローバル: 深刻な人材不足を背景に、賃金は高騰している。米国のSolidity開発者の平均年収は約18万ドルに達し、経験豊富なシニア開発者であれば20万ドルを超えることも珍しくない 107。Rust開発者の平均年収も13万ドル以上と、非常に高い水準にある 109。
- 日本: 日本におけるSolidity開発者の平均年収は約8万ドル(約1,200万円)と報告されており、国内のITエンジニアの中ではトップクラスの給与水準である 107。しかし、米国のテックハブと比較すると依然として大きな隔たりがある。このグローバルな賃金格差は、優秀な日本人エンジニアの海外企業への流出や、国境を越えたリモートワークの選択を促す一因となっている。
労働生産性/開発効率
ブロックチェーンプロジェクトは、その特有の性質から、従来のシステム開発とは異なる生産性の課題を抱えている。
- 開発の複雑性とコスト構造:
- ブロックチェーンプロジェクトは、分散システム、暗号技術、コンセンサスメカニズムといった、従来のWeb開発にはない専門知識を要求される。
- 特に、一度デプロイすると修正が極めて困難なスマートコントラクトの性質上、リリース前の徹底的なセキュリティ監査が不可欠となる。この監査プロセスは専門性が高く、多大なコストと時間を要し、プロジェクト全体のリードタイムを長期化させる一因となっている。
- 生産性向上の動き:
- BaaS(Blockchain as a Service): AWS Managed BlockchainやAzure Quorum Blockchain ServiceなどのBaaSプラットフォームは、複雑なブロックチェーンインフラの構築・運用・保守をクラウド事業者にアウトソースすることを可能にする 72。これにより、開発者はインフラ管理の負担から解放され、アプリケーションのビジネスロジック開発に集中できるようになり、開発の生産性は大幅に向上する。
- 開発フレームワークとツールの充実: TruffleやHardhat(Ethereum向け)、Anchor(Solana向け)といった高機能な開発フレームワークや、テスト、デバッグ、デプロイを支援する各種ツールが充実してきた。これにより、開発の標準化が進み、リードタイムの短縮と品質の向上が図られている。
人材獲得競争の激化は、業界の勢力図を塗り替える大きな力学となっている。もはや、技術的な優位性だけで開発者を惹きつけることはできない。優秀な開発者は、単に賃金が高いだけでなく、開発ツールが充実し、ドキュメントが整備され、コミュニティが活発で、総じて開発体験(Developer Experience, DevEx)が優れたプラットフォームに自然と集まる。Solanaが2024年に新規開発者獲得数でEthereumを上回った背景には、Rustというモダンなプログラミング言語の採用や、開発のしやすさを重視したエコシステム戦略が大きく貢献していると考えられる 33。したがって、各プロトコルやプラットフォームは、技術性能の向上だけでなく、「いかに開発者にとって魅力的か」というDevExの観点でも激しい競争を強いられる。企業が技術選定を行う際にも、そのエコシステムのDevExの質と、それを支える開発者コミュニティの持続可能性を、重要な評価項目として考慮すべきである。
また、BaaSの普及は、競争のレイヤーを「インフラ構築能力」から「ビジネスロジック実装能力」へと完全に移行させた。かつてブロックチェーンプロジェクトを立ち上げるには、複雑なノード設定やネットワーク管理といったインフラレベルの専門知識が不可欠であった。しかし、BaaSの登場により、数クリックで本番環境レベルのブロックチェーンネットワークを構築できるようになった 73。これにより、インフラ構築の技術的障壁は劇的に低下した。その結果、企業や開発者はインフラの差異を過度に意識することなく、自社のビジネス課題を解決するためのスマートコントラクトやアプリケーションのロジック設計・実装にリソースを集中できるようになった。これは、競争優位の源泉が「ブロックチェーンを“作れる”こと」から「ブロックチェーンを“使いこなせる”こと」へと完全にシフトしたことを意味する。SIerやコンサルティングファームにとってのビジネスチャンスは、もはやインフラ構築そのものではなく、顧客の業界知識に基づいた最適なビジネスプロセスの再設計と、それを実現する高度なスマートコントラクトの実装能力にある。
第8章:主要トレンドと未来予測
ブロックチェーン業界は、実用化のフェーズに入り、いくつかの破壊的なトレンドが次の成長を牽引している。特に、RWA、DePIN、DID、そしてAIとの融合は、単なる技術的進化に留まらず、新たな経済圏の創出を予感させる。
RWA(Real World Asset)のトークン化
- 概要と市場規模:
RWAのトークン化とは、不動産、債券、プライベートクレジット、美術品といった現実世界の有形・無形資産を、ブロックチェーン上でデジタルトークンとして表現し、取引可能にするプロセスである。この市場は爆発的な成長の初期段階にあり、2023年の84億ドルから2025年初頭には500億ドル超へと急拡大した 111。アナリストの中には、2030年までに市場規模が30兆ドルに達するとの極めて楽観的な予測を示す者もいる 111。 - 金融市場への変革的影響:
- 流動性の解放: これまで売買が困難で流動性が極めて低かった資産(例:商業用不動産、プライベートエクイティ)を、トークン化によって小口化(Fractionalization)し、24時間365日、国境を越えて取引可能な市場を創出する 113。
- 効率化とコスト削減: 資産の所有権移転や配当分配といったプロセスをスマートコントラクトで自動化することにより、証券保管振替機構や信託銀行といった従来の中間機関を介さずに、取引の即時決済(DvP: Delivery versus Payment)が可能となる。これにより、バックオフィス業務が大幅に効率化され、コストが削減される 113。
- TradFiとDeFiの融合: BlackRockの「BUIDL」ファンドやFranklin Templetonの「FOBXX」ファンドのように、大手金融機関がトークン化した米国債ファンドをパブリックチェーン上で発行している 44。これらのトークンは、Ondo FinanceなどのDeFiプロトコルにおいて安定した担保資産として利用されており、伝統的金融(TradFi)の信頼性とDeFiのオープンな金融システムが融合する架け橋となっている 43。
DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Networks)
- 概要とビジネスモデル:
DePINは、通信網(例:Helium)、エネルギー網、データストレージ(例:Filecoin)、コンピューティング(例:Akash)といった物理的なインフラを、中央集権的な大企業ではなく、世界中の個人や小規模事業者がトークンインセンティブによって分散的に構築・運用する新しいモデルである 117。参加者は、自身のハードウェア(例:Heliumの無線ホットスポット)を提供してネットワークに貢献することで、対価としてネイティブトークン(例:HNT)を獲得する。一方、サービスの利用者は、トークンを燃焼(Burn)して得られる米ドルペッグのクレジットで料金を支払う「Burn-and-Mint」モデルが主流となっている 118。 - 市場規模と可能性:
2024年時点で市場価値は235億ドルを超え、2030年までに1,000億ドル規模に達するとの予測がある 121。DePINの最大の可能性は、従来、莫大な初期投資(CAPEX)が必要であったインフラ事業への参入障壁を劇的に下げる点にある。これにより、より効率的で、単一障害点のないレジリエントなインフラ網を、市場原理に基づいてボトムアップで構築できる可能性がある 122。
分散型ID(DID)と検証可能な資格情報(VC)
- 概要と市場規模:
DIDは、個人や法人が、特定のプラットフォーマー(例:Google, Meta)に依存することなく、自らのデジタルアイデンティティを暗号技術を用いて管理・制御する仕組みである。VC(Verifiable Credentials)は、大学や政府などの発行者によってデジタル署名された検証可能な証明書(例:卒業証明書、運転免許証)を指す。この市場は、プライバシー意識の高まりを背景に急成長しており、2030年までに1,020億ドル規模に達し、CAGRは90%を超えるとの予測もある 70。 - 創出される新サービス:
- プライバシー保護型認証: ユーザーは、ゼロ知識証明(ZKP)などの技術を活用し、個人情報(例:生年月日)を直接開示することなく、必要な事実(例:「成人であること」)のみを相手に証明できる(選択的開示) 56。
- シームレスな顧客体験: 一度信頼できる発行者からVCを取得すれば、それを複数のサービスで再利用できる。これにより、ユーザーはサービスごとに面倒な本人確認(KYC)プロセスを繰り返す必要がなくなり、企業の顧客オンボーディングコストも削減される 125。
- Web3時代のログイン基盤: 「ウォレットでログイン」が、従来のID/パスワード認証やソーシャルログインに代わる、より安全でユーザー中心の認証方法として普及していく。
AIとブロックチェーンの本格融合
- 市場規模と融合の方向性:
AIとブロックチェーンの融合市場(Blockchain AI Market)は、2030年までに数千億ドル規模に達するとの複数の予測があり、巨大な成長ポテンシャルを秘めている 19。この融合には二つの方向性がある。- ブロックチェーンがAIにもたらす価値(信頼性の担保):
- データの真正性と来歴(Provenance): AIの性能は学習データの質に大きく依存する。ブロックチェーンを用いて、AIの学習に用いるデータの出所と変更履歴を記録することで、データの信頼性を担保し、偏ったデータや悪意のあるデータによる「AIの汚染」を防ぐ 58。
- モデルのトレーサビリティと監査可能性: AIモデルのバージョン、学習プロセス、そして導き出された結論の根拠となるロジックをブロックチェーンに記録する。これにより、AIの意思決定プロセスが透明化され、規制当局や利用者に対する「説明責任」を果たすことが可能になる 58。
- AIがブロックチェーンにもたらす価値(インテリジェンスの付与):
- スマートコントラクトの高度化: AIがリアルタイムで外部データを分析し、より複雑で動的な条件に基づいてスマートコントラクトを自動実行する。例えば、サプライチェーンにおいて、AIが需要予測を行い、最適なタイミングで自動的に発注を行うスマートコントラクトなどが考えられる 59。
- 自律的な経済エージェント: AIエージェントが、ブロックチェーン上で自律的に価値交換や交渉を行う経済圏が生まれる。Fetch.aiは、個人やデバイスに代わってAIエージェントがデータ売買やサービスの予約・決済を自動で行う「自律的経済エージェント」のネットワーク構築を目指している 130。
- ブロックチェーンがAIにもたらす価値(信頼性の担保):
規制の明確化とエンタープライズ利用の加速
欧州のMiCA(暗号資産市場規制)、米国のGENIUS Act(ステーブルコイン規制法案)、そして日本の金融庁による暗号資産の制度見直しなど、主要国においてデジタル資産に関する包括的な規制の枠組みが整備されつつある 1。規制の明確化は、これまで法的な不確実性を理由に本格的な参入をためらっていた大手金融機関や機関投資家にとって最大の追い風となる。これにより、コンプライアンスが確保されたRWAトークン化や、セキュリティトークン(STO)市場が本格的に拡大し、エンタープライズ利用が一気に加速するだろう。規制はイノベーションを阻害するものではなく、むしろ市場の勝者と敗者を明確にし、健全な淘汰と成長を促進する「触媒」として機能する。規制対応能力こそが、次の時代の競争優位の源泉となる。
これらの主要トレンドは、それぞれが独立して存在するのではなく、相互に深く関連し合い、「自律分散型経済(Autonomous Economy)」という一つの未来像を構成する補完的な要素として捉えるべきである。DePINは物理世界のインフラを自律的に構築・運用し 118、そこから収集されたデータやインフラが生み出す価値がRWAとしてトークン化される。DIDは、この経済活動に参加する人間、IoTデバイス、AIエージェントのIDと信頼性を担保する 49。そしてAIエージェントは、DIDによって身元が保証された上で、RWAをブロックチェーン上で自律的に取引・運用し、価値を最大化する 131。この「物理インフラ → データ/資産 → ID → 自律的エージェント」という一連のバリューチェーンが組み合わさることで、人間が常時介在せずとも自律的に機能する新しい経済圏が生まれる。ここに、ブロックチェーンが目指す究極の姿と、最大のビジネスチャンスが存在する。
第9章:主要プレイヤーの戦略分析
ブロックチェーン業界の競争環境は、プロトコル、エンタープライズソリューション、BaaS、国内SIerといった異なるレイヤーで、多様なプレイヤーがそれぞれの強みを活かして覇権を争う複雑な様相を呈している。
プロトコル
- Ethereum:
- ビジョン/戦略: 「Rollup-Centric Roadmap」を推進し、L1(メインネット)をセキュリティとデータ可用性のための「セトルメントレイヤー」に特化させ、スケーラビリティはL2(ロールアップ)に委ねるという明確な戦略を採る 87。2025年のロードマップでは、アカウントアブストラクションによるユーザー体験(UX)の向上や、プライバシー機能の強化に重点を置いている 133。
- 強み: 最大規模の開発者コミュニティ、最も成熟し流動性が豊富なDeFiエコシステム、そして機関投資家からの厚い信頼という、強力なネットワーク効果を持つ 33。
- 弱み: L1のトランザクション手数料の高さと処理速度の遅さ。分散型のガバナンスモデルに起因する意思決定の遅さ。
- Solana:
- ビジョン/戦略: L2に依存せず、単一の高性能なL1ブロックチェーンとしてスケーラビリティを追求する「モノリシック」なアプローチを採る。高速・低コストという特性を活かし、リテール決済、DePIN、高頻度DeFi取引など、大量のトランザクションを処理するユースケースを主要ターゲットとする。
- 強み: 圧倒的なトランザクション処理性能(TPS)と極めて低い手数料 29。これにより、新規開発者の獲得数でEthereumを凌駕するなど、エコシステムが急拡大している 33。
- 弱み: 過去に複数回のネットワーク停止を経験しており、安定性に対する懸念が依然として存在する 135。バリデータ数がEthereumに比べて少なく、ネットワークの分散性の面では劣る。
- Hyperledger:
- ビジョン/戦略: Linux Foundation傘下のプロジェクトとして、エンタープライズ向けの分散台帳技術に関するオープンソースの標準を確立することを目指す。特定の業界(サプライチェーン、金融、ヘルスケア)の課題解決に特化した複数のプロジェクト(Fabric, Sawtooth, Besu等)を並行して推進する 88。
- 強み: 企業の多様なニーズに対応できるモジュール性の高いアーキテクチャ(パーミッション型、チャネル機能など)、そしてIBMをはじめとする強力な企業コンソーシアムからの支持 78。
- 弱み: 当初はパブリックチェーンとの相互運用性が課題であったが、近年はEthereum互換のHyperledger Besuなどを通じて、パブリックエコシステムとの連携を強化する動きを見せている。
エンタープライズソリューション
- IBM:
- ビジョン/戦略: Hyperledger Fabricを技術的基盤とし、IBM Blockchain Platformを提供。特に、サプライチェーン(IBM Food Trust, TradeLens)や貿易金融(we.trade)といった業界特化型のコンソーシアム構築を主導し、業界標準の確立を目指す 97。近年は、自社の強みであるAI(Watson)との連携を強化し、付加価値の向上を図っている 59。
- 強み: グローバルな大企業や政府機関との強固な顧客基盤と、長年にわたって培われた信頼。複雑なステークホルダー間の合意形成を伴うコンソーシアム構築に関する豊富なノウハウ。
- ConsenSys:
- ビジョン/戦略: Ethereumエコシステムの成長を牽引するリーディングカンパニーとして、インフラからアプリケーションまでを包括的に提供。エンタープライズ向けにはパーミッション型のConsenSys Quorum、L2スケーリングソリューションとしてLinea、開発インフラとしてInfura、そして世界最大のウォレットであるMetaMaskを展開し、パブリックとプライベートの両面からEthereumの普及を推進する 104。
- 強み: Ethereumエコシステムにおける圧倒的な技術力とプレゼンス。国際銀行間通信協会(SWIFT)との提携に見られるように、伝統的金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)の架け橋としての役割を担っている 84。
- R3:
- ビジョン/戦略: 金融機関の厳格な要件を満たすためにゼロから設計されたCordaプラットフォームを提供。取引のプライバシー、法的な確実性、そして異なるCordaネットワーク間の相互運用性を最重視する 141。
- 戦略転換: 当初はプライベート/コンソーシアム型の閉じたネットワークに注力していたが、近年、Solanaとの戦略的提携を発表。Corda上のプライベートな資産を、Solanaというパブリックチェーン上で決済するハイブリッド戦略へと大きく舵を切った 80。これは、エンタープライズ領域においてもパブリックチェーンの流動性やオープン性が不可欠になっていることを示す象徴的な動きである。
BaaS (Blockchain as a Service)
- AWS (Amazon Web Services):
- 戦略: 市場リーダーとして最も包括的なBaaSを提供。Amazon Managed Blockchainを通じて、エンタープライズで需要の高いHyperledger Fabricと、パブリックエコシステムへのゲートウェイとなるEthereumの両方をサポートし、顧客に幅広い選択肢を提供する 72。
- 強み: クラウド市場No.1の圧倒的なシェアと、それに付随する豊富なサービス群。多くのブロックチェーンプロジェクトがインフラとしてAWSを利用しており、事実上の業界標準となっている。
- Microsoft Azure:
- 戦略: 2021年に自社開発のBaaSを終了し、パートナー戦略へと転換。Ethereumエコシステムの雄であるConsenSysと提携し、Azure上でQuorum Blockchain Serviceを提供する 73。自社の強みであるエンタープライズ顧客基盤と、Microsoft Entra Verified IDといったIDサービスとの連携を重視し、Web3ソリューションを包括的に提供する。
- 強み: 既存のMicrosoft製品(Office 365, Dynamics 365など)を利用する膨大な数の大企業への強力なリーチ。
- Google Cloud:
- 戦略: Blockchain Node Engineを通じて、フルマネージドのノードホスティングサービスに注力する 76。インフラ提供に留まらず、自社の最大の強みであるデータ分析(BigQuery)やAI/MLプラットフォームとの連携を前面に押し出し、オンチェーンデータの活用を支援することで差別化を図る戦略 148。
- 強み: AI/MLとデータ分析における卓越した技術力とブランドイメージ。
国内SIer
- NTTデータ: 2015年という早期からブロックチェーン専門チームを設置し、技術研究とビジネス創発を両輪で推進 149。日本の貿易手続きを効率化する貿易情報連携基盤「TradeWaltz」の構築を主導するなど、社会インフラレベルの大規模なコンソーシアム形成に豊富な実績と強みを持つ。
- 日立製作所: Hyperledger Fabricを活用し、約3,500社との契約管理を行う調達プロセスを効率化する電子署名サービスを自社導入し、そのノウハウを顧客にも提供している 101。中期経営計画においてデジタル事業を成長の柱と位置づけており、金融や社会インフラ分野でのブロックチェーン活用を積極的に推進している 150。
- 富士通: 「Fujitsu Web3 Acceleration Platform」を発表し、スタートアップやパートナー企業との共創による新ビジネス創出を目指すエコシステム戦略を採る 152。分散型データ流通技術「IDYX」やトレーサビリティ技術「Chain Data Lineage」といった独自のコア技術を保有している点が特徴 154。
業界の主要プレイヤーの戦略を俯瞰すると、かつての「垂直統合」モデルから「水平分業・連携」モデルへの明確なシフトが見て取れる。初期の市場では、各社がプロトコルからアプリケーションまでを自社技術で囲い込むことを目指す傾向があった。しかし、市場の複雑化と技術の専門分化が進むにつれ、単独ですべてのレイヤーをカバーすることは非現実的となった。その結果、各社は自社のコアコンピタンスに集中し、他社との戦略的提携を通じてエコシステム全体で価値を創造する水平分業モデルへと移行している。MicrosoftがBaaS基盤を自社開発せずConsenSysと提携し 74、R3がパブリックチェーン基盤をSolanaに求めた 80 のはその典型例である。このトレンドは、特定の技術を保有すること以上に、多様な技術を組み合わせて顧客価値を創造する「インテグレーション能力」と「パートナーシップ戦略」が、今後の競争優位を決定づけることを示唆している。
特にエンタープライズ領域においては、勝敗を分ける要因が「プライベートチェーンの機能性」から「パブリックチェーンへの接続性」へと移行している点が重要である。R3のSolanaとの提携や、ConsenSysのLineaを通じたSWIFTとの連携は、顧客である大手金融機関が、プライベートな環境のセキュリティやコンプライアンスを維持しつつも、パブリックチェーンが持つグローバルな流動性やオープンなエコシステムとの接続を強く求めていることの証左である 80。プライベートチェーンは企業の内部プロセスやコンソーシアム内の機密情報管理において引き続き重要な役割を担うが、それだけでは価値が限定的となる。今後の競争優位は、プライベートチェーンの堅牢性を維持しながら、いかに安全かつシームレスにパブリックチェーン(特に最大の流動性を持つEthereumエコシステム)と接続し、RWAの流通やDeFiとの連携といった新たな価値を実現できるかにかかっている。
第10章:戦略的インプリケーションと推奨事項
これまでの包括的な分析を統合し、ブロックチェーン業界における事業戦略策定に向けた具体的な戦略的インプリケーションと、取るべきアクションを提言する。
今後3~5年で勝者と敗者を分ける要因
ブロックチェーン業界は、技術的な可能性を模索するフェーズを終え、ビジネスとしての価値を証明するフェーズに突入した。この新たな競争環境において、企業の勝敗を分けるのは以下の5つの要因である。
- エコシステム構築能力:
単独の優れた技術や製品だけでは持続的な成功は望めない。開発者、ユーザー、パートナー企業、さらには競合他社さえも巻き込み、参加者全員が利益を享受できるようなインセンティブ設計を通じて、強力なネットワーク効果を持つエコシステムを構築できるかが決定的な要因となる。 - 相互運用性(インターオペラビリティ)へのコミットメント:
「ブロックチェーンのインターネット」が現実のものとなる中、閉鎖的な独自規格に固執するプレイヤーは淘汰される。CosmosのIBCやChainlinkのCCIPといった業界標準のクロスチェーン技術を積極的に採用し、他のエコシステムとのシームレスな連携を推進することで、自らのエコシステムの価値を高めることができるかが問われる。 - 明確なROIを持つユースケースへの集中:
「分散化」や「Web3」といった抽象的な理念を語るだけでは、もはや企業顧客の投資を引き出すことはできない。顧客が抱える具体的なペインポイント(例:サプライチェーンの非効率性、貿易金融の高コスト)を深く理解し、ブロックチェーン導入による定量的なビジネス価値(コスト削減率、リードタイム短縮日数など)を明確に提示できるソリューションプロバイダーが選ばれる。 - 規制対応力と信頼性:
主要国で規制の枠組みが整備されるにつれ、コンプライアンスは事業の前提条件となる。特に金融分野においては、規制当局との対話を通じて認可を取得し、社会的な信頼を勝ち得ることが不可欠である。規制動向を先読みし、それを製品設計に織り込む能力が競争優位に直結する。 - AIなどの先進技術との融合:
ブロックチェーンを単体の技術として捉えるのではなく、AIやIoTといった他の先進技術と組み合わせることで、新たな付加価値を創出できるかが差別化の鍵となる。例えば、AIの信頼性をブロックチェーンで担保する、あるいはIoTデータをブロックチェーンで安全に流通させるといった、複合的なソリューションを構想・実現できる企業が次世代のリーダーとなる。
自社の機会(Opportunity)と脅威(Threat)
この市場環境において直面する機会と脅威は以下の通りである。
- 機会 (Opportunities):
- RWA市場の黎明期: 大手金融機関が本格参入を始めたばかりのRWA市場は、まだ支配的なプレイヤーが存在しないブルーオーシャンである。特に、法規制が複雑で高い信頼性が求められる不動産やプライベートクレジットといった資産クラスにおいて、コンプライアンス遵守を強みとすることで、新規参入者にも大きな事業機会が存在する。
- ハイブリッド・アーキテクチャへの強い需要: 企業はプライベートチェーンの管理性とパブリックチェーンのオープン性を両立させたいと考えている。この二つの世界を繋ぐインテグレーションサービスや、セキュリティと相互運用性を担保するミドルウェア市場には、大きなビジネスチャンスがある。
- 「AIの信頼性担保」という新市場の創出: AIの社会実装が加速するほど、その意思決定プロセスの透明性や監査可能性に対する要求が高まる。これは、「信頼」そのものを商品とする新たな市場の誕生を意味し、ブロックチェーンの耐改竄性という本質的価値を最大限に活かせる領域である。
- 日本の規制整備という追い風: 日本政府および金融庁がWeb3を国家の成長戦略と位置づけ、税制改正や規制緩和に前向きな姿勢を示している 63。この国内の良好な事業環境は、日本企業にとって大きなアドバンテージとなる。
- 脅威 (Threats):
- クラウド大手のインフラ支配: BaaS市場はAWS、Azure、GCPの寡占が進んでおり、インフラレイヤーでこれらの巨大企業と直接競争することは極めて困難である。
- グローバルプロトコルの強力なネットワーク効果: EthereumやSolanaのような確立されたL1エコシステムが持つ開発者やユーザーの集積は、後発が覆すにはあまりにも大きな参入障壁となっている。
- グローバルな人材獲得競争: 高度な専門知識を持つブロックチェーンエンジニアの獲得競争は世界的に激化しており、人材の確保と維持が事業成長の最大のボトルネックとなる可能性がある。
戦略的オプションの提示と評価
上記の分析に基づき、取りうる戦略的オプションを4つ提示し、それぞれのメリット・デメリット、成功確率を評価する。
戦略オプション | 概要 | 機会の大きさ | 競争環境 | 自社ケイパビリティとの適合性 | 投資規模 | 成功確率 | 総合評価 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A: L1/L2基盤プロトコル開発 | 独自のL1/L2ブロックチェーンを開発し、エコシステムの主導権を握る。 | 非常に大きい | 極めて激しい | 低い | 非常に大きい | 低い | 非推奨 |
B: 汎用BaaSプラットフォーム提供 | クラウド大手と競合する、汎用的なBaaSプラットフォームを提供する。 | 大きい | 激しい(寡占) | 低い | 大きい | 低い | 非推奨 |
C: 産業特化型ソリューション開発 | 特定産業の課題を解決するアプリケーションやプラットフォームを開発・提供する。 | 中程度~大きい | 中程度 | 高い | 中程度 | 高い | 推奨 |
D: 相互運用性ミドルウェア開発 | 異なるブロックチェーン間を接続するミドルウェアやプロトコルを開発する。 | 大きい | 激しい(技術競争) | 中程度 | 大きい | 中程度 | 条件付きで検討 |
評価の結論: オプションAおよびBは、既に強力なネットワーク効果を持つ巨大プレイヤーとの直接競合となり、成功確率が極めて低い。オプションDは魅力的だが、高度な技術力と標準化競争を勝ち抜く必要があり、リスクが高い。したがって、自社の既存の業界知識や顧客基盤を最大限に活用でき、競争環境も比較的緩やかで、明確な顧客価値を提供しやすい**オプションC「産業特化型ソリューション開発」**が最も合理的かつ成功確率の高い戦略であると結論づける。
最終提言:産業特化型RWAプラットフォームとAI監査サービスの二軸戦略
戦略提言:
オプションCを事業戦略の基軸とし、短中期的には市場が急成長しているRWA領域に、長期的には将来の巨大市場となるAIの信頼性担保領域に注力する。具体的には、「特定産業(例:不動産、プライベートクレジット)向けのRWAトークン化プラットフォーム事業」と、将来の成長エンジンとして「AI監査・トレーサビリティサービス事業」の二軸で事業を展開することを提言する。
論理的根拠:
- 本レポートの外部環境分析およびトレンド分析から、今後市場を牽引する最大の成長ドライバーはRWAとAI+ブロックチェーンの融合であることが明らかになった。本戦略はこの二大トレンドを直接捉えるものである。
- Five Forces分析が示す通り、汎用的なインフラレイヤーでの競争は資本力に勝るグローバルプレイヤーに分が悪いため、自社の強みである特定の産業知識や顧客基盤を活かせるアプリケーション/ソリューションレイヤーに集中することが合理的である。
- RWA市場は成長の初期段階にあり、特にコンプライアンスと信頼性が最重要視される機関投資家向けの領域では、新規参入の余地が十分に残されている。
- AI監査サービスは、まだ明確な競合が存在しないブルーオーシャン市場であり、AIの社会実装が不可逆的に進む中で、その需要が確実に顕在化する。これは、ブロックチェーンの「信頼を担保する」という本質的価値を最も純粋な形で事業化する試みである。
アクションプラン概要:
- Phase 1 (Year 1-2): RWAプラットフォームの立ち上げと基盤確立
- 主要アクション:
- ターゲットとする資産クラス(例:国内の商業用不動産、非上場企業の社債)を選定。
- 主要な金融機関、信託銀行、不動産会社、法律事務所とコンソーシアムを形成し、ガバナンスモデルを設計。
- 金融庁などの規制当局と密接に対話し、法的要件をクリアしたプラットフォームのMVP(Minimum Viable Product)を開発。
- 最初のトークン化案件を成功させ、実績を構築。
- 主要KPI: 提携金融機関数、トークン化資産総額(AUM)、プラットフォーム上の取引高。
- 必要リソース: ブロックチェーンエンジニア(特にセキュリティトークン標準に精通)、金融法務・コンプライアンス専門家、事業開発担当者からなる専門チームの組成。
- 主要アクション:
- Phase 2 (Year 2-3): AI監査サービスの開発とPoC
- 主要アクション:
- R&Dチームを組成し、AIの意思決定プロセスを記録・検証するためのコア技術(例:特定のAIモデルに対応したスマートコントラクト、データのハッシュ化技術)を開発。
- AI活用が進んでいる産業(例:金融の与信審査、製造業の品質管理)のリーディングカンパニーをパートナーとして選定。
- パートナー企業と共同で、特定のAIシステムを対象としたPoCを実施し、技術の有効性とビジネス価値を検証。
- 主要KPI: PoC実施企業数、主要AIベンダーとの技術提携、関連特許出願数。
- 必要リソース: AI/MLエンジニア、高度な暗号技術者、各産業のドメインエキスパート、コンプライアンス専門家を追加採用。
- 主要アクション:
- Phase 3 (Year 4-5): 両事業の本格展開とシナジー創出
- 主要アクション:
- RWAプラットフォームの対象資産クラスを拡大(例:美術品、カーボンクレジット)。
- AI監査サービスを正式にローンチし、SaaSモデルでの提供を開始。
- 将来的には、RWAプラットフォーム上で取引される資産の価値評価やリスク管理に、自社の監査済みAIを活用するなど、両事業間のシナジーを創出。AIエージェントが自律的にトークン化資産を運用する未来の金融モデルも視野に入れる。
- 主要KPI: 両事業の売上高および利益率、各市場におけるシェア。
- 主要アクション:
この二軸戦略を実行することにより、現在のブロックチェーン市場における最も確実な収益機会を捉えつつ、未来の「信頼の経済圏」におけるリーディングプレイヤーとしての地位を確立することが可能となる。
第11章:付録
用語集 (Glossary)
- BaaS (Blockchain as a Service): クラウド上でブロックチェーンのインフラや開発環境を提供するサービス。
- CBDC (Central Bank Digital Currency): 中央銀行が発行するデジタル通貨。
- DeFi (Decentralized Finance): ブロックチェーン上で構築される分散型金融システム。
- DePIN (Decentralized Physical Infrastructure Networks): トークンインセンティブを用いて物理インフラを分散的に構築・運用するモデル。
- DID (Decentralized Identifier): 特定の組織に依存しない分散型のデジタルID。
- EVM (Ethereum Virtual Machine): Ethereumのスマートコントラクトを実行するための仮想マシン環境。
- GDPR (General Data Protection Regulation): EU一般データ保護規則。
- L1/L2 (Layer 1/Layer 2): L1はブロックチェーン本体(基盤層)、L2はL1のスケーラビリティなどを向上させるためのオフチェーン技術(スケーリング層)。
- PoS (Proof of Stake): トークンの保有量に応じてブロック生成の権利を得るコンセンサスアルゴリズム。
- RWA (Real World Asset): 現実世界の資産(不動産、債券など)。
- VRIO (Value, Rarity, Inimitability, Organization): 企業の経営資源やケイパビリティが持続的な競争優位の源泉となるかを分析するフレームワーク。
- ZKP (Zero-Knowledge Proof): ゼロ知識証明。ある情報を開示せずに、その情報を知っていることを証明する暗号技術。
引用文献
- Blockchain Market Size, Share, Trends, Revenue Forecast & Opportunities | MarketsandMarkets™, https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/blockchain-technology-market-90100890.html
- Top Companies in Blockchain Market – AWS (US), IBM (US), Oracle (US), Huawei (China) and Accenture (Ireland) – MarketsandMarkets, https://www.marketsandmarkets.com/ResearchInsight/blockchain-technology-market.asp
- Blockchain Technology Market Size, Share, Value | Growth Report [2032], https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/blockchain-market-100072
- Gartner says: BLOCKCHAIN will grow rapidly, reaching $176 billion by 2025 and $3.1 trillion by 2030 | by Gianluca Busato – Medium, https://medium.com/enkronos/gartner-says-blockchain-will-grow-rapidly-reaching-176-billion-by-2025-and-3-1-trillion-by-2030-fb9c97632b90
- Gartner: Blockchain Will Deliver $3.1 Trillion Dollars in Value by 2030. – Medium, https://medium.com/consensys-media/gartner-blockchain-will-deliver-3-1-trillion-dollars-in-value-by-2030-d32b79c4c560
- IHS Markit bullish about blockchain, predicts $2 trillion market by 2030 – Ledger Insights, https://www.ledgerinsights.com/ihs-market-blockchain-forecast-2-trillion/
- Blockchain Technology Market Size | Industry Report, 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/blockchain-technology-market
- Blockchain Technology Market To Reach $1,431.54 Bn By 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/press-release/global-blockchain-technology-market
- Japan Blockchain Technology Market Size & Outlook, 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/blockchain-technology-market/japan
- Blockchain Market worth $393.45 billion by 2030 – MarketsandMarkets, https://www.marketsandmarkets.com/PressReleases/blockchain-technology.asp
- Blockchain Market Size, Share, Cap Analysis, 2032 – Zion Market Research, https://www.zionmarketresearch.com/report/blockchain-industry
- Blockchain Supply Chain Market Size & Share Report, 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/blockchain-supply-chain-market-report
- Blockchain Market Trends, Analysis and Segment Forecast to 2030 – GlobalData, https://www.globaldata.com/store/report/blockchain-market-analysis/
- The Economics of Enterprise Blockchain Adoption in 2025 – Codezeros, https://www.codezeros.com/the-economics-of-enterprise-blockchain-adoption-in-2025
- Blockchain Supply Chain Market to Reach $9,852.91 Mn by 2025 – Allied Market Research, https://www.alliedmarketresearch.com/press-release/blockchain-supply-chain-market.html
- Top 20 Blockchain in Supply Chain Case Studies – Research AIMultiple, https://research.aimultiple.com/blockchain-in-supply-chain-case-study/
- Global Blockchain Market Size Projected Reach $393 Billion By 2030 as Clearer Regulatory Frameworks Are Legitimized – Financial News Media, https://www.financialnewsmedia.com/global-blockchain-market-size-projected-reach-393-billion-by-2030-as-clearer-regulatory-frameworks-are-legitimized/
- Blockchain and Digital Assets Outlook 2025 – BPM, https://www.bpm.com/insights/blockchain-and-digital-assets-outlook-2025/
- Blockchain AI Market Size, Share, and Growth Analysis – SkyQuest Technology, https://www.skyquestt.com/report/blockchain-ai-market
- Blockchain AI Market Report 2025-2034 |Trends – The Business Research Company, https://www.thebusinessresearchcompany.com/report/blockchain-ai-global-market-report
- Blockchain AI Market Poised for Strong Growth Fueled by Secure, Intelligent Technologies – Precedence Research, https://www.precedenceresearch.com/blockchain-ai-market
- Blockchain Developer Jobs in 2025: Finding Your Dream Employees, https://thecryptorecruiters.io/blockchain-developer-jobs-in-2025/
- Exploring the failure factors of blockchain adopting projects: a case study of tradelens through the lens of commons theory – Frontiers, https://www.frontiersin.org/journals/blockchain/articles/10.3389/fbloc.2025.1503595/full
- Top Three Reasons Why Enterprise Blockchain Projects Fail I SettleMint, https://www.settlemint.com/blog/top-three-reasons-why-enterprise-blockchain-projects-fail/
- Ethereum Daily Active Addresses – Historical Data & Trends – YCharts, https://ycharts.com/indicators/ethereum_daily_active_addresses
- Ethereum Active Addresses historical chart – BitInfoCharts, https://bitinfocharts.com/comparison/ethereum-activeaddresses.html
- Active Addresses – Ethereum – CryptoQuant, https://cryptoquant.com/asset/eth/chart/addresses/active-addresses
- Active addresses (weekly) – Solana – Token Terminal, https://tokenterminal.com/explorer/projects/solana/metrics/active-addresses-weekly
- Solana explorer | View Solana stats – OKLink, https://www.oklink.com/solana
- Active addresses (monthly) – Solana – Token Terminal, https://tokenterminal.com/explorer/projects/solana/metrics/active-addresses-monthly
- Avalanche – DefiLlama, https://defillama.com/chain/avalanche
- Avalanche (AVAX) Statistics 2025: Trends Unveiled – CoinLaw, https://coinlaw.io/avalanche-avax-statistics/
- Blockchains With the Most Developers in 2025 – Hashlock, https://hashlock.com/blog/blockchains-with-the-most-developers-in-2025
- Analysis of Open-Source Crypto Developers by Electric Capital – Developer Report, https://www.developerreport.com/developer-report
- Chart: The Big Three Stay Ahead in Ever-Growing Cloud Market | Statista, https://www.statista.com/chart/18819/worldwide-market-share-of-leading-cloud-infrastructure-service-providers/
- The World’s Largest Cloud Providers, Ranked by Market Share – Visual Capitalist, https://www.visualcapitalist.com/the-worlds-largest-cloud-providers-ranked-by-market-share/
- Active addresses (weekly) – Avalanche – Token Terminal, https://tokenterminal.com/explorer/projects/avalanche/metrics/active-addresses-weekly
- Is Ethereum Dead? Complete Analysis for ETH Crypto Investors – MEXC, https://www.mexc.com/learn/article/is-ethereum-dead-complete-analysis-for-eth-crypto-investors/1
- CBDC Developments 2025: Which Countries Are Leading the Digital Currency Race?, https://coinledger.io/research/cbdc-developments
- Central bank digital currencies by country – Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Central_bank_digital_currencies_by_country
- Enhancing Data Sovereignty & Self-Sovereignty With Blockchain | The Future Of Identity Policy | mintBlue, https://mintblue.com/data-sovereignty/
- Blockchain-Based Decentralized Storage Systems for Sustainable Data Self-Sovereignty: A Comparative Study – MDPI, https://www.mdpi.com/2071-1050/16/17/7671
- The Emergence of Tokenized Investment Funds and Their Use Cases, https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2025/09/the-emergence-of-tokenized-investment-funds-and-their-use-cases/
- What Is BlackRock’s BUIDL Fund? A Beginner’s Guide To Tokenized Money Markets, https://www.ccn.com/education/crypto/blackrock-buidl-fund-tokenized-money-markets-explained/
- Why consumer trust in big tech is on the decline | Eidosmedia, https://www.eidosmedia.com/updater/technology/When-Did-Big-Tech-Fall-From-Grace
- Global Trust in Digital Services Declines, Finds Thales 2025 Digital Trust Index, https://cpl.thalesgroup.com/about-us/newsroom/digital-trust-index-2025
- Data privacy fears erode consumer trust in digital services – CFO Dive, https://www.cfodive.com/news/data-privacy-fears-erode-consumer-trust-in-digital-services/742764/
- Web3 and data sovereignty – Crypto Altruism, https://www.cryptoaltruism.org/blog/web3-and-data-sovereignty
- Decentralized Identity Market Size & Forecast to 2033 – IMARC Group, https://www.imarcgroup.com/decentralized-identity-market
- Supply Chain Statistics — 70 Key Figures of 2025 – Procurement Tactics, https://procurementtactics.com/supply-chain-statistics/
- Staking in Crypto: Understanding Proof of Stake and Its Energy Efficiency – BlockApps Inc., https://blockapps.net/blog/staking-in-crypto-understanding-proof-of-stake-and-its-energy-efficiency/
- Is Proof-of-Stake Really More Energy-Efficient Than Proof-of-Work? – Bitwave, https://www.bitwave.io/blog/is-proof-of-stake-really-more-energy-efficient-than-proof-of-work
- Future of Cross-Chain Interoperability – Fintech Review, https://fintechreview.net/future-of-cross-chain-interoperability/
- Blockchain Interoperability Explained: Polkadot vs. Cosmos – KvaPay, https://kvapay.com/blog/post/blockchain-interoperability-explained-polkadot-vs-cosmos
- Cross-Chain Interoperability Report 2024 – IBC Protocol, https://ibcprotocol.dev/interoperability-report-2024
- Zero-Knowledge Proofs: A Beginner’s Guide – Dock Labs, https://www.dock.io/post/zero-knowledge-proofs
- Zero-Knowledge Proofs: How it Works & Use Cases – AIMultiple, https://aimultiple.com/zero-knowledge-proofs
- AI in Blockchain: Top Use Cases You Need To Know – SmartDev, https://smartdev.com/ai-use-cases-in-blockchain/
- What is Blockchain and Artificial Intelligence (AI)? – IBM, https://www.ibm.com/think/topics/blockchain-ai
- Can smart contracts be legally binding contracts? | Japan | Global law firm | Norton Rose Fulbright, https://www.nortonrosefulbright.com/en-jp/knowledge/publications/a90a5588/can-smart-contracts-be-legally-binding-contracts
- Smart Contracts in Law: Comprehensive Legal Guide for Blockchain Innovation, https://www.rapidinnovation.io/post/the-legal-implications-of-smart-contracts-regulations-and-compliance
- 政府における暗号資産規制の見直しに関する動向 – Mori Hamada & Matsumoto, https://www.morihamada.com/ja/insights/newsletters/121331
- 金融庁、仮想通貨の制度改革へ初会合開催|税制見直しも, https://cryptodnes.bg/jp/japan-fsa-crypto-reform-working-group/
- 日本は世界の暗号資産規制を再定義しようとしているのか? – Gamma Law, https://gammalaw.com/ja/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E6%9A%97%E5%8F%B7%E8%B3%87%E7%94%A3%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%82%92%E5%86%8D%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%97%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6/
- web3 提言 2025 – 自由民主党, https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/210615_4.pdf
- Analysis of solutions for a blockchain compliance with GDPR – PMC – PubMed Central, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9440070/
- When Blockchain Immutability Meets the GDPR Article 17 Right to be Forgotten, https://secureprivacy.ai/blog/blockchain-immutability-vs-gdpr-article-17-right-to-be-forgotten
- Blockchain and the General Data Protection Regulation – European Parliament, https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/STUD/2019/634445/EPRS_STU(2019)634445_EN.pdf
- Tracking electricity consumption from U.S. cryptocurrency mining operations – U.S. Energy Information Administration (EIA), https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=61364
- Decentralized Identity Market Size & Outlook, 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/decentralized-identity-market-size/global
- 21+ Top Cloud Service Providers Globally In 2025 – CloudZero, https://www.cloudzero.com/blog/cloud-service-providers/
- Scalable Blockchain Network – Amazon Managed Blockchain – AWS, https://aws.amazon.com/managed-blockchain/
- Blockchain cloud comparison: What is blockchain-as-a-service (BaaS)? – Pluralsight, https://www.pluralsight.com/resources/blog/cloud/blockchain-cloud-comparison-what-is-blockchain-as-a-service-baas
- Web3 – Developer Solutions | Microsoft Azure, https://azure.microsoft.com/en-us/solutions/web3
- Microsoft BlockChain. Microsoft’s approach to blockchain… | by Shiva Yarlagadda | Medium, https://medium.com/@shiva.yarlagadda89/microsoft-blockchain-e93b75aeb640
- Blockchain Node Engine – Google Cloud, https://cloud.google.com/blockchain-node-engine
- Top Layer 1 Blockchain in 2024 – Token Metrics Moon Awards, https://www.tokenmetrics.com/blog/top-layer-1-blockchain?0fad35da_page=38&74e29fd5_page=1
- Hyperledger vs Corda vs Quorom: What’s Best Blockchain for Business? | ServerMania, https://www.servermania.com/kb/articles/hyperledger-corda-quorom
- Top Blockchain Platforms in 2023 -[Comparison of blockchain platforms] – Rejolut, https://rejolut.com/blog/comparing-top-blockchain-platform/
- R3 pivots to public blockchain with Solana partnership – Ledger Insights, https://www.ledgerinsights.com/r3-pivots-to-public-blockchain-with-solana-partnership/
- R3’s Corda Integrates With Solana to Enable $10 Billion in Tokenized Assets for HSBC, SDX, Euroclear on Public Blockchain – “The Defiant”, https://thedefiant.io/news/tradfi-and-fintech/r3s-corda-integrates-solana-to-enable-10-billion-tokenized-assets-hsbc-sdx-on-0bce135b
- AWS vs Azure vs Google Cloud (2025) – SotaTek, https://www.sotatek.com/blogs/cloud-services/aws-vs-azure-vs-google-cloud/
- AWS Vs Google Cloud Platform Vs Azure – GeeksforGeeks, https://www.geeksforgeeks.org/devops/aws-vs-google-cloud-platform-vs-azure/
- Swift, Consensys collaborate to develop blockchain payment network, https://bloomingbit.io/en/feed/news/97853
- Ultimate Guide: Choosing the Best Enterprise Blockchain Platform in 2024, https://www.rapidinnovation.io/post/how-to-choose-the-right-enterprise-blockchain-platform-a-step-by-step-guide
- Unveiling Ethereum’s governance – is the network really decentralized?, https://cryptovalleyjournal.com/focus/background/unveiling-ethereums-governance-is-the-network-really-decentralized/
- Ethereum is an experimental model of decentralized governance architecture for crypto, rather than a “narrative virtual.” – ChainCatcher, https://www.chaincatcher.com/en/article/2148695
- An Introduction to Hyperledger – main@lists.lfdecentralizedtrust.org | Home, https://lists.lfdecentralizedtrust.org/g/tsc/attachment/1256/0/paper.pdf
- Introduction — Hyperledger Fabric Docs main documentation, https://hyperledger-fabric.readthedocs.io/en/latest/whatis.html
- Cosmos Ecosystem | Audits, Wallets, & Protection – Hashlock, https://hashlock.com/ecosystems/cosmos
- Polkadot OpenGov and Web3: How It’s Revolutionizing Blockchain Governance and Interoperability | OKX, https://www.okx.com/learn/polkadot-opengov-web3-blockchain
- Polkadot’s Community Voting Revolution: A Look at Crypto Banking – OneSafe Blog, https://www.onesafe.io/blog/polkadot-governance-impact-crypto-banking
- What is the Polkadot DAO? A beginner’s guide to decentralized governance, https://polkadot.com/blog/polkadot-dao-explained/
- www.researchgate.net, https://www.researchgate.net/figure/alue-captured-on-protocol-layer-and-application-layer-internet-versus-blockchain_fig4_340468660#:~:text=cryptographic%20tokens%20in%20blockchain%20aggregates,value%20created%20by%20internet%20protocols.
- Value captured on protocol layer and application layer, internet versus blockchain, https://www.researchgate.net/figure/alue-captured-on-protocol-layer-and-application-layer-internet-versus-blockchain_fig4_340468660
- An IBM Blockchain solution for the complete food system – ABB, https://library.e.abb.com/public/7acecaedf5a0417c9b840eaa1f387fdc/Blockchain%20Foodtrust%20Solution%20brief%20IBM%20(1)%20(1).pdf?x-sign=zxrD+zfob4GfnifK1bQIxp6hYm33pQZVgKDtEDIaIAJXInMPdOEmzZnfscc0stvW
- Blockchain for supply chain solutions – IBM, https://www.ibm.com/solutions/blockchain-supply-chain
- iFoodDS and IBM forge new path to food safety with IBM Food Trust™, https://www.ibm.com/case-studies/blog/ifoodds-and-ibm-forge-new-path-to-food-safety-with-ibm-food-trust
- Blockchain for Enterprise: Key Use Cases, Features, and Challenges – Intellivon, https://intellivon.com/blogs/blockchain-use-cases-in-enterprise-2/
- How to Successfully Implement a Blockchain Solution in 2025 | Next Idea Tech Blog, https://blog.nextideatech.com/how-to-successfully-implement-a-blockchain-solution-in-2025/
- 12 Blockchain Case Studies Across Key Industries – Research AIMultiple, https://research.aimultiple.com/blockchain-case-studies/
- we.trade | IBM, https://www.ibm.com/case-studies/wetrade-blockchain-fintech-trade-finance
- Blockchain for trade finance solutions – IBM, https://www.ibm.com/think/topics/trade-finance
- Real-World Blockchain Case Studies – Consensys, https://consensys.io/blockchain-use-cases/case-studies
- Kinexys – Bank-Led Blockchain Solutions – J.P. Morgan, https://www.jpmorgan.com/kinexys/index
- JP Morgan Case Study – Provenance Blockchain, https://www.provenance.io/case-studies/jpm-case-study
- Solidity Developer Salary – Oct 2025 – Web3 Jobs, https://web3.career/web3-salaries/solidity-developer
- Average Solidity Developer Salary in 2025 – Metana, https://metana.io/blog/average-solidity-developer-salary-in-2025/
- Rust Developer Salary and Equity Compensation in Startups 2025 – Wellfound, https://wellfound.com/hiring-data/s/rust
- Rust Developer Salary in 2025 (Updated Daily) – Crypto Jobs List, https://cryptojobslist.com/salaries/rust-developer-salary
- $30 Trillion Tokenized by 2030: Global Finance Moves On-Chain – Genfinity, https://genfinity.io/2025/02/07/30-trillion-tokenized-by-2030-on-chain/
- RWA Tokenization Market Set to Hit $30 Trillion by 2030 – Phemex, https://phemex.com/news/article/rwa-tokenization-market-set-to-hit-30-trillion-by-2030-19759
- BlackRock About Tokenization Of Real World Assets – Boosty Labs, https://boostylabs.com/blog/blackrock-tokenization
- Economic impact potential of real-world asset tokenization * – Macroeconomics.lv, https://www.macroeconomics.lv/sites/default/files/2024-06/06_Baltais%20%26%20Sondore_0.pdf
- The Future of Finance is Tokenized: Ondo’s Vision for RWAs – YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=gRhL_bhFRaY
- Ondo Finance, Real-World Asset: Investor Guide, https://www.diadata.org/rwa-real-world-asset-map/ondo-finance/
- What Is Helium (HNT)? Features, Tokenomics, and Price Prediction – CoinMarketCap, https://coinmarketcap.com/academy/article/what-is-helium-hnt-features-tokenomics-and-price-prediction
- DePIN Tokenomics 101: a Guide for Builders | by Hilary H Brown | Medium, https://medium.com/@hilary.h.brown/depin-tokenomics-101-a-guide-for-builders-4a854ff8de21
- DePIN Brings Real-World Business Opportunities for Web3 | Onchain, https://onchain.org/research/depin-brings-real-world-business-opportunities-for-web3/chapter/1/
- Helium (HNT) Tokenomics Explained: Incentives, Supply, and Utility, https://www.findas.org/tokenomics-review/coins/the-tokenomics-of-helium-hnt/r/DUr5bvmBPVYzPkKJUiXz7Z
- DePIN Sector Takes Off and Becomes a Prosperous Key Player in the Crypto World, https://news.bit2me.com/en/depin-takes-off-key-cryptocurrency-player
- What is DePIN? Analysis of Decentralized Physical Infrastructure Networks – Phemex, https://phemex.com/academy/analysis-decentralized-physical-infrastructure-networks
- What Is DePIN? A User-Centric Model for a Web3 World | Onchain Magazine, https://onchain.org/magazine/what-is-depin-a-user-centric-model-for-a-web3-world/
- Decentralized Identity Market Size And Share Report, 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/decentralized-identity-market-report
- Decentralized Identity Market Size, Forecast, Share Analysis & Growth 2030, https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/decentralized-identity-market
- ブロックチェーン AI 市場規模 – 世界分析、2030 年までの予測 – Spherical Insights, https://www.sphericalinsights.com/jp/reports/blockchain-ai-market
- Blockchain AI Market Size – Global Analysis, Forecast 2021-30 – Spherical Insights, https://www.sphericalinsights.com/reports/blockchain-ai-market
- Blockchain AI Market Size, Share, Growth & Analysis Report 2030 – GMI Research, https://www.gmiresearch.com/report/blockchain-ai-market-analysis-industry-research/
- AI & Blockchain: Digital Security & Efficiency 2024 – Rapid Innovation, https://www.rapidinnovation.io/post/ai-and-blockchain-powering-digital-security-efficiency-in-2024
- What is Fetch.ai’s business model? | Vizologi, https://vizologi.com/business-strategy-canvas/fetchai-business-model-canvas/
- Fetch.ai Innovation Lab, https://innovationlab.fetch.ai/
- Fetch.ai: Operation, use cases, and future of the project – DataScientest, https://datascientest.com/en/all-about-fetch-ai
- Ethereum Foundation’s 2025 Pivot: What It Means for Scalability and User Experience, https://cryptoapis.io/blog/309-ethereum-foundations-2025-pivot-what-it-means-for-scalability-and-user-experience
- Ethereum Foundation Reveals 2025 Roadmap with Emphasis on Privacy Features, https://intellectia.ai/news/crypto/ethereum-foundation-unveils-privacyfocused-roadmap-for-2025
- Network Performance Report: March 2024 – Solana, https://solana.com/en/news/network-performance-report-march-2024
- What is Blockchain for Business? – IBM, https://www.ibm.com/think/topics/blockchain-for-business
- What are the Benefits of Blockchain? – IBM, https://www.ibm.com/think/topics/benefits-of-blockchain
- Consensys: Scaling decentralized finance, https://consensys.io/blog/consensys-scaling-decentralized-finance
- Joe Lubin confirms SWIFT is using Linea to build its new payments system – Cointelegraph, https://cointelegraph.com/news/swift-building-linea-says-consenys-ceo-joe-lubin
- Swift Partners with Consensys to Build Blockchain Settlement System – Brave New Coin, https://bravenewcoin.com/insights/swift-partners-with-consensys-to-build-blockchain-settlement-system
- R3, Case Study – Web3 Labs, https://www.web3labs.com/hubfs/Case_Studies/R3_Case_Study_2023.pdf
- R3 Corda for Architects and Developers: With Case Studies in Finance, Insurance, Healthcare, Travel, Telecom, and Agriculture – ResearchGate, https://www.researchgate.net/publication/333992530_R3_Corda_for_Architects_and_Developers_With_Case_Studies_in_Finance_Insurance_Healthcare_Travel_Telecom_and_Agriculture
- Written evidence submitted by R3 – UK Parliament Committees, https://committees.parliament.uk/writtenevidence/111489/pdf/
- Corda-Solana Interoperability: Bridging the Best of Breed Private and Public Blockchains, https://guild1.co/corda-solana-interoperability-bridging-thew-best-of-breed-private-and-public-blockchains/
- R3’s Corda integration with Solana offers elegant interoperability – Ledger Insights, https://www.ledgerinsights.com/r3s-corda-integration-with-solana-offers-elegant-interoperability/
- Amazon Managed Blockchain for Hyperledger Fabric Pricing – AWS, https://aws.amazon.com/managed-blockchain/pricing/hyperledger/
- Amazon Managed Blockchain for Ethereum Pricing – AWS, https://aws.amazon.com/managed-blockchain/pricing/ethereum/
- Google Cloud Solution Explorer, https://solutions.cloud.google.com/
- NTT DATAならではの総合力がブロックチェーンを活用した新たな社会インフラを構築する。, https://nttdata-recruit.com/projectstory/02/
- デジタル戦略 – 日立製作所, https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2024/06/0611/20240611_02_digital.pdf
- 日立が新経営計画「Inspire 2027」を発表、Lumada事業の強化に重点投資 – クラウド Watch, https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/2010738.html
- 富士通、Web3の新サービス企画や実証実験などを共創するパートナー対象にエコシステムづくりの場を提供 | Biz/Zine, https://bizzine.jp/article/detail/8798
- 富士通がWeb3プラットフォームを提供へ パートナーと新ビジネス創出をはかる – 週刊BCN+, https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20230209_196537.html
- 富士通「Fujitsu Web3 Acceleration Platform」をグローバルに提供し共創推進 – PORT by Creww, https://port.creww.me/innovation/112506
- Blockchain Technology Market Size & Outlook, 2030 – Grand View Research, https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/blockchain-technology-market-size/global
- IDC Predicts AI Solutions & Services will Generate Global Impact of $22.3 Trillion by 2030, https://my.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS53290725
- Blockchain Technology Market Outlook 2025-2030, with – GlobeNewswire, https://www.globenewswire.com/news-release/2025/03/05/3037648/0/en/Blockchain-Technology-Market-Outlook-2025-2030-with-Blockchain-Market-Case-Studies-for-Honeywell-Aerospace-SGX-Zug-Digital-ING-Group-and-more.html
- Blockchain Technology Market Size Worth $1,431.54 Billion By 2030: Grand View Research, Inc. – PR Newswire, https://www.prnewswire.com/news-releases/blockchain-technology-market-size-worth-1-431-54-billion-by-2030-grand-view-research-inc-301478329.html
- Global Blockchain Market Size Projected Reach $393 Billion By 2030 As Clearer Regulatory Frameworks Are Legitimized – Barchart.com, https://www.barchart.com/story/news/34978267/global-blockchain-market-size-projected-reach-393-billion-by-2030-as-clearer-regulatory-frameworks-are-legitimized
- Global Blockchain Market Size in 2025 and Future Projections | CoinLedger, https://coinledger.io/research/global-blockchain-market-size
- Blockchain Market Size – SkyQuest Technology, https://www.skyquestt.com/report/blockchain-market/market-size
- Blockchain Market Size Report, 2024-2030 – IndustryARC, https://www.industryarc.com/Report/17949/blockchain-market.html
- Blockchain based Service: A Case Study on IBM Blockchain Services & Hyperledger Fabric, https://www.researchgate.net/publication/358252611_Blockchain_based_Service_A_Case_Study_on_IBM_Blockchain_Services_Hyperledger_Fabric
- Case Studies | LF Decentralized Trust, https://www.lfdecentralizedtrust.org/case-studies
- Business Success Stories | Hyperledger Fabric Impact – Rapid Innovation, https://www.rapidinnovation.io/post/business-wins-with-hyperledger-fabric
- Performance evaluation of permissioned blockchains for financial applications: The ConsenSys Quorum case study | Request PDF – ResearchGate, https://www.researchgate.net/publication/354050675_Performance_evaluation_of_permissioned_blockchains_for_financial_applications_The_ConsenSys_Quorum_case_study
- Enterprise Blockchain Guide: Implementation, Use Cases & Future Trends, https://www.rapidinnovation.io/post/blockchain-in-enterprise-use-cases-and-implementation
- Blockchain for Enterprise Use Cases, Features, Challenges – Appinventiv, https://appinventiv.com/blog/blockchain-use-cases-in-enterprise/
- 金融審議会総会 令和7年6月25日 暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討について, https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/soukai/siryou/20250625/1.pdf